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2016年10月16日 (日)

母の十七回忌

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わたしは母のお下がりの肩パッドがばしっと入った昔風のちょっと大きめの喪服、娘はわたしが失業してたときにリクルート用に買って、なんだか自分にはちょっと違うと思って譲ったポール・スミスのスカート・スーツ、息子は成人式のときに買ってあげたスーツにロンドンブーツという、家族全員慣れない猫スーツ(猫かぶる、または借りてきた猫、の意から)姿で母の十七回忌の法要に行く。
直前まで息子が履く靴がないからいつも履いてる花柄のコンバースで行くとかいって、まいる。結婚式ならまだしも、法要でそれはやめてといったけど、ほんとにどこまでがギャグでどこまでが本気なんだか。ほんと困ったもんです、うちって。

十七回忌の法要といっても、家族5人だけのごくごく簡素な式。
地方の大きな家や、由緒正しき家柄の方々はいまでも古式ゆかしく盛大にされるのでしょうけど、こういうことも一昔前とはぜんぜん趣きが変わってきました。
昔はけっこうコンサバティブな家系かと思っていたのに、いまや葬式はするな誰にも知らせるな坊さんはいらないと言い遺す身内さえいて、一族郎党が一堂に会する機会もほとんどなくなった。

今日のびっくりは、真言宗のお経をあげてくださったお坊さんが持ってらした小さな経典が、なんと横書きで書いてあったこと。
いちばん前にいた妹には見えてしまったんですって。
もっともこのあいだの叔父の一周忌のときなんか、はじまる直前にバイクでお坊さんがブーンとやってきて、終わったらまたすぐにブーンと帰ってしまったものな。

どこかプラスティックな法要を終えた後、それで今度はいつなのと妹に聞くと、わからないからいま事務所に行くついでに聞いてくる、と。帰ってきた妹いわく、昔はみんな三十三回忌までやったものだけど、いまは十七回で終わりにされる方が多いそうです、って。だからうちもこれで終わりでいいみたい、という。ふーん、そうなんだ、といいつつ、もうこういうことをすることもないんだ、という、どこか解放されたような気分と、ほんとにもうこれで終わりでいいの? という気分で、ちょっと複雑。
帰りはいまの父の足でも歩いて行けるところ、という理由で選んだお寿司屋で、みんなで遅い昼食をとった。
法要が終わった直後はポツポツきかけていたのに、食事が終わって外に出るときれいな青空で、ともあれ今日は雨が降らずにお天気がもってくれてよかった。
そして家に帰りつく前に見た、今日のうつくしい夕空。
何かがひとつ完了したせいか、それとも久しぶりに慣れない猫スーツで一日すごしたせいなのか、とくに何をしたというわけでもないのになんだか妙に疲れた。

自分がごくごく幼かったころ、父方の(もう誰かも憶えていないけれど)葬式が相次いで、葬式だ納骨だ法要だというと、いつもなぜかたいていひどい雨の降る、暗くて寒くて陰気な日で、そんな日に墓石の前の石をずらして骨壺を納めるところなんかを間近で見ちゃったりしたものだから、それ以来わたしは大の墓嫌いになって、子どものころから死んでも絶対わたしは墓だけには入りたくないと思っている。
同様に、わたしは自分の子どもが小さいときから、おかあさんが死んでも絶対に菊だけはやめてね、といってあるけど、自分の母の通夜から葬式のときにはその思いをさらに強くした。真冬の部屋の祭壇に大量に飾られたの菊の匂いは、わたしにとってはまさしく死臭そのものだった。いま思えばそれは菊の香りそのものというより、腐りやすい菊の茎が腐らないように水に入れられた防腐剤の匂いだったとも思うのだけれど・・・・・・

いつだったか、絵描きの山下美千代さんの描く水彩の似顔絵がとても素敵で、あんな似顔絵だったら自分も描いてもらいたいと娘にいったら、「それを遺影にすれば?」とアッケラカンといわれてガーン!と思ったことがあるけど、これからはそういうのもありかもな、と思う。
そのときに、おかあさんもあの叔父じゃないけど葬式はいりません、といったら、娘は仏壇もつくらないと思います、といって、だってうち仏教じゃないしね、というから、まぁ、そうだね、といって笑った。たしかにそうだ。

今日、夕食後のくつろいだ時間に娘が、うちはおかあさんが死んだらどうしたらいいの、と素朴な疑問を投げてきたから自分も、どうしたらいいんだろうね、といって、まずは教会に電話したらいいんじゃないの、どうしたらいいか、そのあたりのことは今度てるちゃんに会ったらちゃんと聞いておくよ、といった。
こういうことを書くと変な家だと思う人もいるだろうけど、ふだんからこういう話がふつうにできて、生きてるうちに子どもに何がしかのサジェスチョンを与えておけるのはいいことなんじゃないかと個人的には思う。

人はいつか必ず死ぬし、時は瞬く間に過ぎ去るから。
わたしもいささか遅ればせながら、自分が死んだら最低限のことがチャラになるくらいの保険にでも入っておくか、とか、考えるこのごろ。

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