アートのある場所

2017年11月11日 (土)

北風に乗って

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風がめぐって、2回めの季節。
めぐみさんが亡くなってもう2年だなんて、月日が過ぎるのはなんて早いんだろう。
晴れて風がつよく、西高東低の典型的な冬の午後、北風に飛ばされるように『やまぐちめぐみ作品展』を観に行った。
外苑前、タンバリンギャラリー。

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タンバリンギャラリーは、都会の中にあって海を感じる場所。
まばゆいばかりに真っ白なギャラリーの中に一歩足を踏み入れると、硝子窓の向こうに海が見えるんじゃないかと、いつもしばし戸の前に佇んで、ぼぉっとしてしまう。
白いコッパンにデッキシューズ、白とネイビーのボーダーTシャツ。
Marina del Rey。
そんな言葉が似合いそうな。
同時にここはこれまで、著作でしか知らない永井宏さんの気配を濃厚に感じる場所でもあったけれど、ひさしぶりに訪れたそこは何かが薄れて、いつかはここもなくなってしまうんだということをおぼろげに感じさせた。さみしい気分。

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それとは別に中は明るくて、いつものめぐみさんの色。懐かしさに包まれる。
個展のときにはいつも戸口のちかくに貼ってある、彼女のプロフィールと小さなモノクロの写真を毎回じっと見てしまう。
写真の中のめぐみさんは、茶目っ気と気難しさとアンニュイな雰囲気を纏った大人っぽいひとで、それはわたしが会っためぐみさんとも感じが違う。できれば元気なころのめぐみさんに会ってみたかったと思う。

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もう何度も書いているかもしれないけれど、めぐみさんの絵のよさはその色彩感覚の素晴らしさ。大胆な構図と、バランスのよさ。シンプルなモチーフに深みを与える、背景の複雑な塗り重ねのうまさ。そこから詩が生まれ、歌が生まれ、物語がはじまるような・・・・・・
繊細なようであってすごく感覚的にラフに描いたような、あまり描きこみすぎないよさ。見たことのない風景が醸しだすノスタルジー。絵の前に立つ人をぼんやりさせてしまう絵。

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何もしてないのに背骨が折れてしまうというような過酷な病状にあって、よくこれだけの、現実からかけ離れたファンタジーを自分の中に持ちつづけ、表現しつづけてこられたと思う。それはほんとうにすごいことだ。それで思いだすのはいつか(まだTVがあったころ)、チャンネルを変えてるときに耳に入ってきた、『アボリジニの絵が人に訴えかける強さを持っているのは、それだけ絵というものが彼らにとって切実だったからです。』というような言葉。めぐみさんにとっても絵を描くということは、日々の(表現という以上に)切実な糧だったのだと思う。

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絵は2年前の作品展のときよりずっと少なかった。
あのときほとんど売れてしまったから。
それでもこうやって有志たちが苦労して作品展をひらいてくれる。
誰かに遺言を遺したわけでも、後のことを託したというわけでもないのにこうやって友人たちが作品展をひらき、めぐみさんを偲ぶ場をつくってくれる。
それって、ほんとうにすごいことです。
ほんとうの意味で、愛ある個展。
そんな作品展は、絵の点数こそ少なかったけれど、懐かしい彼女の世界に浸るには十分だった。
そして2年経って絵の見え方も変わった。
これまではどの絵を見ても彼女のさみしさみたいなものを感じて心に澱が残るようだったのが、いまはどの絵からもしあわせな、あたたかい光を感じる。
それはこの2年の間にすべてが許し、許されたからだと思う。
やっと自由になっためぐみさん。

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めぐみさんは家族の縁は薄かったように思うけれど、友人にはとても恵まれた。
そして、その絵はたくさんの人たちに愛されている。
やっぱり一度の人生で全てを得ることはできないのかな?
それで何度でも生まれてくる。
昔にくらべて人の生まれ変わりのスピードはものすごく速くなっているというのを聞いたのは、もう20年も前のことだから、いまはもっと早くなっているだろう。もしかしたら、生きている間にまためぐみさんに会えるかもしれない。
こんど生まれ変わったら、めぐみさんは何になるだろう。
こんどは最初から絵描きになることを選ぶかな。
何を選んでも、こんどは健康な身体とこころを持って生まれてこれますように。
わたしは・・・・・・
ここまでの人生でひとりで子供を育てる苦悩もかなしみもやりきれなさも、もちろん喜びも、十分に味わったし、まだまだ先は長いから、この次は子供のいない、結婚もしない、自由な身を生きるのもいいかもしれないな。
そんなことを帰りの電車の中で思った。

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春に生まれて晩夏に亡くなっためぐみさん。
そのめぐみさんの待望の作品集が、来年の春ついに出版されるそうです。
タンバリンギャラリーでも予約することはできたけど、わたしはいくつか用があって高円寺のアムレテロンさんで予約することにしました。
めぐみさんの絵はとっても魚座的な世界で、めぐみさんに春は似合うと思う。
来年の春、作品集を手にする日がたのしみです。

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2017年11月 4日 (土)

アートなお皿に何のせる?

