« しろばらしろばら * | トップページ | ライラックローズ** »

2017年5月18日 (木)

生きて愛するために

Tauji_kunio

昨夜は2ヶ月ぶりの上町63、清水翠×馬場孝喜。
相変わらず渋谷はうんざりするほどの人混みだった。
ただでさえ混みあってて導線が悪くて前に進まないのに、電車を降りるときや階段を上り下りするときくらいスマートフォン見るのをやめなさい、と思うけれど、みんな片時も目を離すことができないらしい。きっとがん箱まで持ってく気なのね。人の間を縫うように早足ですり抜け、ちょうど来ていた快速・横浜・中華街行きに乗りこむ。ここも殺人ラッシュ。渋谷から菊名までぎゅうぎゅう詰めの電車に揺られ、誰かに強く押されるたびに手に持ったケーキがつぶれるんじゃないかとはらはらした。いつも着くまでに疲れてしまう。帰りの東横線は始発に近いから乗ったときはガラガラだけど横浜で一気にたくさん乗ってきて、帰りは帰りでせっかくいい音楽を聴いていい気分になってても、終電間近の酔客の声の大きさとマナーの無さに辟易として疲れ果ててしまう。
そんなわけで無理じゃない限り、行きも帰りもたいてい本を読んでいる。
さいわい、この歳になっても深夜の電車の中で眼鏡なしで文庫本が読めるありがたさ。本さえ開いていればその世界に埋没していられるし、目の前の醜態に気をとられないですむ。今日は辻邦生の『生きて愛するために』を読んでいて、この本とてもいい本だから、上町に着いたら読み終わってなくても翠ちゃんにあげようと思っていたのだけれど、けっきょく渡せなかった。昨日はなんだか大賑わいで、せっかく行ったのになんにも話せなかったから。
でもいいや。人生はつづく。
いつも上町に行って帰ってくると駅に着くのは夜中の1時近くなのに、昨日はとっとと帰って来たおかげでいつもより早く帰り着き、酷いものにも遭遇しなくてすんだ。よかった。これからはずっとこれでいくかな。
昨日もライブではファースト、セカンド各10曲づつの全20曲。
心に残ったものはいくつもあるけど、『Your Song』を聴くといつも広島にいる、エルトン・ジョンが好きな親友のことを思いだしてしまう。彼がいまここにいて、この時間を一緒に共有できたらいいのになって思う。友達にぴったりな曲。
いつ聴いてもいいのは『エウ・ヴィンダ・バイーア』や『コラソン・バガボンド』や『Kiss of Life』だけど、いまいちばんキマってるのは個人的には『Mercy Street』だと思う。しっとり聴かせるスローバラードもいいけどそんなのばかりじゃ飽きるし、翠ちゃんはこういうスパイスの効いた鋭さのある曲を歌うとキレがあってかっこいい。馬場さんの巧みなプレイも1本のギターからとは思えない重層的なサウンドを作りだして、つづれ織りのような人間の感情の機微の深さに誘ってくれる。
そして、これ以降、しばし翠ちゃんはオーバーホールに入る。
本人に怒られること覚悟でうんとライトに明るく言うと、パーツの交換。
昔、アンティークカメラショップでアルバイトしてたころ、毎日のようにカメラを修理に出しに行っていて、ニコンサロンなんかでときどきオーバーホールから上がってきたカメラを目の前でテストするのを見たりしていたけど、最近は人間の病院もオーバーホールというのにふさわしいくらい無機質な感じになってきた気がする。筋骨系はとくに。
でもオーバーホールされた後の翠ちゃんはきっと身体のキレも声のキレも歌のキレも一段とよくなって、ますますいい歌が歌えるに違いない。なんたって、もともとアスリートみたいな人なのに、自由に身体を動かせないのはどれだけ辛かったことだろう。それが解消されるのは、筋骨系のみならず視界からも心からも重たい霧が晴れるようなことだろうと思うのです。
本のことに話を戻すと、わたしが昨日この本を渡したかったのは、まさしくいまこの五月の新緑のなかに生きていて、心を捉える一文があったからだ。辻邦生が若いころ病を得て発見した、生きる歓び。逆に言えば病を得なかったら到達できなかったであろう、人生の真理。
昔よく翠ちゃんに「そうちゃんは健康健康って、健康なのが好きなんだね」と嫌味っぽく言われたものだ。彼女がいわんとすることもよくわかる。でも、わたしの言ってることの本質が全然わかってないんだなあ、と思った。だいいち若いころ太宰にハマってたわたしが健康健康なわけないじゃん。でも現実に何をするにも身体が資本なのは誰でも一緒のことで、実際に病んだりしたら何もできない。だいいち女は美しくなくなる。デカダンで、心身病んでなおかつ美しい、なんて、生まれながらの人間離れした美貌の持ち主でもない限り、とうてい無理と思う。少なくともわたしは心身病んで若さも美しさも失った女の吐きだす病んだ音なんて聴きたくないね、と思った。そんなの気が滅入るだけだもの。
でも、いつのころからか水泳をはじめた彼女はとても健康的になった。何にでも熱中するタイプで、はじめたばかりのころは1日8時間もプールで泳いで肺炎になったりもしていたけれど、もともとわたしなんかよりずっと運動神経がいいうえに持ち前の集中力と身体に刻まれたリズム感でもって、わたしより後からはじめたのに、あっという間にうまくなった。そして精神的にもブレなくなって、いつでもニコニコしていられるようになった。そんないまだからこそこの本を渡してもわかってもらえると思ったのだけれど・・・・・・
でもいい。これから先も人生はつづく。生きて音楽を愛するために、詩とアートを愛するために、猫を愛するために、花を愛するために、いまここに生きるすべてを愛し、味わい尽くすために。人生はつづく。

昨日の上町。
大人の隠れ家みたいなJAZZバーで子供みたいに遊ぶイカリンさん。
うしろにいるのはセカンドの曲を選んでる翠&馬場さん。

17kanmachi63_01s_2

過ぎ去る時間のなかでこんなのもすべて Your Song の歌詞のよう。
How wonderful life is while you're in the world.

|

« しろばらしろばら * | トップページ | ライラックローズ** »

本の話」カテゴリの記事

コメント

こんにちは、いまはバラの季節。
待ちに待っていた季節がやってきました。
田舎の剪定したバラを見に行くと一輪だけ咲いていました。
剪定前に比べて葉もいきいきしていて嬉しかったです
白バラ素敵ですねo(^-^)o
田舎はアイリスと芍薬がたくさんさいていました。
今の時間を大切に暮らしていきたいです。

投稿: ひろ | 2017年5月20日 (土) 07:57

ひろさん、こんにちは!
連休に帰省されたんですか?
剪定、うまくいってよかったです。
アイリスと芍薬は五月の日本の風景ですね。

ひろさんに送るもの、もうとっくに買ってあるんだけど手紙書く暇がなく、いまに至ってます。
週明けにでも送りますね♪

投稿: soukichi | 2017年5月21日 (日) 15:51

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« しろばらしろばら * | トップページ | ライラックローズ** »