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2015年2月21日 (土)

最高のデュオ!@上町63

15kanmachi63

肩が痛くて夜よく眠れなかったせいかな、いつもは馬車道まで行く電車の中

は貴重な読書タイムになっているのに、昨日は所沢経由で石神井公園で乗

り換えてから、そのまま馬車道までの直行電車の中で思いきり眠ってしまっ

た。駅に着いてホームに降りてからもまだ自分が寝ぼけ眼をしてるんじゃな

いかと思ったほどだ。そうして上町63に着いてみればそこはいつもどおりの

温かいインティメートな箱で、思わずこれも幻なんじゃないかって思っちゃう

ところだったよ。

私が席に着いてほどなくしたころやたらと声の大きな賑やかな女の人が入っ

てきて、私の前に座るなり「わたしカオルです。あなたは?」と訊いた。

そして翠さんがオープニングで懐かしの『No More Blues』を歌いだすや、彼

女はダーダー泣きはじめた。そんな彼女を見ながら私は親友のMのことを思

い出してた。Mちゃんと一緒にコンサートに行くと、彼女もよくこんな風だった

な、って。カオルさんという人はとても人懐こくてオープンな人だったから私も

いつになくちょっとなれなれしくなっちゃって、ファーストステージが終わった

後に「何かあったの?」と彼女に訊くと、彼女はちょっと驚いた顔をして「なん

でもないです」といった。「あたし音楽に弱くて、ぐっときちゃうともう駄目なの

涙とめられなくなっちゃうの」という。なんでも今日、翠さんのライブに来るの

は16年か、17年ぶりになるという。それで今日5時に仕事が終わって、ここ

に来るまでのわずかな時間にべろべろになるまで飲んできたというから「なん

でまた」と訊けば、なんたって翠さんに会うのは17年ぶりくらいだったし、初

めて来るJAZZバーだったからそうでもしないと来る勇気が出なかった! と

いうので、なるほど、それはわからないでもない、と思った。マツコデラックス

みたいに豪快なルックスをしてるのに、カオルさんて意外と繊細な人なのね。

それにしても。

それにしても昨日の翠さんと馬場さんのライブはめちゃくちゃよかったな!

ものすごく集中度が高くて密度の濃いライブ。

カオルデラックスがダーダー泣いたのもじゅうぶん、理解できる。

音響を意識した声のコントロール、一音一音、そして歌詞にこめた想いとその

表現力。馬場さんも同じ曲でも毎回あたらしい試み、いままでより変わったこ

と難しいこと、曲にあらたなニュアンスをくわえてくる。この二人のデュオは回

を重ねるごとに間違いなく進化してるし、深化してる。その昔、あの控えめ過

ぎるほど控えめな翠さんがあるピアニストとのデュオをして「これは間違いな

く世界に出せるデュオだと思う!」と豪語したことがあったのだけれど、いまの

二人はさらにその上をいってるんじゃないかな。

この世の全てはいっときたりともとどまっていないし、全ては瞬く間にかたちを

変えてしまうのだけど、どうにかしてこの二人の最高のポイントをいいかたち

で残しておくことはできないもんかな、なんて演奏を聴きながら真剣に考えた。

けれども有名なミュージシャンたちが残した数少ない最高のアルバムを聴い

てもわかるとおり、それってかなり奇跡的なことなんだよね。すべてが絶妙な

タイミングでカチっと合って、マジックが起きる瞬間をとらえる、なんてことは。

でもいずれ全てが無に帰してしまう前に一度はチャレンジしてみてほしいと私

は切に切に思うのです。

15kanmachi63_02

昨夜も新旧こもごも歌いこまれた歌が多かったけれど、初めて聴いて新しか

ったのは、翠さんが最近、好きで好きでたまらないというエルヴィス・コステロ

の『Almost Blue』と、スティーヴィー・ワンダーの『Moon Blue』。つまり翠さん

はやっぱりちょっとブルーな曲が好きなのね。『Moon Blue』には個人的な思

い出があって、だから翠さんが休憩時間にそれを口ずさんだときにはちょっと

驚いた。うわ、なんでその曲を、って。人を好きになってるときにはまるで夜空

の星までもが自分を後押ししてくれてるみたいに思うけど、夢から覚めた後は

それが単なる浅はかな錯覚で、自分が間違いを犯したことに気づくだけ。私に

はもうそんなつまんないことで無駄にする時間はないから、まだ生傷癒えぬ

身らしいのに誰かさんが「まだこれからいくらでも恋ができるじゃない!」など

とのたまったときには「恋はあなたがしなさい」と冷たくいい放っちまいました。

それよか音楽、言葉、アートです。

昨夜も『So in Love』を揺れうごく蒼い海の荒波のようにディープに、エモーシ

ョナルに歌った翠さんだけど、昔、『日曜映画劇場』のエンディングでその曲

を聴いて心揺さぶられた子供のときから翠さんとの縁ははじまっていたので

しょうか・・・・・・。それとは間反対に『Kiss of Life』は軽やかに天にも昇ってし

まいそうな生きる歓びにあふれていて、これはもう原曲のシャーデーを超え

たね、って思う。その明と暗、どちらも翠さんのなかにあるもの。そして翠さん

がそんなふうに自在に飛べるよう支えている馬場さんのギターはまるで反射

鏡みたいにいい感覚をしてる。

まさしくいまの清水翠×馬場孝喜の2人は最高のデュオだと思う。

毎月カレンダーがあたらしくなるたびにまずいちばん最初に行きたいライブ

の予定を入れてしまうのだけれど、なかなかぜんぶ行けたためしってない。

2人がここで月に1回やるとして年にたった12回。

これは1回1回大事にして絶対はずせないなって思いました。

そしてたくさんの素晴らしいユニットを生みだしているここ上町63も、いつか

は伝説のJAZZバーになってしまうのかもしれないけれど、その伝説のなか

にいま自分もいるって思うと、こんな贅沢なことってないと思うのです。

清水翠×馬場孝喜のデュオのライブスケジュールのチェックはここから。

ほんとにお聴き逃しなく!

15kanmachi63_01

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