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渡邉知樹さんの個展で買ってきたお皿、去年買ったのは壁に飾ろうと思ってまだできてないけど、今年のはふつうに使おうと思った。
「こんどのは釉薬がかかってるから使いやすいと思うよ」と三彩さん。
そのために土作りをずいぶん苦労されたようです。
今回のはいままでなかったような淡いピンクとか水色とか、きれいなパステル系もあって、それって世の中を見回してもありそうでなかなかない感じの色あいで、選ぶのにほんとうに迷いました。まだまだたーくさんあったお皿の中から娘が一枚選んだのは、左下の抽象画みたいなお皿。まるで紙に描いたみたいなタッチで自由な線が描かれてて、見るなりわたしもすごくいいと思った。わたしが選んだのは、いかにも知樹さんしか描けない変な(って相変わらず失礼ですみません)お花が描かれた2枚。さて、このお皿に最初に何のせよう? と思って、ケーキだな! と思った。
まずサイズがそんな感じだし、何より知樹さんは洋菓子屋さんに生まれた息子だったっていうから。子供の時は憧れた。家がケーキ屋だったらな、って。
でも現実はそんないいもんじゃなかったらしい。
興味のあるひとはこんど知樹さんに聞いてみてください。
さて一枚め、抽象のお皿にのせたのは、フランボワーズのジュレがのったカマンベールのチーズケーキ。
どうですか?
いい感じでしょ?

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ピンクの変なお花のお皿には、ガトーショコラ。
三角と三角の遭遇。で、ちょうちょみたいな。
淡いピンクと茶色ってよくあいます。
縁に描かれたお日さまみたいなギザギザがかわいい。

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でもってね、わたしがいま食べたいのってとにかく栗・栗・栗なんです。
それで、マロンブラン。
でもこれ、ただのせたんじゃ全然バランスとれなかった。
なぜってこれだけちょっと深さのあるお取り皿みたいだから。
それで自分で作ったブラックウォルナットのスプーンを添えたら、ちょっとはかたちになったかな。

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楽しくっておいしい、食卓に咲いたカラフルなお皿たち。
これも三連休の休日スペシャル

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2017年11月 3日 (金)

渡邉知樹展『静寂に抗う』に行って来ました。

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気温がぐっと上がって穏やかな秋がもどってきたみたいな11月の晴れた午後、前からたのしみにしていた渡邉知樹さんの個展に行った。
阿佐ヶ谷の古民家ギャラリー、CONTEXT-s。
晴れた日のここはいつだって清らかな光にあふれてて気持ちがいい場所です。

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個展といってもこの展示は陶芸家の駒ヶ嶺三彩さんのing企画による、陶と絵画のコラボレーション。去年は初の試みだったせいか、なんとなく場に緊張感を感じたのだけれど、ここ以外でやったのも合わせるとお二人のコラボの展示もこれで3回めということもあって、今年はなんだかリラックスムード。今年は知樹さんの奥さんも在廊していて、3人笑顔で迎えてくれました。

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壁に飾られた絵画はもちろんなんだけど、この個展の目玉はなんといっても三彩さんのつくった器に知樹さんが絵を描いたアートな食器たち。住宅事情もあるし、絵を買うのは経済的にも物理的にもちょっとハードルが高くても、毎日使うお皿だったら割と気軽に買えるんじゃないかなと思う。とはいえ我が家はもうしまうところもないし、そうそうお皿ばっかり買ってもられない、と思うのだけど、そうはいいつつやっぱり熱心に見ちゃうんですよね。

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もう3回めともなるとマンネリ化してワンパターンになってるか、というと全然そんなことはなくて、むしろお皿も絵も進化してるんだよね。そこには土作りからやってる三彩さんの工夫や苦労もあるし、知樹さんの尽きせぬイマジネーションの力もあって、どれにしようか迷っちゃうくらいいいお皿がいっぱいある。どれもみんな一点ものだから、まずはお気に入りをみつけちゃわないことには落ち着かないのです。

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もうお皿はいい、といってた娘だって、しっかりお気に入りの1枚を確保してる。
それがまた実に知樹さんらしい、抽象画の描かれたいいお皿なんだ。
すごくバランスがいいし、それを選んだ娘はセンスがいいと思う。
そしてもちろん知樹さんだから、面白い絵もいっぱいある!

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迷いに迷った末、わたしも小さいお皿を2枚選んで、それでやっと落ち着いて絵を見ることができたのだけれど、今回もまた絵がいいんだ。
このところずっとピンクブームがつづいていた知樹さんが、ひさしぶりに描いたというブルーの絵ばかり12点。
雪の降リ積もった朝のような清潔でサイレントな景色あり、こんこんと湧いてくる泉のような不思議な静けさがあり、止まったような静かな海の、青の景色があり、波に流されて浜に上がったばかりの濡れた青の息遣いがあり・・・・・・
様々な静寂のなかで、たしかにそれに抗うような精緻で繊細なエネルギーの震えが感じられるような絵画たち。

