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2017年7月 5日 (水)

ふるい友達と ・・・

17grronimo

年々気候がおかしくなって、年々夏を越すのが大変になっているけど、夏のいいところは仕事を終えて家を出ても、まだ明るいうちに着けることだと思う。5時なんてまだ昼間、6時だってまだまだこれからだ、7時になってさえうっすら明るい。
冬になるとそんなことを思いだして懐かしく、さみしい気持ちになるんだ。
そういういわたしは夏好き。

今日も湿度が高くて暑かったけど、30年来の年上の友達ふたりと落ちあってジェロニモ。
ふだんはステーキなんて食べないわたしも、ここでばかりは食べる。
ここには男ふたりの若い頃の思い出がたくさん詰まっているらしい。
今日も食べてる途中でTちゃんが、「あのときオレの言葉をJがただの社交辞令と思って広島に来なければ、この関係もなかったわけで、人間の縁ってほんとに不思議だね」といった。
そもそも事のはじまりは、家の近所にカメラ屋さんがあって、年じゅうフィルムの現像に出しに行くもんだからそのうち店主のIさんとよく話すようになって、隣りの喫茶店から珈琲をデリバリーしてごちそうしてもらうような関係になって、いっぽう東京で浪人生活をしていたTちゃんは大学受験に失敗してついに広島に帰ることになって、明日広島に帰るという日に珈琲を飲みに入った喫茶店でJちゃんに会った。そこで話をするうちにJちゃんが広島カープファンだということで意気投合して盛り上がり、思わずTちゃんは「そんなにカープが好きなんだったら広島に遊びにおいでよ」といった。そのときはTちゃんも、まさかJちゃんがほんとに広島に来るなんては思ってなかったのだそうだ。でもJちゃんはほんとに広島に行った。そして、ふたりは親友になった。

その数年後のある日、喫茶店のカウンターで珈琲をのんでたわたしが帰ろうとすると、厨房からJちゃんが「そうきち、もう帰るの? もう少しでオレのクォーターの弟が来るから、よかったら紹介したいんだけどな」といった。「クォーターの弟?! ってことはJちゃんもクォーターなの?」と、わたしが驚いて訊くと、「そうだよ。あれ、まだ言ってなかったっけ?」とJちゃんはしゃらっと言った。
なんたってその頃のJちゃんときたらカーリーヘアでアフロみたいにでっかい頭をしてたもんだから、てっきりわたしは騙されてしまった。そして、やってきたのがTちゃんというわけだ。Tちゃんは当時クロード・チアリに似ていて、髪がくせっ毛のくりくり長髪で丸眼鏡をかけてて、クォーターといわれたら実際そう見えないこともなかった。もう帰るつもりだったわたしはそこで初めて会った、自称シャイで人見知りでふだんは無口だというTちゃんが喋りまくるのにつきあって、最後は「おまえ、気に入った! 珈琲代払ったる!」というTちゃんに2杯分の珈琲代をゴチしてもらって帰った。夕飯をとっくに過ぎた家に帰るなり鬼のようにこわい母に「アンタは家出たらほんとに鉄砲玉ね!」と怒られたのはいうまでもない。
それ以来のつきあいなのだから、ほんとに人の縁ってわからない。
母が生きてたらきっと「まだつきあってるの?!」と驚くことだろう。

でも、もうじき40年にもなろうというのに、みんな昔とたいして変わってないような気がするな、と I さんがいう。うん、ほんとだね。まだあの喫茶店にみんなして行ってる気がするよ、とわたしがいう。
・・・・・・
でもほんとにそうだろうか?
彼らにいちばん最初に会ったときまだふわふわしたティーンエイジャーだったわたしはいまや結婚して離婚して、自立してない子供をふたり抱えてこの歳になってもまだ毎日あくせくしてる。これまでは苦労がルックスに出ないタイプだと散々いわれてきたけど最近じゃ寄る年波でそうともいえない。わたしより遅く結婚した彼らはやっと子供が学生じゃなくなって、ひとりは銀婚式をとうに過ぎ、もうひとりは今年、銀婚式だって。銀婚式にはともに奥さんにエルメスの腕時計を贈る(贈った)んだそうだ。つまり、もう彼らはお金も経験もなくて頼りなかった若者じゃないし、酸いも甘いも経験してきた大人、押しも押されもせぬ熟年世代ってことだ。それに何よりわたしたちをくっつけたJちゃんの顔を見なくなってどれくらい?
わたしたち、もうずいぶん遠いところまできちゃったみたいだよ・・・・・・。

我々の関係がこんなに長くつづいたのは縁もあるだろうけど、それ以上に若いときに出会ったのがよかったんだろうな。
なんの利害関係もない、無邪気で無防備な若いときに。
それに時代性もある。
昔はインターネットはおろか携帯もなかったから、誰かとコンタクトするには直接会うか電話するしかなかった。声っていうのは人が思う以上にほんとのことが出ちゃうからウソがつけないし、おかげでずっと正直な関係をやってこられた。
何より全てがいまよりずっとシンプルだった時代。
SNS時代のいまは人の本心がますます見えなくなった時代だと思う。
直接本人にいえばいいようなことをいわずに、かわりにどうでもいいよな心情吐露や毒を吐いてる。人は蜘蛛の巣みたいな網目上にきっちり繋がっているようでいて、実はタンポポの綿毛みたいにバラバラに飛んでるんだ。そんな気がする。
我々の関係を世間的にいうなら『ただの友達』だ。
男女関係でよくいうところの、ただの友達。
でも、これがいいんだと思う。
誰とでもやれるとは限らない。
誰にでもできるとは思わない。
ただの友達、されど特別な友達。
一過性の男女関係なんかよりずっとありがたい関係。

