雪の朝の登校風景
窓の外は雪・・・・・・。
気温がそれほど低くないから積もることはなさそうだけど、がんがん降ってる。
娘に「今日はプールはやめたほうがいいかもね」といわれて、今日はプールを休んでしまった。
前はこれくらいの雪だったらふつうに行ってたのに、年かなあ・・・・・・。
一昨年の大雪の翌日に顔から派手に転んで、左半身を強打した後遺症は2年経ってようやく回復してきた感じだし、あれ以来アスファルトのガリガリした道を見ると避けて歩くようになってしまったくらいの大きな出来事ではあった。
わたしはあれで、『転ぶ』ってことが人の身体にどれだけのダメージをもたらすか、全身のあちこちがいろんなかたちでズレてしまうのをつくづく思い知ったのだった。
50代のわたしにしてこれだから、70代、80代の方々はほんとうに気をつけてほしいと思う。誰かと暮らしているならまだしも、1人暮らしで転んだりしたらどうにもならなくなる。どうしてもその日じゃなきゃならないことをぬかして、買い物や散歩は晴れた日の明るいうちにすることにして、雨の日や雪の日や強風の日や、とにかく極端な天候のときは静かに家にいることをおすすめしたい。
そして今日みたいな雪の日に家にいて聴くのにぴったりなのがこの1枚だ。
元旦にも載せたビル・エヴァンスの、『From Left to Right』。
奏者の向かって左にスタインウェイがあり、右にエレクトリックピアノがある。
ビル・エヴァンスはピアノに向かった身体をちょっとねじるようなかたちで、くわえ煙草で左手でキーボードを弾いている。CDをプレーヤーにに入れて音が流れ出した瞬間、ビル・エヴァンスを聴きなれた人なら「あれ?」と思うかもしれない。
ここで聴けるのは『究極のリリシズム』といわれるようないつもの張り詰めた音ではない。
もっとリラックスしたあたたかい音だ。
そう、このアルバムではビル・エヴァンスがびっくりするくらいリラックスしてるんだ。
まるで演奏しながら、他人のことをいっさい忘れて自、らの追想にどっぷり浸っているような・・・・・・。
紡がれるのは一編の短編映画のような世界だ。
ノスタルジー。
しあわせな愛の記憶。
懐かしいあのひとのうつくしい横顔。
子供時代のきらきらした思い出。
9番めの曲のせいかな、ちょっとトリュフォーの映画っぽくもある。
絶妙にマッチしたオーケストレーションのせいでフランス映画のような、実に優雅なサウンドで、頭の中に去来する映像はたぶん、過ぎ去って今は何ひとつ残っていないただの記憶なのに、そのすべてがあたたかく、しあわせなんだ。
そのしあわせな感じが、いつものビル・エヴァンスとは違うところかな。
さっき書いた9番めの曲は『Children's Play Song』ってタイトルで、冒頭にこどものかわいい声が入ってて、タイトルを知らずに聴いても冬の朝のこどもの登校風景が頭に浮かんでくるような曲なんです。まだ降りはじめの雪がちらちら舞ってはこどもの着たウールのコートに、透き通るようなきれいな頬に、背中のランドセルに、落ちては消え、瞬くように光っては消えて、こどもたちははしゃぎだす。雪だ! 雪だよ! って・・・・・・。
暮れも押し迫った、そうじゃなくても忙しいときにわたしは鵠沼海岸近くの映画館でビル・エヴァンスの映画のラスト上映があるのを知って行きたくてたまらず、けっきょくは行けなかったんだけど、映画の内容は知らずともだいたい予想がつく、というもので、、、、、、。だからなおさらあのビル・エヴァンスにも、こんなにもリラックスした、あたたかくしあわせな音を紡ぎ出せる心境のときがあったんだ、というのは、なんだかとても感慨深かったです。くわえて1曲めの『What Are You Doing the Rest of Your Life?』と、3曲めの『Why Did I Choose You?』ってタイトルは、いまのわたしにはなんだかとても・・・・・・。
この音はきっと冬の花屋にもあうと思うよ。
間違いなくね。
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