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いい絵を見るといつも思うのは、いつでも好きな絵を買える財力と、その絵を飾るにふさわしい壁のある部屋に住みたいなってことですね。
それは簡単にあきらめちゃわないほうがいいのかなあ、と思うのと同時に、いつも思いだすのは『ハーブ&ドロシー』のことかな。彼らが素敵なのは、美術品の収集をすることにおいて先見の明があったとか、独自の審美眼を持っていた、ということ以上に、アートを通して今を最高に楽しんで生きているその姿じゃないかと思う。たとえ大したお金持ちじゃなくても、シャビーな狭いアパートに住んでいても。
わたしはマニアに興味はないし、あそこまでにはなれないとしても、そのスピリットの端っこくらいは齧りつづけていたいなって思うのです。

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さて、嫁の頭に脚付き大皿をのせて遊ぶ渡邉画伯。
そして、こんなことされても笑ってる鷹揚ななつみさん。
いつも自然な笑顔がとってもきれいなひとです。
これまで一度も喧嘩したことがないという、仲のよい夫婦。
知樹さんの絵に変な翳りがないのはそのあたりにあるのかも。

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そして、ここには写ってないけど知樹さんと三彩さんもいいコンビです。
お互いのいいところをとてもよくわかっていて、お互いリスペクトしてる。
持ってみたらわかるけど三彩さんのお皿はとてもよくできていて、陶芸の技術的なところは三彩さんの懐に預けて知樹さんが自由に絵を描くから世界にひとつしかない素敵な器になる。何より二人とも面白がりで自分たちで楽しんでるところがいいと思う。

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今回もとーっても楽しかったです。
わたしの写真じゃ実物の絵やお皿の良さの一端も伝わらないと思うから、興味のある方はぜひぜひCONTEXT-sに行って自分の目で見てください。

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作品を買うとペーパーバッグにもれなく知樹さんが絵とサインを描いてくれます。
それがまた笑えるのよー

ing(企画)渡邉知樹 個展『静寂に抗う』は、阿佐ヶ谷CONTEXT-s
2017年11月2日(木)〜8日(水) 12時〜19時まで。

ぜひお見逃しなく!

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ちなみに知樹さんが着ているTシャツは、いま小平の白矢アートスペースで同時開催している『からんどりえ展』で売っている、画伯一押しの絵柄。
このあと我々も見に行きました。

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2017年9月21日 (木)

働き者のジェントルマン

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今週のはじまりは最悪だった。
月曜の朝、起きてすぐキッチンの流し台の下の戸を開けたら、足もとにパタッと落ちた黒い物体・・・・・・。いつもだったらサッと身体が動くのに、寝起きだったからまだぼぉっとしていて身体がすぐに反応しなかった。目を見開き頭におっきなコーテーションマークのっけたまま身じろぎもせずに見下ろすわたしに、敵は敵で「あ゛っ ・・・・・・」みたいな、すごーく居心地の悪そうな様子でコソコソっと冷蔵庫に下に入ってくあたり。なんなんでしょう、虫って。ぜったい人間並みの感覚持ってるとしか思えない。その姿が見えなくなったころになってやっと、「きゃあ~、ゴキブリー!」と叫ぶわたし。ゴキブリどころか虫全般だめなヤワな息子はカーテンひいたお風呂場の脱衣所の前で「えーー! どこにーーー!!」と叫ぶ。ああ、もう駄目。1週間の始まりだってのに朝から萎える。
1年通して家の中では滅多に出くわすことのない名称発音するのも忌まわしいゴ・が出てくるのは大抵この時期だ。夏場よりいま。朝晩ちょっと冷えるようになったころ外から入ってくる。それにこの時期は蜂も多い。たまにどこから入って来たのか小さなヤモリ。東村山市は緑も多いが虫も多い。
それで昨日の夕方まだ明るいころ、洗濯物をとりこもうとベランダにでたらワッと蚊にたかられたのだ。
それでこの働き者のジャントルマン、登場。
澤山工作所さん作のこの蚊取り人。
実に飄々と涼しい顔してエレガントに煙に巻いてくれるじゃないですか。
それに京都生まれで、金沢美大を出たあと絵を描いたり造形をやったり、劇団に入って役者をやったり舞台美術の大道具さんをやったりしながらありとあらゆる仕事をして健康食品の販売までやったけど、どれもみんな楽しかった、それからずいぶんしてからまた物づくりをはじめて、主に廃材使ってケッタイな物を作るようになっていまに至るという澤山さんは、なかなかに素敵なひとだった。
何より作るものがユニーク! 
その作品はユーモアとペーソスにあふれてて、やっぱり芝居を感じさせるもの。どこかシュールだけど物語のあるロマンティックな世界。ちょびっとクラフト・エヴィング商會にも通ずるところがあるような。無くてもぜんぜん困らないけど、部屋にあったら毎日が楽しく、ときどきクスッとなるような♪
わたし、男のひと見ても滅多に素敵と思わないほうですが、澤山さんは素敵だった。まるで少年みたいな人。もし若かったら弟子にしてもらいたかったくらいです。
ちなみに、息子に「この時期って夏より蚊多くない?」と言ったら、「それは単にクーラー入れずに窓あけてるからでしょ!」だって。
まあね。
そうとも言う。

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2017年8月 2日 (水)