でも、ジェロニモもオーナーが変わってずいぶん様変わりした。
我々は長いこと、ステーキをオーダーすると最後に出てくるキャンプで飲むようなシャビィなアルミのマグカップに入った薄い珈琲に、お砂糖を入れて飲むのが好きだったのだけれど、それがいつの間にかきれいな陶器のカップ&ソーサーに入った比較的まともな珈琲に変わり、そしていまや珈琲はメニューからなくなっちゃったんだって。残念!

「さて、そうきち。これからどうしようか」
と I さんが落ち着いた声で言う。
暑いし、ちょっと疲れてるからわたしは今日はごはんを食べたらお茶でもして帰ろうと思ってたのだけれど、そう言われていきおいTちゃんと近所のライブハウスやJAZZバーを探した。でもあいにく近所にはなくて、けっきょく前に行ったことのある大久保のBoozy Muse に行くことになったのだけれど、思いがけなくこれがとてもよかった!!!

ピアノのNori Ochiaiさんが率いるRhythm Challenge というトリオ。
その名の通り、ひとつの曲を何分割化して次々と違う変則リズムで演奏してゆく、という、まるでエッシャーのだまし絵みたいな音楽。

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もともとはドラムの安井鉄太郎さんがやっていたことをピアノのオチアイさんが気に入ってやりはじめ、今日の曲のセレクトもアレンジもほぼみんな安井さんによるものだという。
「こういう変わったことをやっている人はJAZZの世界でもほとんどいない、だから今日みたいな演奏も滅多に聴けない演奏だと思います。安井さんはワン・アンド・オンリーのドラムニスト。で、この安井さんのアレンジがまためちゃめちゃ難しいんです」といいながら、一見やすやすと弾いてるみたいに見えるオチアイさん。一貫して姿勢を崩すことなく、頭をリズミカルに振りながら飄々と複雑なリズムを弾きつづける。

そしてトリオの中ではいちばん年上で落ち着いてて静かに見える安井鉄太郎さんなんだけど、そのプレイは熱くて激しい。複雑難解な変則リズムを正確にピンポイントのカタイ音で鋭く刻んでゆく。こういうひとの頭の中っていったいどうなってるのか、もしかするとすっごく数学的なのかもしれない。
安井鉄太郎さん。素晴らしかったです。

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そしてこの中ではいちばん若いベーシストの寺尾陽介さん。
実はわたしがJAZZのライブに行くようになって最初いちばん聴き分け難かったのがウッドベースなんだよね。それは若い頃からさんざん聴いてる、たとえばポール・マッカートニーの『Don't let me down』なんかで聴けるムーヴィングな音ともちがうじゃない。なんていうか、変な言い方だけど、もっと弦楽器。もっと無骨で不器用な弦楽器。ソロはともかくバッキングとなるとほかの楽器の強い音に紛れてしまいやすいし、ほかの楽器とくらべると地味な感じ。でもなくてはならない。リズムとテンポとピッチが正確ならそれでいいのかといったら、それだけではないでしょ。
うちの息子はJAZZギターにおいて自分固有の(オリジナルの)音色をつくるのはとても難しい、というんだけど、わたしはそれをウッドベースにもっと感じる。
でも今日も耳を凝らして音を追って聴いていたら、だんだん寺尾さんの音、歌が聴こえてきました。

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でもって、そうやってある意味辛抱強く音を追える耳がないと、こういうJAZZは聴けないんじゃないかと思う。そういうのを楽しめる人じゃないと。
ひたすら変幻してゆく変則リズムが延々つづいて、ピアニストの右手から美メロが流麗に弾き出されることもない。一見地味ともいえる演奏なんだけど、わたしはそれが面白かった。
で、そこにいた人みんな面白かったみたいです。
今夜もすごく盛り上がった。
拍手喝采、アンコール!

そんな今夜はファーストのラストから聴いたから、セカンドのセットリスト。
ちゃんと思いだせるかな?

17yasui_tetsutaro

2nd. 

1.Blues For Alice(チャーリー・パーカー) 

2.Hey, It's Me You're Talking To (ビクター・ルイス) 

3.Footprints(ウエイン・ショーター) 

4.All the Things You Are(ジェローム・カーン) 

5.Yes or No(ウエイン・ショーター) 

アンコール:Isotope(ジョー・ヘンダーソン)

17nori_ochiai_trio_rhythm_challenge

選曲もとてもよかった!
欲をいえば途中でかっちょいいメロの爆発があってもよかったかな、と。
それで、いやあ~、思いがけなくめちゃめちゃいいもの聴いたねえー!と気分よく帰って来たのだけれど、あの変則リズムの感じは直さんとやってもいいんじゃないかなと思って帰宅してちょっと調べたら、もうすでにやってました。安井鉄太郎さんのカルテットで、去年。
さすが。
そんなわけで、またひとつ聴いてみたいブッキングが見つかりました。

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