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2016年7月19日 (火)

セプチマの魔法

16septima

昔、東京からちょっと離れた砂川七番というところにギャラリー『セプチマ』はありました。
お伽噺に出てくるかわいい家みたいなそのギャラリーは、たいした宣伝もせず、知る人ぞ知る場所であったにもかかわらず、東京やその近郊に住む人はもちろん、遠く離れた地方に住む人も、それどころか海外からわざわざ訪れる人もいたくらいだったそうです。
そこでは老若男女が自由に集い、音楽を奏でたり、一緒に歌ったり、おいしいものを供したり供されたり、アートを愛でたり映画を見たり、ときには昼寝をしたりして、まるでそこに集まる人たちにとってそれは本物のHOMEみたいな場所でした。
たくさんの友達や仲間や恋や物語が生まれる場だったのだそうです。
セプチマに足繁く通い、セプチマをこよなく愛した人たちはこんなふうにいいました。
「まるであそこは楽園みたいな場所だった」と。

・・・・・・ と、そんなお伽噺になってしまう前に、いちど行ってみようと思ったのです。
今月で営業を終了してしまうという、セプチマに。
いままで名前こそ知れど縁のなかったそこは意外にもわたしの住むところの近くにあって、行こうと思えば仕事が終わった夕方からでも出かけられる位置にあったのでした。最寄りの駅からみっつ、モノレールに乗り換えてもひとつめ、駅にしてたった4つ先だったとは驚きでした。

はじめて行くところは、いつもちょっとドキドキわくわくします。
ちょうど今日のセプチマは、『ちょっとポッタリーズ』 喜多村朋太器展というのをやっているところでした。
砂川七番の駅から歩いて数分、ふつうの民家の中に突然ぽつんと現れたかわいらしい建物は、やっぱりなんだかお伽噺の小さなおうちのようで、わたしには映画のセットのようにも見えました。
そしてドアを開けてまたびっくり。
もっと賑やかにたくさん人がいるかと思ったら、陶芸家の喜多村さんらしいご夫婦と、男の人が1人いただけだったからです。中はがらんとして、文字通り箱のよう。
いつのまにか勝手に、ここはいつでも人で賑わってるようなイメージがあったものだから、思わず「もっと混んでるかと思ったら誰もいなくてびっくりしました」といったら、奥さんに「もっと混んでたほうがよかったですか?」とにこにこしながら聞かれたのだけれど、混んでるほうがよかった、というより、自分以外ほとんどお客さんがいない、ということのインパクトだと思う。

喜多さんの器はシンプルで朴訥としてあたたかく、日常遣いに使い勝手がよさそうなものばかりでした。でも今回はあんまりたくさん持ってこなかったのだそうで、初日におおかた売れてしまって、もうそれほどは残ってなかった。
わたしが器を見ているあいだにここのオーナーのくりくり頭の波多野さん、このあいだCONTEXT-sで会った詩人さん、それから1人、また1人と誰かがやってきて、勝手知ったる家のように自分の好きなところに座ってビールなど飲みはじめる。
ああ、こういう感じなんだな、と一瞬、いつものセプチマの風景を見たような思い。

この場所セプチマ自体に何か魔法のようなものがあるとして、でもやっぱりここはオーナーである波多野さんを主とする迎え入れる側の人たちと、ここで何か表現する人たち、それを見に来る人たちぜんぶのエネルギーによって魔法がかかる場所なんじゃないかってこと。
それがすごくオープンでピースフルなので、みんなくつろいでくだけていられて、そんな心地よさは他では滅多にないからまた来てしまう。そんなユートピアみたいな、HOMEみたいなところだったんじゃないかなあ。
そして、そんな場がなくなってしまった後はここに来てた人たちはどうするんだろう。
・・・・・・ こんどはそんな場を自分でつくるしかないよね?
それが自分の家なのか、セプチマみたいに誰にでも解放された場であるのかは別として。

せっかくはじめて来た記念に、わたしはお皿と迷って、小さな花のつぼみのような粉引の白い器をふたつ買いました。
高台がないせいで、釉薬をかけるときに付いた喜多さんの指跡がいい感じにアクセントになっている器。
ほんとはうちは3人家族なので3つほしかったのだけど、お皿にしてもこの器にしてもどうしてもふたつしかなかったのです。
それで、テーブルにだして見ているうちに、あ、これはもしお渡しすることができたらあの二人にあげよう、と思いました。
ちょうど白だし二つだし。
結婚したばかりの二人にはぴったりじゃないかな?
彼女だったらこれに何を入れるだろう、と考えているだけでも、なんだか楽しくなってきました。

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