形あるものはいつか壊れる

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昨日、いつもよりカフェインをとり過ぎたせいか、遅めの夕飯を食べすぎたせいか、なかなか寝つかれずにいて、やっとうとうとしたところで部屋がガタガタ揺れだして飛び起きた。
けっこう大きな揺れで、例によって揺れがおさまるまでCDラックと本棚を押さえた。
それからトイレに行ってまた寝床に戻ったものの、やっぱりよく眠れないまま朝、またしても大きな揺れ。地震はいつも意識が薄れたころにやってきて、形あるものはいつかは壊れる、生あるものはいつかは滅し、いまというこの時間が何度でもやってくるものではないことを教えてくれる。

おととい、ショックなことがあった。
美千代さんの個展の最終日、展示が終わるころ作品をうけとりに行ったら、わたしをみつけるなり花屋が飛び出てきて、「あなたの買ったのはウサギと猫だった?」と聞くので、昨日お金も払ったのにいまさら何いってるのかなと思いながら、「うん。そうだよ。もしかして売っちゃったの?!」とあわてて聞き返すと花屋、「割れちゃったの」という。
ついさっき、お客さまが落として割ってしまったのだという。
「えーーー! すごいショック!!!」と思わず声をあげてしまった。
なんたって初日に見に行って手に入れたものだったし、特に気に入っている猫のほうだったから、よけいにショックだった。
美千代さんはまたつくる! といってくれたからお願いしたけれど、当然のことながら陶芸作品だから二つとおなじものはつくれない。
ショップの店員だった経験もあるわたしとしては、こういう個展でひとつしかない陶器など壊れものの作品を扱うときは、店側はお客さまに対してじゅうぶんな注意が必要だし、とくにすでに売れてしまったものについては他のお客さまが不用意に触れないように奥に飾るとか、もうちょっと配慮をしてほしかったな、と思う。
でも、そう言ったところでどうなるわけじゃない。
その日は作品の受けとりだけじゃなく、手が足りないようだったら搬出の手伝いをしようと思ってでかけたのだけど、もうすでに展示を見に来てそのまま手伝いをしているふたりの女性がいて、ひとりが帰ってしまった後わたしもくわわってそれから2時間、外の暗いところで蚊に刺されまくりながら搬出・梱包・発送の準備を手伝った。
作家活動って、こういう細かいことまでぜーんぶひっくるめて作家活動だからほんとに大変です。
美千代さんは小柄なのにタフでアクティブで陽気で快活なちっちゃな太陽みたいなひとで、人懐こい目をしたなかなかの人たらしで、彼女みたいなひとじゃなかったらおとといのわたしのがっかり度・疲労度はもっともっと高かっただろうと思う。

写真は無事だったほうの美千代さんのウサギのボウルと手書きのお礼状。
一昨日の夜、わたしの帰り際にバタバタ走ってきて渡してくれたプロヴァンスのヌガー。
彼女はちょっと台風の目みたいなひとでもあったなあ。

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2017年7月28日 (金)

高瀬きぼりお絵画展@桃居

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夕方家を出て、きぼりおさんの個展を観に行く。
今日は朝から一日曇り空で湿度が高くて、雨が降りそうな気配を感じつつ傘は持たずに出た。わたしは傘を持つのが嫌いです。
このあいだの記事に根津美術館から桃居に行くのはどうやって行けばいいんだろ、っていうようなことを書いたけど、ちゃんと桃居さんのホームページに地図と道順が載ってましたね。根津美術館に行くのとおなじ、表参道のA5番出口を出たら美術館方向にまっすぐ歩いて横断歩道を渡り、美術館の脇の坂道を下ってそのまま歩くこと徒歩十数分。途中、道が二股に分かれるところがあるけど、それも地図通り手前の道をまっすぐ行くと右手に折れる道が現れて、そこを曲がったらすぐです。はじめてのわたしでも迷わず行けた。
桃居はその佇まいからして、いかにも陶芸の個展をやるのにふさわしい、老舗の風格のある渋いギャラリーでした。

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( 絵画 『みずいろの筆跡』 )

通りに面したウィンドーに額装された絵が何点か、店に入ってすぐの左の壁に大きな絵が数点、棚には小さいのから中くらいの絵が飾られ、奥の部屋の壁にも数点。テーブルの上には無数のドローイング帳が置かれて。
店の奥からは男性の低い話し声が聞えてくる。
深くてよく響く素晴らしい声。これはきぼりおさんの声じゃないなと思ったら、ギャラリーのオーナーの声でした。まるで声優みたいな声。
手前の部屋から順番に絵を見ていって、奥のテーブルの上でドローイング帳を繰っていたら、きぼりおさんから「こんにちは」と話しかけられた。きぼりおさんはいつも自分から来場者に声をかける人みたいです。そういうのってえらいと思う。わたしは帽子をかぶってうつむいていたのだけれど、顔をあげたら憶えててくださったみたいで、「あ、このあいだはどうも」といわれた。ギャラリーみずのそらで初めて会ったときよりあらたまった雰囲気。それは桃居という場所の力らしくて、てっきりわたしは昨日からはじまった展示かと勘違いしていたのだけれど、今日が初日だったらしい。そりゃ緊張もするだろうな。そして、みずのそらのときは端正なギタリストのお友達が来ていたけれど、今日はピアニストで作曲家のお友達が来ていて、きぼりおさんのご友人はどうも端正な方が多いみたい。きっと絵とおなじくらい、音楽が好きな人なんだろうな、と思った。
しばらく絵を見ていたらオーナーがお茶をいれてくださって、お茶の器も品よく金継ぎされた滋味あふれるもので、奥の応接間みたいなコーナーで3人でおしゃべりしたのも楽しかった。きぼりおさんが、自分の絵を買ってくれた友達が、家に絵を持って帰って奥さんにぼろくそに言われた、という話をしてて、でもそういうの聞いてもぼくはなんとも思わない。だって自分だって人の絵の個展に行って、いいと思う絵なんか滅多にないから、というのを聞いて、ふ~ん、なるほどー、と思った。

