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2016年12月 1日 (木)

シュトレンの季節

16stollen

このあいだ、クリスマスを待ち遠しく思う気持ちはそんなにない、と書いたばかりだけど、そんなわたしにもアドベントシーズンがやってきた。
神戸在住、わたしの唯一の同僚が送ってくれた、フロインドリーブのシュトレン。
わたしはあんまりお菓子のことには詳しくないけど、『シュトレンといったらフロインドリーブ』というくらい神戸では有名な老舗の洋菓子屋さんなのだそうです。
実はこれ、先に食べた彼女が「まだちょっと早いから、もうちょっと寝かせて熟成させたほうがいい」というので、包みもとかずに置いておいたのです。
それで今朝、彼女から「今日から12月だからシュトレン、スタートですよ!」といわれたので、さっそく封を切ることにしました。

16stollen_01

シュトレンといったら、その形状が連想させるのはおくるみにくるまった赤子のキリスト。雪の積もった薪。まっしろな雪のような粉砂糖がまぶされた、その独特の姿。
フロインドリーブのシュトレンは、スパイスが効いたヨーロッパのクリスマスの匂いがぷんぷんするような癖のある味じゃなくて、濃厚なバターの風味と洋酒やナッツやドライフルーツの味が調和した、しっとりしたケーキのような味。爽やかなオレンジピールの味がアクセントになっていて、たぶん誰にでも食べやすいシュトレンです。
今年もとってもおいしかった。(娘なんか3ピースも食べた!)

シュトレンというと、むかし母がホテルオークラで働いていたときによく話していた、ドライフルーツにナポレオンを一瓶あけて作った、1日に何本も作れないというフルーツケーキのことを思いだします。わたしはあれが苦手だった。ドイツで暮らしたこともあるという、ドイツ語の先生にはすごく喜ばれたけど・・・・・・
それから店に飾った大きなクリスマスツリーに、ドライフラワーとスパイスが詰まったサシェをリボンで結びながら「ああ、いい匂い・・・。クリスマスの匂い」といった女社長のことなんかを。(わたしには匂いがキツすぎてそれは臭いだけだったのだけど。)
そしてさらに思いだすのは今年読んだカポーティーの短編集『誕生日の子どもたち』の中にあった『クリスマスの思い出』という小説のこと。
アメリカの田舎町に暮らす六十を越したおばあちゃん(なんたって1950年代のことだから)と七歳の少年が苦労して貯めたなけなしのお金ぜんぶ遣って、これまた苦労して手に入れた材料でたくさんのフルーツケーキを焼いてみんなに贈るまでと、その後のいろいろなことを書いたお話なんだけど、書きだしはこんなふうだ。
ちょっと長いけど書きだしてみる。

 十一月も末に近い朝を想像してほしい。今から二十年以上も昔、冬の到来を告げる朝だ。田舎町にある広と々した古い家の台所を思い浮かべてもらいたい。黒々とした大きな料理用ストーブがその中央に鎮座している。大きな丸テーブルがあり、暖炉の前には、揺り椅子がふたつ並んでいる。暖炉はまさに今日から、この季節お馴染みの轟音を轟かせ始めた。
 白い髪を短く刈り込んだ女が、台所の窓の前に立っている。テニス・シューズを履き、夏物のキャラコの服の上に、不格好なグレイのセーターを着ている。小柄で元気いっぱいで、まるで雌のチャボみたいだ。でも気の毒に、若い頃に長患いをしたせいで、背中がこぶのように曲がってしまっている。顔立ちは人目を引く。リンカーンに似ていると言えなくもない。ああいう具合にきゅっと頬がそげているのだ。その肌は太陽と風に焼かれて染まっている。でもそこには繊細さがうかがえる。骨の張り方にも無骨なところはない。瞳はシェリー酒色で、いかにも内気そう。
「ほら!」と彼女は叫ぶ。その息は窓を曇らせる。「フルーツケーキの季節が来たよ!」

それで年は六十を越しているけど子供みたいな女と、彼女とはおばあちゃんと孫みたいに歳は離れてるけど唯一無二の親友でもある七歳の少年バディーにとって、文字通り胸躍るクリスマス・タイムがはじまるわけだけど、とっても素敵な書きだし。訳は村上春樹。
こんな幼少期をすごせば誰だってクリスマス・タイムは格別に待ち遠しいものとなるだろうなって思う。
ああ、そんな意味で、この時期にトルーマン・カポーティーの『誕生日の子どもたち』を読むのはおすすめですね。
カポーティーの書くものはまさしく蜜と毒だからハマる人はしばらく頭を占領されるかもしれないけれど(そして全部読んだら落ちる部分もあるかもしれないけれど)、クリスマス・タイムに食べるフルーツケーキの味がいつも以上に深くなることは間違いなし!

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