ニューヨーク・コンフィデンシャル
午後のNew York
グレイのフラノは
季節はずれの 男の服
君と別れて 気づかいもしない
そこらの本屋のぞいて 帰るだけ
君が好きだった Egg Benedictine
なじみの店にも 行きづらい
といって 旅にも 出たくはない
君のいる このNew York 離れられない
君はNew York
ベイジュのスーツ着て
フランス語なまりが しゃれてた
新しい恋に 人生を乗せて
ちょっと大人ぶって 振る舞うだろう
君の癖だった ケセラセラ
女の科白は ほろ苦い
時間が まだ早い パブで飲むには
君のいる このNew York たそがれ時
君のいる このNew York
( 作詞:安井かずみ 作曲:加藤和彦 )
*****************************************************************
今年は厭な年だ。
これまでにたくさんの人が死んだ。
それも、自分にとっては数少ない好きな人、憧れの対象である人たちが。
今日、ある人へのメールに、『人が社会で何を砦として生きているのかは個々に違うと
しても、最終的にそういうものを全部失ってしまったときでも、自分さえ信頼できたら人
は自殺しないですむと思うんです』と書こうとしていて、書きかけのメールをそのままに
自転車の鍵をとって出かけようとしたとき、息子がふいに「加藤和彦って知ってる?」
と聞いた。「もちろん知ってるよ。昔レコード持ってた。自分で買った数少ない邦楽のレ
コードの1枚。今ここにはないけど。どうして?」
「死んだ。首つり自殺して」
「嘘 ・・・・・・! いつ!」
「今朝。軽井沢のホテルで」
「信じられない。ショック!・・・ 」
そう言って出かけるのも忘れて、その場に座りこんでしまった。
ものすごくショックだった。信じられなかった。
加藤和彦といったら安井かずみとともにその昔、一世を風靡した人だ。憧れだった。
何が憧れって、そのお洒落な生き方そのもの、ライフスタイルそのものが。
当時(ちょうど自分が今の息子と同じ年くらいだったころ)、雑誌のインタビューか何か
で結婚生活について聞かれた安井かずみが、2人は同じマンションの部屋に住んで
いるんだけれどそれぞれ鍵のかかる部屋を持っていて、いつもは別々に過ごしていて
顔もあわせないんだけれど、たまに観葉植物だらけのリビングでばったり会ったりする
と「やあ!」なんて言って一緒にお茶をしたりするの、なんてことを言っていて、なんて
浮世離れした結婚生活なんだろう! とミーハーにも大いに私を憧れさせた。
もともと結婚願望があまりなくて、圧倒的に1人でいる時間が必要な私にとっては理
想的な結婚生活に思えたし、そういう私と一緒にいようなどと思う人は、やっぱり同じ
ような質の人じゃないかと思えたからだ。その話はたぶん当時いろんな人にしたと思
う。そんな生活がしたいと。まぁ、いま思えば実に馬鹿げてるけど。
でも今だってそんな生活ができるものなら、それにこしたことはないんじゃないかと思う
自分もいて。それに(もう年十年も聞いていない)今だって、その当時買ったレコードの
中の歌を歌えるというのに。その人が死んでしまうなんて。それもよりにもよって自殺
だなんて。しかも軽井沢のホテルで。あまりにもハマりすぎる ・・・・・・。
そのとき、昔のレコードはないけどこの曲を作った人だよ、といってかけたのがこの曲
ニューヨーク・コンフィデンシャル。
矢野顕子がピアノ1本で切々と漂々と弾き語るこの歌は、明るく透明な午後に、1人だ
けモノクロームに失われた存在としてもぬけの殻のようになった男の姿がリアルに浮
かびあがって、それはそのまま加藤和彦そのものみたいで、沁みた。
そしてこの矢野顕子のアルバム『Piano Nightly』は、まだ下の子が保育園に通ってい
るころ、毎日にこにこ懸命に生きてはいたけれど、まだまだいろんなことがつらくて悲
しくて悲しくてしかたなかったころによく聴いていたアルバムで、いま聴いても涙なしに
は聴けないアルバム。
今日久しぶりにこれを聴きながらキッチンで洗いものをしていて、思いきり泣きました。










































最近のコメント