いつも書いてるかもしれないけれど、絵を買うのは簡単じゃないです。
まず単純に言って、理由はわからなくても言葉で説明できなくても、「これは!!!」という直感がないとだめだし、いくら気に入ったからって大きな絵ともなると値段はもちろん、その絵を飾るにふさわしい空間が必要になる。
十分にお金があって、絵を飾って鑑賞するにふさわしい部屋と、飾っていないときに絵をしまっておける収納場所のある素敵な家を持っている人なら何も問題ないでしょうけれど、そのどれひとつ持っていないわたしにはとても難しい。
かといって、矛盾するようだけれど何も買わずにギャラリーを出てくるのもなかなか難しいです。
たとえばドローイング。
小さな紙に描かれたドローイングは、たとえばTシャツを買うより安くて、思わず買ってしまいそうになる。でも、これはあくまでわたしの考えだけど、額装された絵は完成された(あるいは完結した)世界観を持った一編の詩のようなものに見えるのだけど、小さな紙ぴれに描かれたラフなドローイングは、まるで詩のフレーズみたいに見える。だから1枚じゃなくて何枚かで組で飾りたくなるのだけれど、でもその1枚1枚はなんの脈絡もなくたくさんの絵の中にあって、そこから3枚なり4枚を本気でチョイスしようと思ったらけっこう時間のかかることだと思のです。きぼりおさんが描くのはほとんど抽象で、わたしが最近、好んでみるのも抽象で、具象画だとまた話は少しちがってくるんだと思うのだけれど。

そんな思考がめぐるなか、ある1冊のドローイング帳のなかに1枚のカラーの、それはそれで完結された(この言葉もあまり正確じゃないけど)絵をみつけてとても気になったのだけれど、こんどはその絵をどう額装するかで頭がめぐって、(今日は行ったのが遅かったから)そのときもう閉店間近だったし、お腹もすいてきてタイムアップでけっきょく何も買わずに出てきてしまった。
で、何も買わずに出てくるといつもなんとなく作家さんに申し訳ないような気持ちになるのはきわめて日本人的、かな。

きぼりおさんの絵を見るためだけに表参道に行って、絵を見てお茶もしないで帰って来た。駅からギャラリーまでの道はとても素敵で、退屈じゃなく、青い夜空にぼんやり滲んだ三日月がきれいで、根津美術館の入り口の笹竹が街灯のあかりの下で涼しげに揺れるのを眺めながら、いったいわたしはどんな絵が好きなんだろうな、どんな絵に心揺さぶられるんだろう、自分に絵が描けるとしたらいったいどんな絵を描きたいだろう、なんてことを考えながら帰った。答えはそのときどきによって変わってゆくだろうけど、わたしは1枚の絵の中に意識の流れ、というか、エネルギーの流れみたいなものが感じられる絵が好きなんだと思います。それから1枚の絵に投じられたエネルギーの高さ。そして自分が描くとしたら絵の中のどこか一点にでもひかりの所在が感じられる絵。例えばそれはアストル・ピアソラの音楽を聴いていて、真夜中の漆黒の、地を這うような重たい、鋭いリズムを刻む人間の上に天上から一条の光が射してきて、一気に至福感に満たされるようなあの感じ?
そんなのが描けたら最高だろうな、と思う。

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( 絵画 『波、色面と筆跡』 )

個展って、はじまったらあっという間です。
きぼりおさんの絵画展は今日から5日間、8月1日火曜日まで。
桃居さんは入るとき一瞬、緊張するけど、とても落ち着く素敵なギャラリーです。
オーナーは穏やかな人柄の方だし、きぼりおさんはオープンで話しやすい。
絵の好きな方はぜひお出かけください。

高瀬きぼりお 絵画展

2017年7月28日(金)~8月1日(火)
11:00 ~ 19:00 (最終日は17:00まで)
桃居:東京都港区西麻布2-25-13

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2017年7月22日 (土)

Des lettres de Paris / 巴里からの手紙

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今日はいつもプールで泳いでる時間に花屋に行った。
パリから一時帰国しているアーティスト、山下美千代さんの個展を観るために。
去年から楽しみにしていた個展だから初日に行きたかったし、今日は夜から仕事のミーティングがあって出かけなきゃならないこともあって。
朝1で行きたかったけど、けっきょくわたしが行けたのは例によって午後。
でもちょうどタイミングよかったみたいです。
開店直後は混んだみたいだけど、この時間、店内には顔見知りの男性が1人いただけ。
明るい店内にはセラミックのウィンドチャイムが涼しげに揺れて。
壁にはぱっと見てすぐ美千代さんの絵だとわかる個性的な絵。
やっぱり花屋にすごく馴染んでる・・・・・・
奥には見るからにウキウキした店主が。

