« おじいちゃんにお年玉をあげる日。 | トップページ | Flower of Life »

2018年1月 4日 (木)

イスラエルのベジタブルスープ

18israel_vegetable_soup

昨日の夕方、買いものに行こうとして携帯にメールがきているのに気づいた。
それは12月半ばから待って、待って、待っていた相手からだった。
でもひらくとそれは彼の訃報だった。
昨夜、逝去したと・・・。
彼の家族が送ってきたんだ。
風呂掃除をしていた息子にいうとびっくりして手を止めた。
前に彼から(自分のオリジナル曲で)「息子さんギター弾いてくれないかな」といわれて、「でもずっと弾いてないからうまく弾けないと思うよ」、というわたしに「うまいかどうかなんてどうでもいいんだ。自分にとっては誰が弾いてるかが大事なんだ」といった人。そのころから終いに向けて準備しているのがわかった。きっと断るだろうと思った息子は、驚いたことに断るどころかそのためにいいアンプを新調したくらいだった。
でも神さまはそこまでの時間はくれなかったみたいだ。
コートを着たまま彼の家族にメールの返信をした。
どれだけ打ち消してもそれは頭の中で常に予測していたことだったから頭は冷静に事実を受けとめてるのに、まったく感情がついてこなくて、だから涙もでてこなかったし、悲しみの感情に襲われることもなかった。まるでとっ散らかった部屋の中で、どこから何を手をつけていいのかわからずに呆然としているみたいな感じだった。
それから買いものに行って、なんにも思い浮かばないまま、何も考えなくても作れるインスタントな食材を買って帰って、家族と簡単な夕飯をとった。アルバイトから思いのほか早く帰って来た娘にも話したらびっくりしていたけど、でも彼はわたしの友達の中では比較的あたらしい友達だったから、水面にボチャン!と石ころを投げたくらいの波紋しか広がらなかった。
食卓を離れた後はひとり無口に無表情にレターラックの中身をぜんぶひっくり返して、いらないものをシュレッダーにかけた。それから彼が最後にくれた手紙を読み返した。そこには『親友の証』と書いてあった。いま思えばこれも彼にとっては遺書みたいなものだったんだろう。すこしでも元気で絵が描け、手紙が書けるうちに。
それからキッチンに行って、昨日一晩水に漬けて朝2時間かけて煮ておいたひよこ豆の鍋に火をつけて、夜中までかかって大根とニンジンとさつま芋とキャベツを薄切りにしてひたすら刻んで刻んで刻んで・・・・・・、イスラエルのベジタブル・スープを作った。
ときどき、延々と単純作業をしていたいときがある。
そうでもしなけりゃいられないときがある。
母が乳がんの手術をしたときは、家に赤ちゃんのいるわたしはキッチンでひたすら何時間も鍋を磨きつづけた。
・・・・・・ そうして、野菜を投入した鍋を弱火で2時間煮て、野菜がとろとろになったらところでターメリックとクミン少々を入れて、ヒマラヤブレンドソルトで味をつける。
これはムラキテルミさんのメールマガジンに載っていた、京都出町柳にあるイスラエルレストラン『ファラフェル・ガーデン』の店主、アミールさん直伝のレシピ。
できあがったベジタブルスープは、とにかく野菜を山のように入れているからまるで野菜のおかゆみたいで、見るからに胃腸によさそう。胡椒も入れず、ブイヨンも使わず、塩とターメリックとクミンだけで味つけるから、野菜のあまみがするやさしい味です。スープの黄色い色はターメリックの色。ターメリックを強めに使っているからこのスープは肝臓にもいい。
作りながら考えていたのは彼について、自分にできることはなんでもしたように思っていたけど、そんなのはエゴだった、まだやれることはあったな、ということ。このスープも作ってあげりゃよかった。物理的に作ってあげるのは無理でも、作りかたを教えるんだった。終盤、強い薬による味覚障害がひどくなってなんにも食べられなくなり、毎日おかゆばっかり食べてるといってたJさん。おかゆを食べるよりこっちのほうがどれだけ滋養になったことだろう。でも全ての苦痛から解放されて、薄い、透明な扉の向こうに行ってしまったJさんは、こういうとっ散らかったわたしをにこにこ笑って見てるのかも知れないな。
言いそうなことが、声が聞えてくるようだ。

彼に何があってもわたしに知る術はないと思っていたから、「逝くときはしらせてくれ」とテレパスで送っていた。
2日、実家から帰って夜遅くお風呂から出て着替えて板の間に降りてきたとき、足もとでふわっと弧を描くように光が見えた気がして、でも一瞬だったから目の錯覚かと思ったけど、あれってJさんだったのだろうか。
2日は奇しくも彼の誕生日で、満月だった。

これだけいろいろ考えてるのにまだ涙はでてこない。
そういう朝。

18israel_vegetable_soup_02

|

« おじいちゃんにお年玉をあげる日。 | トップページ | Flower of Life »

おうちごはんがいいよね!」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« おじいちゃんにお年玉をあげる日。 | トップページ | Flower of Life »