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2016年5月11日 (水)

黄色いばら

16charlotte_austin

バスがやってくる二十分くらい前に、彼はふらりと姿を現わし、門にもたれ

かかった。ビリーボブはまだ庭でバラを摘んでいた。

 もう焚き火ができそうなくらいいっぱい摘まれて、その香りは風のように

重みを持っていた。プリーチャーはビリーボブが顔を上げるまでじっと彼

を見ていた。二人が顔を見合わせたとき、雨がまた降り始めた。海の飛

沫のように細かく、虹に染められた雨だった。プリーチャーは何もいわず

にやってきて、ビリーボブが摘んだ花を二分し、ふたつの巨大な花束にま

とめるのを手伝った。二人は肩を並べ、花束を歩道まで運んだ。通りの向

こうではくまんばちみたいな賑やかなおしゃべりが続いていたが、二人が

やってくるのを目にしたとき(彼らの顔は花束の背後に隠れて、まるで大

きな月のようだった)、ミス・ホビットは両手をいっぱいに広げ、階段を駆け

下りていった。(ここまで、村上春樹訳、トルーマン・カポーティ『誕生日の

子どもたち』より引用)

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カポーティーの短編小説のラストの最もイマジネイティブな部分。

バスがやってくる二十分くらい前にふらりとプリーチャーが姿を表わし

たのも、ビリーボブが摘んでるバラが赤でもピンクでもなく黄色いバラ

なのも、その結末から考えたら全てはただの偶然じゃなくて、もちろん

意図あってのことなんだろうな、と思う。

欧米人のなかにある『黄色』という色の意味するところ。

それとは別に黄色いバラの魅惑。

巨大な黄色のバラの花束が、『大きな月のようだった』とは、なんて鮮

やかな比喩だろう。

ミス・ホビットが初めて町にやってきたとき着ていたのも、レモン・カラー

のパーティー・ドレスだった。黄色いドレスなんてカナリアじゃあるまいし

と思うけれど、同年代のふつうの女の子とはまったくちがう彼女の謎め

いた魅力、エキセントリックなところをよく表していると思う。

美しいリボンのような、悪魔を味方につけた10歳の女の子。

雨はやんだけど、空は今日もどんよりと曇ってる。

バラは天気に関係なく次々と咲いてしまう。

今朝咲いたばかりのシャルロット・オースティンを切った。

カップ型の、完璧なロゼット咲き。

バラの咲き方のなかで、わたしが最も好きな花のかたち。

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