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去年、美千代さんが参加されてたグループ展を観に行ったあと、ここで個展をしたらといったのはわたしなのです。まさかこんなに簡単に実現するとは思わなかったけど、実現してよかった。ここで見られてよかった。
花屋の店主がいちばん気に入ったという、頭に薔薇をのせたマドモアゼル。
いっとう最初に売れてしまったということで、すでにsoldout の札が付いてました。

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これはウサギのマダム。

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天井から吊られた人形はウィンドチャイムだけど、棚に置かれているのは呼び鈴で、こんなのをチリンチリンと鳴らして「お茶の時間ですよ!」なんて知らせたらお洒落でしょうね。この人形にはマドモアゼルシリーズとマダムシリーズがあって、棚に置かれたのはマダム。ポーズも表情も凛としています。かっこいい。
そしてセラミックが並んだところはそれだけで絵画的。

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おっと、1人の若いマダムと目があいました。
何やら言いたげ ・・・・・・

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マダムっていうと大昔、パリにいっとき住んでた親友から送られてきた絵葉書に、「こちらパリではマダムと呼ばれたら大人の女と認められたということです」と書いてあったのを思いだします。でも、わたしはずっとマドモアゼルのままがいいと思ってた。
いまでも花屋の店主は早くおばあさんになりたいというけど、わたしはおばあさんにはなりたくない。なりたくなくても生きてればけっきょくはいつかなるんだけど。

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花屋の入り口の硝子戸に絵を描きはじめる美千代さん。
わたしはその絵からもっと線の細い方かと思っていたのだけれど、初めて会った美千代さんは、(真夏ということもあるけど)健康的に日焼けした明るくて快活なひとでした。初めて会ったと思えないくらい、自然でオープン。
それがまたよかった。

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「わたしのつくる人に機嫌のいい人はあまりいません。子どもでも笑ってない。みたいな」という美千代さん。
そこがまたかっこいいし、ある意味フランス的。
なんでもかわいく描いてしまう、作ってしまう日本人とはちがうところ。

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陶のアクセサリーと、この個展にあわせたカトンテールさんの焼き菓子。

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猫のペンダントヘッドをみつけました。

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この絵は昔、彼女が住んでいたという、ベルヴィルの街。

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フランスの少年。

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今回いちばんの力作なのかな、個展の案内にもなった手のオブジェ。

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描く絵が夏っぽいってわけじゃないんだけど夏にあってたね、と花屋がいいました。
夏は光がいいんだと思います。
何より陽射しがいっぱいで明るいし、緑の輝きがきらきらしてて眩しいし、色がぼわっと滲む感じがどこか幻想的で。

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初日だけあって店が空いてたのはほんのいっときで、次から次へといろんな人がやってきて、なかにはわたしの知ってる人もいて、ちいさな花屋に誰かが来るたびに花屋を出て本屋に行ったりお菓子屋に行ったり、お喋りしているうちにあっという間に夕方、仕事に行く時間になってしまってびっくり・・・・・・。
夏は外にいると時間が全然わからないから困る。
急にバタバタとあわてて帰って来たのだけれど、ちなみに今日わたしが話していた(乙女な)男の人は、さんざん眺めて悩んだ末に、この子に決めたそうです。赤いリボン、黒いドレスのマドモアゼル。
さて、わたしのは?

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山下美千代個展 『巴里からの手紙 /Des lettres de Paris 』はコトリ花店にて、今日から定休日の木曜ぬかして7月31日まで。
夏時間の花屋で、美千代さんのエスプリに触れ、自分だけの特別をみつけてください。
詳細はコトリ花店のホームページまで。

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2017年7月11日 (火)

きぼりおさんから個展のDMが届いた。

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三彩さんからおすすめされて二月、ギャラリーみずのそらで行われた個展に行った高瀬きぼりおさんから、次の個展の案内が届いた。
場所は西麻布の桃居。
前から行ってみたかったギャラリーだ。
ずいぶん渋い場所でやるんだな。
三彩さんがやっても似合いそうな場所だよ。
なんて、娘と話した。
きぼりおさん、とっても面白い絵を描くひとです。
でもってとっても話しやすい。
話もとても面白い。
話すこと(思考してること)はちょっと頭でっかちな感じで論理的、なんだけど、描いてる絵は右脳的。
そのギャップも面白い。

封筒に書かれたきぼりおさん直筆の書き文字を見てたら、ペペペさんもそうなんだけど、なんだか字も絵みたいである。
ペペペさんの字が繊細でポエティック、だとしたら、きぼりおさんの字は筆圧がつよくてどこかプリミティブ、な感じもする。面白い。
ふたりに共通するのは共に面白い絵を描くことと、オープンなところ。
オープンなひとって大好きです。

高瀬きぼりお 絵画展
2017年7月28日(金)~8月1日(火)
11:00~19:00 (最終日は17:00まで)
ギャラリー桃居:東京都港区西麻布2-25-13

