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2019年10月18日 (金)

つぼみいっぱいのジュード・ジ・オブスキュア

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火曜日に息子から「18日にHさんの誕生日やるんだけど、渡すものがあるなら当日昼くらいに取りに行きます」とメールがきて、あわてた。わたしがHさんの誕生日に贈ろうと思っていたのは、ばらの苗なんだから、急に取りに行くといわれたって困ってしまう。
いつだったか、息子がHさんに母が長いことベランダでばらを育てている、といったら、「ぼくもばらを育ててみたいんだけど、ばらはいつもすぐに枯らしてしまう」といっていたというので、まずそれは良い苗を手に入れることが先決だね、と話した、それがきっかけだった。
折しも先日、相原ばら園さんから『つぼみつきのばら販売のお知らせ』というメールをいただいたところだったから、息子のメールを見てすぐさま相原ばら園に電話をかけた。
ばらのナーサリーに電話をかけるのなんて、いったい何年ぶりだろう?
あれはまだ村田さんが生きてらっしゃるころだったから・・・・・・

電話に出てこられたのは落ち着いた穏やかな声の感じのよい女性で、いまオーダーして金曜日に間に合うか訊いたら、「間に合いますよ!」と明るい声で即答された。事情を話して初心者でもきれいに咲かせられる品種のおすすめを伺うと、「いまちょうどつぼみが上がってきたところなので、いまなら選び放題ですよ」とおっしゃる。わたしの経験ではイングリッシュローズなら比較的誰でも最初からカタログの写真通りに咲かせられる、というイメージがあって、そのなかでも香りのいいばらがいいな、と思った。どんなに美しいばらでも、香りが全然ないのは味気ない。そんなことを話しているうち、ばら園で働いているのだから当たり前といったら当たり前かもしれないけれど、彼女の話っぷりからほんとうにばら好きなのが伝わってきて、なんだか楽しくなってしまった。「いまちょうど農園の近くにいるので、なんでしたら農園に移動して実際に苗の状態を見ながらおすすめをいってもいいですか?」というので、「お願いします!」というと、彼女は農園の中を歩きながら、いま送るのにちょうどいいばらの名前を次々にあげていった。
彼女の一押しはボスコベル。
それからダーシー・バッセルにセプタード・アイル、ポエッツ・ワイフにグレイス。シャルムにエウリディーチェ、そしてボレロ。レディ・エマ・ハミルトンもいい感じです。ああ、それからデズデモーナもいいですね。これも香りのいいばらです。そして、さっき好きだとおっしゃった、ジュード・ジ・オブスキュアもつぼみがいっぱいついてます。それからこれは長くばらをやってらして、ばらをよくわかってらっしゃる方が次にお迎えするときおすすめのばらなんですが、サントノーレとクロード・モネ、それにモーリス・ユトリロもすごく印象的な、美しい咲き方をするばらです。
わたしは左手に受話器を持ったまま、彼女がいうばらお名前を次々に手近にあった紙にメモしていった。
そして最後にお礼をいって、すこし考えて今日中にオーダーしますといって電話を切った。

それから、インターネットで次々ばらの名前と花姿の画像を検索していった。
たしかに彼女の一押しのボスコベルはとてもヴィヴィッドで美しく、いまの急に寒くなった薄暗いこんな日に届いたら思わず「わあっ!」と声をあげてしまいそうなばらだったけど、Hさんが育てる繊細なグリーンガーデンに調和するだろうか。
迷ったので、息子にボスコベルとデズデモーナの画像を送って「どっちがいいと思う?」と訊いたら、息子の答えは「こっち!」だった。
淡いピンクがかった白ばらのデズデモーナ。
いかにも息子らしい。
(で、自分も娘もやはりこのばらなのだった。白のばらは特別。)
それでHさんにはデズデモーナを送ってもらうことにした。
『デズデモーナ』って、シェイクスピアの『オセロ』にでてくるヒロインの名前だそうだ。

それでオーダーフォームをひとつ書いて送信した後、うっかり自分のもオーダーしてしまった。『つぼみいっぱいのジュード・ジ・オブスキュア』って、わたしにはなんとも魅惑の言葉で、いったいそれをばら好きのこのわたしがどうして無視できよう。
・・・ということで今日の午後遅く、そのジュード・ジ・オブスキュアが我が家に届いた。
いままで家に届いた中でもいちばんくらい背の高い大きな箱で(つまり長尺苗で)、箱の上にあいたまあるい穴からはすごくいい匂いがしてた。記憶の中の、ジュード・ジ・オブスキュアのいい香り!

ばら苗は昔にくらべても、近年ますます贅沢品になった。
それに亜熱帯化している日本の気候にはどんどんばらは合わなくなっている。
やーれやれ! わたしはいったい何をやってるのかな。
こんなことしてる場合じゃないのに、、、、、、
とも思うけど、わたしのベランダにやってきたジュード・ジ・オブスキュアはまるで前からそこにあったように景色になじんで、外の世界を遮断し、束の間ここを楽園にしてくれるのです。

Hさん、お誕生日おめでとう!
そして、このばらはわたしの退職記念にしよう。
そうだ、人生に花くらいなけりゃ!
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