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2017年7月28日 (金)

高瀬きぼりお絵画展@桃居

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夕方家を出て、きぼりおさんの個展を観に行く。
今日は朝から一日曇り空で湿度が高くて、雨が降りそうな気配を感じつつ傘は持たずに出た。わたしは傘を持つのが嫌いです。
このあいだの記事に根津美術館から桃居に行くのはどうやって行けばいいんだろ、っていうようなことを書いたけど、ちゃんと桃居さんのホームページに地図と道順が載ってましたね。根津美術館に行くのとおなじ、表参道のA5番出口を出たら美術館方向にまっすぐ歩いて横断歩道を渡り、美術館の脇の坂道を下ってそのまま歩くこと徒歩十数分。途中、道が二股に分かれるところがあるけど、それも地図通り手前の道をまっすぐ行くと右手に折れる道が現れて、そこを曲がったらすぐです。はじめてのわたしでも迷わず行けた。
桃居はその佇まいからして、いかにも陶芸の個展をやるのにふさわしい、老舗の風格のある渋いギャラリーでした。

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( 絵画 『みずいろの筆跡』 )

通りに面したウィンドーに額装された絵が何点か、店に入ってすぐの左の壁に大きな絵が数点、棚には小さいのから中くらいの絵が飾られ、奥の部屋の壁にも数点。テーブルの上には無数のドローイング帳が置かれて。
店の奥からは男性の低い話し声が聞えてくる。
深くてよく響く素晴らしい声。これはきぼりおさんの声じゃないなと思ったら、ギャラリーのオーナーの声でした。まるで声優みたいな声。
手前の部屋から順番に絵を見ていって、奥のテーブルの上でドローイング帳を繰っていたら、きぼりおさんから「こんにちは」と話しかけられた。きぼりおさんはいつも自分から来場者に声をかける人みたいです。そういうのってえらいと思う。わたしは帽子をかぶってうつむいていたのだけれど、顔をあげたら憶えててくださったみたいで、「あ、このあいだはどうも」といわれた。ギャラリーみずのそらで初めて会ったときよりあらたまった雰囲気。それは桃居という場所の力らしくて、てっきりわたしは昨日からはじまった展示かと勘違いしていたのだけれど、今日が初日だったらしい。そりゃ緊張もするだろうな。そして、みずのそらのときは端正なギタリストのお友達が来ていたけれど、今日はピアニストで作曲家のお友達が来ていて、きぼりおさんのご友人はどうも端正な方が多いみたい。きっと絵とおなじくらい、音楽が好きな人なんだろうな、と思った。
しばらく絵を見ていたらオーナーがお茶をいれてくださって、お茶の器も品よく金継ぎされた滋味あふれるもので、奥の応接間みたいなコーナーで3人でおしゃべりしたのも楽しかった。きぼりおさんが、自分の絵を買ってくれた友達が、家に絵を持って帰って奥さんにぼろくそに言われた、という話をしてて、でもそういうの聞いてもぼくはなんとも思わない。だって自分だって人の絵の個展に行って、いいと思う絵なんか滅多にないから、というのを聞いて、ふ~ん、なるほどー、と思った。

いつも書いてるかもしれないけれど、絵を買うのは簡単じゃないです。
まず単純に言って、理由はわからなくても言葉で説明できなくても、「これは!!!」という直感がないとだめだし、いくら気に入ったからって大きな絵ともなると値段はもちろん、その絵を飾るにふさわしい空間が必要になる。
十分にお金があって、絵を飾って鑑賞するにふさわしい部屋と、飾っていないときに絵をしまっておける収納場所のある素敵な家を持っている人なら何も問題ないでしょうけれど、そのどれひとつ持っていないわたしにはとても難しい。
かといって、矛盾するようだけれど何も買わずにギャラリーを出てくるのもなかなか難しいです。
たとえばドローイング。
小さな紙に描かれたドローイングは、たとえばTシャツを買うより安くて、思わず買ってしまいそうになる。でも、これはあくまでわたしの考えだけど、額装された絵は完成された(あるいは完結した)世界観を持った一編の詩のようなものに見えるのだけど、小さな紙ぴれに描かれたラフなドローイングは、まるで詩のフレーズみたいに見える。だから1枚じゃなくて何枚かで組で飾りたくなるのだけれど、でもその1枚1枚はなんの脈絡もなくたくさんの絵の中にあって、そこから3枚なり4枚を本気でチョイスしようと思ったらけっこう時間のかかることだと思のです。きぼりおさんが描くのはほとんど抽象で、わたしが最近、好んでみるのも抽象で、具象画だとまた話は少しちがってくるんだと思うのだけれど。

そんな思考がめぐるなか、ある1冊のドローイング帳のなかに1枚のカラーの、それはそれで完結された(この言葉もあまり正確じゃないけど)絵をみつけてとても気になったのだけれど、こんどはその絵をどう額装するかで頭がめぐって、(今日は行ったのが遅かったから)そのときもう閉店間近だったし、お腹もすいてきてタイムアップでけっきょく何も買わずに出てきてしまった。
で、何も買わずに出てくるといつもなんとなく作家さんに申し訳ないような気持ちになるのはきわめて日本人的、かな。

きぼりおさんの絵を見るためだけに表参道に行って、絵を見てお茶もしないで帰って来た。駅からギャラリーまでの道はとても素敵で、退屈じゃなく、青い夜空にぼんやり滲んだ三日月がきれいで、根津美術館の入り口の笹竹が街灯のあかりの下で涼しげに揺れるのを眺めながら、いったいわたしはどんな絵が好きなんだろうな、どんな絵に心揺さぶられるんだろう、自分に絵が描けるとしたらいったいどんな絵を描きたいだろう、なんてことを考えながら帰った。答えはそのときどきによって変わってゆくだろうけど、わたしは1枚の絵の中に意識の流れ、というか、エネルギーの流れみたいなものが感じられる絵が好きなんだと思います。それから1枚の絵に投じられたエネルギーの高さ。そして自分が描くとしたら絵の中のどこか一点にでもひかりの所在が感じられる絵。例えばそれはアストル・ピアソラの音楽を聴いていて、真夜中の漆黒の、地を這うような重たい、鋭いリズムを刻む人間の上に天上から一条の光が射してきて、一気に至福感に満たされるようなあの感じ?
そんなのが描けたら最高だろうな、と思う。

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( 絵画 『波、色面と筆跡』 )

個展って、はじまったらあっという間です。
きぼりおさんの絵画展は今日から5日間、8月1日火曜日まで。
桃居さんは入るとき一瞬、緊張するけど、とても落ち着く素敵なギャラリーです。
オーナーは穏やかな人柄の方だし、きぼりおさんはオープンで話しやすい。
絵の好きな方はぜひお出かけください。

高瀬きぼりお 絵画展

2017年7月28日(金)~8月1日(火)
11:00 ~ 19:00 (最終日は17:00まで)
桃居:東京都港区西麻布2-25-13

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