きぼりおさんは桃居に行くのに『表参道から根津美術館の横を通って歩いていくのが好きです』と書いてるけど、どうやって行ったらいいのかな?
この○○暑い時期にたくさん歩くのは嫌だしなー

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2017年1月20日 (金)

そして空について語り合う

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Hello、水瓶座さん!
今日から水瓶座の誕生月がはじまります。
そして今日から渡邉知樹さんの個展『そして空について語り合う』がはじまります。

思えば知樹さんの絵をはじめて見たのは去年の自分の誕生日の日でした。
滅多にない土曜日の誕生日。
吉祥寺のにじ画廊で『花、花、ギガンテス、花』を見たのがはじまりでした。
誰かのTwitterで個展のDMを見て、直感的にいいと思って、これは絶対に見に行こうと思って行ったのだけど、実物を見てびっくりした。広いギャラリーの白い壁にかかった絵がどれも良くて。一見、何気なく描かれたような線が、でもどうやってもそれ以上ないというくらい決まってて。コスミックな多様性を感じる有機的な細かい線で描かれた絵も、ただ深く鮮やかに色を重ねただけの絵も、どれもよかった。ポップなんだけど、普遍的なものがある絵。
いま思いだしてもすごく勢いのある個展だったと思う。

その印象は個展から2週間経ったあとも頭から離れなくて、そしてついに知樹さんにメールをしたのだった。
いま手元に残っている絵はありますか、と。
生まれてはじめて絵を買おうと思った瞬間。
ぜんぜん大げさじゃなく、清水の舞台から飛び降りるような気持ち。
ずっと自分なんて絵を買うような身分じゃないと思っていたし、絵を飾って素敵な家にも住んでないし、それに何より、いつものように(その絵を自分の部屋に飾ったときの)絵が頭にあるだけで、どうやってコンクリートの壁に絵を掛けるかという問題もあったのだから。

奇しくもわたしが欲しかった絵はまだ知樹さんの手元にあって、実際に絵が届いたのはそれからなんと7ヶ月後。
わたしもけっこう気が長いほうだけれど、知樹さんも気の長い、鷹揚な人でよかった。
そして『なぐり』を生業とする友達の創意工夫のおかげで無事に絵が掛かったのがさらに2ヶ月後。
そして、いつでもダイニングルームに絵がある生活も早や4ヶ月。

食卓に花があると食事をしながらいつもじーっと花を見てしまうけど、目の前に絵があるとやっぱりいつでもじーっと眺めてしまう。
そしてそれは花とおなじように、見る時間帯、光の加減によって日ごとにまったく見え方が違うから、毎日おなじ絵を見ててもぜんぜん飽きないのです。

朝のひかり、昼のひかり、自然光の中で見るときと暗くなって灯りをつけたとき。
そして夜、部屋の明かりを消してわずかな光源の中で絵を見るとき。
(これがまたいい!)
こうなるともうたぶん、描いたご本人よりこの絵の表情を知っているんじゃないかと思ってしまう。

絵も自然の花や鉱物や生きもののようにエネルギーを発しているから、絵がそこにあると毎日それをうけとることになる。
ゆえに、どんなに美しくてもマイナスに引きづられる絵をわたしは自分の部屋に(とくにみんなが集うダイニングルームに)飾りたいとは思わないんだよね。

知樹さんの絵が発するエネルギーは、曇りのないしあわせなエネルギーです。
それはきっと、唯一無二の宝物を手に入れたことに起因してるんじゃないかと思うけど、わたしが手に入れた絵の場合、Pinkという色にも象徴される。

部屋の空気が一変するような大きな絵をはじめて買って思うのは、絵のある部屋、絵のある生活っていいな、ってこと。
たとえば、いまわたしは木枠の大きな窓のある、なんにもないただの白い箱みたいな部屋に引っ越したいなと思うのです。
そこに素敵な家具が何もなくても、自分の気に入った絵が壁にどん!と飾ってあれば、たとえ木の林檎箱をテーブルにごはんを食べても豊かだと思える。

そんな絵を描く知樹さんの個展が国立の『黄色い鳥器店』さんで今日からはじまります。

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 そして空について語り合う

 渡邉知樹 個展

 2017年1月20日(金)-29日(日)23日(月)はお休み

 たのしいお皿に盛りつけて おいしいいものを食べながら
 空について語り合う そしたらもう少しがんばれる

 新作の絵画をメインに、オブジェのほか陶芸家 駒ヶ嶺三彩さんとの
 コラボ絵皿を存分にご覧いただけます。
 黄色い鳥器店での初個展、どうぞお楽しみください。

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2017年1月 9日 (月)

New Year Greetings展 ☆

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あたらしい年のはじめの1番最初に何を見るかって、けっこう重要です。
その年の傾向や勢いが決まる、っていったらちょっと大げさかもしれないけれど、でもやっぱり気持ちのいいスタートを切りたいから。
そんな意味で今月は京都で同僚が見てとてもよかったというマリメッコ展と、前から楽しみにしている陶芸家の駒ヶ嶺三彩さんコラボ渡邉知樹さんの個展が見られたらそれだけでいいと思っていたのだけれど、年のはじめに三彩さんから年賀状とともにこの展示のご案内をいただいたので、これを今年いちばんに見に行こうと思いました。

