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2017年11月11日 (土)

北風に乗って

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風がめぐって、2回めの季節。
めぐみさんが亡くなってもう2年だなんて、月日が過ぎるのはなんて早いんだろう。
晴れて風がつよく、西高東低の典型的な冬の午後、北風に飛ばされるように『やまぐちめぐみ作品展』を観に行った。
外苑前、タンバリンギャラリー。

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タンバリンギャラリーは、都会の中にあって海を感じる場所。
まばゆいばかりに真っ白なギャラリーの中に一歩足を踏み入れると、硝子窓の向こうに海が見えるんじゃないかと、いつもしばし戸の前に佇んで、ぼぉっとしてしまう。
白いコッパンにデッキシューズ、白とネイビーのボーダーTシャツ。
Marina del Rey。
そんな言葉が似合いそうな。
同時にここはこれまで、著作でしか知らない永井宏さんの気配を濃厚に感じる場所でもあったけれど、ひさしぶりに訪れたそこは何かが薄れて、いつかはここもなくなってしまうんだということをおぼろげに感じさせた。さみしい気分。

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それとは別に中は明るくて、いつものめぐみさんの色。懐かしさに包まれる。
個展のときにはいつも戸口のちかくに貼ってある、彼女のプロフィールと小さなモノクロの写真を毎回じっと見てしまう。
写真の中のめぐみさんは、茶目っ気と気難しさとアンニュイな雰囲気を纏った大人っぽいひとで、それはわたしが会っためぐみさんとも感じが違う。できれば元気なころのめぐみさんに会ってみたかったと思う。

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もう何度も書いているかもしれないけれど、めぐみさんの絵のよさはその色彩感覚の素晴らしさ。大胆な構図と、バランスのよさ。シンプルなモチーフに深みを与える、背景の複雑な塗り重ねのうまさ。そこから詩が生まれ、歌が生まれ、物語がはじまるような・・・・・・
繊細なようであってすごく感覚的にラフに描いたような、あまり描きこみすぎないよさ。見たことのない風景が醸しだすノスタルジー。絵の前に立つ人をぼんやりさせてしまう絵。

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何もしてないのに背骨が折れてしまうというような過酷な病状にあって、よくこれだけの、現実からかけ離れたファンタジーを自分の中に持ちつづけ、表現しつづけてこられたと思う。それはほんとうにすごいことだ。それで思いだすのはいつか(まだTVがあったころ)、チャンネルを変えてるときに耳に入ってきた、『アボリジニの絵が人に訴えかける強さを持っているのは、それだけ絵というものが彼らにとって切実だったからです。』というような言葉。めぐみさんにとっても絵を描くということは、日々の(表現という以上に)切実な糧だったのだと思う。

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絵は2年前の作品展のときよりずっと少なかった。
あのときほとんど売れてしまったから。
それでもこうやって有志たちが苦労して作品展をひらいてくれる。
誰かに遺言を遺したわけでも、後のことを託したというわけでもないのにこうやって友人たちが作品展をひらき、めぐみさんを偲ぶ場をつくってくれる。
それって、ほんとうにすごいことです。
ほんとうの意味で、愛ある個展。
そんな作品展は、絵の点数こそ少なかったけれど、懐かしい彼女の世界に浸るには十分だった。
そして2年経って絵の見え方も変わった。
これまではどの絵を見ても彼女のさみしさみたいなものを感じて心に澱が残るようだったのが、いまはどの絵からもしあわせな、あたたかい光を感じる。
それはこの2年の間にすべてが許し、許されたからだと思う。
やっと自由になっためぐみさん。

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めぐみさんは家族の縁は薄かったように思うけれど、友人にはとても恵まれた。
そして、その絵はたくさんの人たちに愛されている。
やっぱり一度の人生で全てを得ることはできないのかな?
それで何度でも生まれてくる。
昔にくらべて人の生まれ変わりのスピードはものすごく速くなっているというのを聞いたのは、もう20年も前のことだから、いまはもっと早くなっているだろう。もしかしたら、生きている間にまためぐみさんに会えるかもしれない。
こんど生まれ変わったら、めぐみさんは何になるだろう。
こんどは最初から絵描きになることを選ぶかな。
何を選んでも、こんどは健康な身体とこころを持って生まれてこれますように。
わたしは・・・・・・
ここまでの人生でひとりで子供を育てる苦悩もかなしみもやりきれなさも、もちろん喜びも、十分に味わったし、まだまだ先は長いから、この次は子供のいない、結婚もしない、自由な身を生きるのもいいかもしれないな。
そんなことを帰りの電車の中で思った。

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春に生まれて晩夏に亡くなっためぐみさん。
そのめぐみさんの待望の作品集が、来年の春ついに出版されるそうです。
タンバリンギャラリーでも予約することはできたけど、わたしはいくつか用があって高円寺のアムレテロンさんで予約することにしました。
めぐみさんの絵はとっても魚座的な世界で、めぐみさんに春は似合うと思う。
来年の春、作品集を手にする日がたのしみです。

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