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2015年5月 7日 (木)

突然の訪問者

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昨日、夜遅くに妹からメールがきて、なんだろと思って見たら「なんと今日突

然、父の昔の知り合いが訪ねてきてくれました。その人は父と同い年とは思

えないとてもしっかりしたおじさんで、父の脚がもっとしっかりしていたなら旅

行とか、近場でも一緒に行きたいと思ってくれたようなのだけれど、父の頼り

ない感じに諦めた様子で、それでもこんど近くに食事でも行こうと誘ってくれ

ました。ありがたいことです」とあって私も驚いた。なんたって父はたまに顔さ

えあわせれば「お父さんの友達はみんな死んじゃった」というのが口癖だから

父にそんな知り合いがまだ残っていたというのが驚きだったし、またいつもそ

んな風にいっている父だからなおさら、突然の思いもかけない来訪者はどれ

だけうれしかったことだろう。そうと思うとなんだか泣ける話だった。それって

まさしく神さまからのギフトだと思う。

それで訪ねてくれた知人同様、父がまだ元気で矍鑠としていたら、それこそ

いやあ、あそこに行こう、ここに行こうと盛り上がったのかもしれないけれど

あいにくそうはならなかった。訪ねて来てくれた知人は、すっかり老いぼれて

しまった父を見てひどくがっかりしただろうか。

でも、と私は思う。

電話もせずに突然訪ねてきたその人の心情を思えば、家にたどり着くまで

様々な思いが頭を駆け巡っていたのではないだろうか。家に行っても、もう

そこには住んでないかもしれない、もし行って表札が変わっていたら、ある

いはチャイムを鳴らして出てきたのが妹で「父はもう・・・・・・」といわれたら。

そのほうがもっとずっと落胆したことだろう。もしかしたらいまの父みたいに

「私の知り合いはみんな死んでしまった」と嘆いたかもしれない。

そして、そこまで考えて父のことを思うと、父にとって友人の数のうちには入

ってなかったかもしれないその人を見て、父はすぐに誰だかわかったのだろ

うか。最近では叔父のお葬式のとき、私の従妹に会ってもわからなかった父

だから、ちょっとあやしい気がする。

突然の来訪者といえば、少し前に長らく会っていなかった腹違いの兄弟が

やはり突然、訪ねてきたことがあるらしかった。そのときは父がひとりでいた

ときだから、詳しいことは何もわからなかったけれど、彼(私の叔父)は病気

でもしているのか、いま知人を訪ね歩いているところだ、といったらしい。

人間、年をとったり病気をしたりしてもう自分の老い先長くないとわかると、

そうやってかつての古い、わずかなつてでも頼って誰かに会いたいと思う

ものなのだろうか。そうやって会ったところで相手の(あるいは自分の)心が

期待したとおりに動かなかったら、会う前以上にさみしくなったりはしないの

だろうか・・・・・・。

そんなことを寝る前にお風呂の中であれこれ考えていたら、今日は父の夢

を見た。それはあんまり、というか全然いい夢じゃなかった。かなりショッキ

ングな夢だった。でも、と私は思う。

でも、それさえ神さまが私に心構えをさせるために見せた夢だったのだろう

と思う。

人は誰でもいつかは死ぬ。それは避けられない。

父はそれまで精一杯生きて、私は自分にできるかぎりのことをする。

何をどれだけやったところで悔いが残らない、なんてことはない。

それさえもいまから心しておく。

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写真は最近、手に入れて父にプレゼントした古いのらくろの本。

父は小学生のころ、絵を描くのと算数が得意な子どもだった。

小学校の修学旅行で行った横浜で描いた船の絵が表彰されて、長いこと校

長室に飾られていという。算数は学年で1番だったそうだ。

私が小学校に上がる前、父に絵を描いてといって紙とエンピツを渡すと、父

はきまってのらくろの絵を描いてくれた。いつもそれなので母は呆れて笑って

いたけれど、私は父の描く自分の知らないのらくろが好きだった。

リハビリに行って作業療法士さんと話していたら、お年寄りには刺激が1番

だというし、PowerVoiceセミナーをやっている私の友人は、ボケた老人でも、

かつて自分が若いころに好きで聞いたり歌ったりした歌を聴くと記憶が蘇る

ことがある、というので、そうだ! 父にはのらくろだ! と思ってこの本を探

してプレゼントしたのだけれど、残念ながら私の予想に反して父はあまり喜

ばなかった。ときどき、どうかしたときにする、照れたような困ったような表情

を顔に浮かべて、妹に「あなたが読んだら」といっただけだった。

ほんとうに、人の気持ちを理解するのは難しい。

だからこそ、父がいつになく自分の要求をはっきり口に出していったりすると

どうにかしてそれをかなえてあげたいと思う。

まずは貯金をしないとな。

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