昨日から西荻窪のギャラリー みずのそらではじまった『New Year Greetings』展。
文字どおり、様々な分野で活躍する参加者の方々から寄せられた年賀状の展示です。ほんとは初日の昨日、行きたかったのだけれど、あいにくの雨と寒さで今日にしました。前回行ったとき、あそこは晴れた日にこそ気持ちのいいギャラリーだと思ったから。
昨夜のごうごうたる北風と雨の音はまるで嵐のようだったけど、今日は午後から青空も見えて、ちょっと青ざめた感じだけど今日のみずのそら、です。

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コンクリートの床から生えたみたいな竹の先に付けられたカラフルな年賀状。
その風景はなんだか七夕のようでもあり、河原の葦のようでもあり。
ゆらゆら揺れてる感じが気持ちよさげで、それこそ風の便りのようで。
歩きながら裏と表、一枚一枚見ていくのも楽しくて。

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酉年だけに、鳥のモチーフが多かった。
年賀状といっても紙だけじゃないのが面白い。

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パッと見てわかった。
これは鍛冶屋のカージーさんの作品。
飛んでる鳥のバランス、壁に映った鳥の影もいい。

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そして、たーくさんあるなかでも目立ってた、知樹さんの年賀状。
知樹さんのいつものへんな鳥、と、絵みたいに特徴のある字。

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それと、これもやっぱり涙ガラスさんだあー、とわかる、涙ガラス制作所さんの年賀葉書。猫が青い宝石のようなうつくしい涙をひとつぶ流してて『2017年もうれし涙の多い1年になりますように!』って書いてある。猫の頭の上には青い鳥。

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部屋の端の棚にのった年賀状を眺めていたら、「どれがお気に入りですか?」と三彩さんに声をかけられた。今回のこの展示では三彩さんは実行委員だそうです。実行委員だなんて、学祭みたいで懐かしい。三彩さんとは去年のクリスマス前にトラネコボンボン展でばったり出くわしたり。ほんとに飄々として神出鬼没な人です。
しばらく立ち話ししたあと「よかったらカフェもどうぞ」といわれたので、お茶をして帰ることにしました。
ここはカフェも気持ちいいです。
テーブルの上に飾られた、これも一発で三彩さんとわかる花器と白椿。

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この鉄釉みたいな輪花の一輪挿し、素敵だったなぁ。

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それから、このカフェではいつも展示にあわせて素敵なスウィーツ・プレートを出してるんだよね。今日は、conalogueさんのアーモンドとフランボワーズ ブルーベリーのケーキと全粒粉のクッキー。ケーキは弾力のある食感で、上にかかったアイシングとアーモンドとフルーツの入った生地が口の中で合わさると、ちょうどよい酸味と甘みで、とってもおいしかった。
そして珈琲にうるさいわたしですが、この珈琲がちょっと驚くほどおいしかったです。
思わず、豆はどこのを使ってるんだろう、と思ってしまったくらい。

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というわけで、年のはじめからとても気持ちのいい展示を見ました。
個人的には年賀状を出さなくなって早や、うん十年のわたしなので(単純に離婚した後どうしていいかわからなくなっちゃったのです。それから十年くらいはもうほんとに生きるのに精一杯でそんなことをする余裕もなかったし)、そんなわたしに年賀状をくださる人ももうそんなにはいないのだけれど、それでもわずかに送ってくださる人がいて、そんな方には折りに触れてゆっくりですけどぼちぼちお返事を書こうと思っています。

毎年おもしろいのは、自分では一枚も年賀状を出さないのに、元旦になると真っ先にポストを見に行く娘。そしていつも「おかあさんのしかなかった~」と帰ってくる。で、ちょっとかわいそうになっちゃう。
三彩さんのブログに『年賀状をおくることは "いつでもあなたのことを思っています。"という気持ちと共にあると思っています。』とあって、いつも思ってるかどうかはわからないけど、頭のどこかにはあるってことなんだろうなあ、と思います。
だから来年は娘にも年賀状を送ってくれる相手、そして送りたい相手がいるといいなあ、と思う。わたしは相変わらず年賀状は出さないんだけど、最近はこみいった長い手紙はともかくとして、短い手紙くらいは手書きで書くようにしていて、ときどき贈りものとかと一緒に贈るのだけど、返事はこないことのほうが多い。電話がきたり、メールがきたりするくらいで。
それはなんだかつまらないね。
ティーンエイジャーのころから20代くらいまでがいちばん手紙を書いたり、もらったりすることが多かったような気がする。ポストの中の、たくさんのどうでもいいDMに混じって見慣れた書き文字のある封筒をみつけたときのドキドキ。
また体験してみたい。

そうそう、帰り際、「三彩さんの(年賀状)はどこにあるの?」と訊いたら、「わたしのは外の目立つところにあります」って。気づかなかったなあ・・・・・・
でも外に出てから見たらありました。
きれいに編まれた紅白の水引に陶の鳥、『平和』の文字。
やっぱりこれも三彩さんらしい!

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