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2015年1月 7日 (水)

雨の渋谷で

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あれはまだ秋のことだったから、すこし、というよりずいぶん前のことになる

けれど、代官山で開かれていたバーニー・フュークス展に行ってきた。

例によってバーニー・フュークスのことは毎週ほぼ欠かさず見ている『美の

巨人たち』で知り、娘とともに激しく魅せられた。それで、娘も私も彼の画集

がほしくてネットの中をさんざん探したけれど、残念ながら一冊も見つける

ことができなかった。そうしてしばらくが過ぎ、何かの折りに私が思い出して

ふたたび検索したら、たまたま会期終了間際の展覧会を見つけて娘とあわ

てて駆けつけたのだった。

そのときのことは機会があったらまた書くとして、はじめて目にしたバーニー

フュークスの絵は素晴らしかった。人が人生で目にする何気ない、でも限り

なく美しい瞬間を、彼独特の光の描き方と豊かな(自然でありながらきわめ

てセンスのよい)色彩で見事に捉え、まるで見る者をいまその場にいるかの

ように思わせてしまう。展覧会はいわゆる画商が開いたもので、リトグラフな

どの多くの絵は販売されていて、ふだん滅多に絵をほしいと思うことはない

私でも、そのときばかりはもし買えるものなら一枚買いたいくらいだった。

そこではその展覧会を機に作られた画集も販売されていて(それは5千円

以上もする画集だったのだけれど)、帰りに娘が買おうとするとすでに会期

終了間際で完売してしまっていて、予約を受けつけているということだった。

いつもだとそこまでして娘が買うのはめずらしいことだけれど、貴重なもの

だけにどうしてもほしかったのだろう、予約して帰った。

それがずいぶん後になって届いて、それからさらに後になってアンコール

展のようなものが暮れからお正月のわずかな時間にかけてBunkamuraの

ギャラリーで行われるというフライヤーが届いた。暮れからお正月なんて

もっとも街なかに出かけない時期ではあったけれど、届いたフライヤーの

絵が見たことのない素敵な絵だったせいで、またしても娘と連れ立って出

かけることになった。

前回は代官山ヒルサイドテラスの外光の入る緑豊かなロケーションのギャ

ラリーで、今回はBunkamura1階の照明が明るすぎるくらい明るいギャラリ

ーだったから前回の見え方のほうがずっと自然でよかったけれど、今回は

じめて目にする絵も何点かあって、前回よりずっと空いていたせいで絵に

近寄ってタッチまで眺めることができたから、結果的には行ってよかった。

バーニー・フュークスの絵の最大の魅力を一言でいうなら、光と色。

そして自然でありながら巧みな構図のせいで、いま自分が実際に描かれ

た絵の現場にいて、その光景を見ているような気持ちになること。人物に

しても風景にしても、それを前にしてバーニー・フュークスが感じていたで

あろう心情や感情が絵から滲み出ていて、絵を見ながらまるでそれを共

有しているかのような気分になれる。つまり絵の世界と自分がいる世界が

分断されていないから、見る者は非常にインティメートな気持ちを引き起こ

されてしまうのだということ。

いつでも絵は自分に向かって開かれている。

そういう、あたたかい絵。

それでたぶん、ほしくなってしまうんだと思う。

その絵の一瞬の美しい光のなかに、そのままずっととどまっていたくて。

それはとりもなおさず、バーニー・フュークスのオープンでヒューマンな人柄

によるものなんだろうと思う。

バーニー・フュークスについてはまたいつか書きたい。

でも、いつものことながらネット上にはすでに詳細な写真付きで書かれた記

事がたくさんあるから、私が書かなくてもいいかもしれない。

小さな展覧会だから一枚ずつじっと見ていた(娘は眼鏡をかけて見ていた)

といってもそんなに長い時間じゃなかった。家を出るのが遅かったから見終

わるころには1時半を過ぎていて、お昼はほんとは渋谷の新南口の近くに

あるというオーガニック・レストランに行くつもりだったけれど、Bunkamuraを

出たとたんに大粒の雨がぱたぱたと降りはじめたので、走って駆け込める

ガレットの店に入った。

ガレットリアのgのマークが入ったウォーターグラス。

15galettoria

そして交差点を眺める大きな窓の前に座ると雨の渋谷の街を彩る光の粒子

が目に入ってきて、いま見たばかりのバーニー・フュークスの絵とだぶった。

傘をさすやんちゃそうな小さな男の子ふたりと若い母親がふたり、横断歩道

を渡ってきて目の前で立ち止まったので、私に絵が描けたらこれをどんなふ

うに描くかな、なんてことを頭の中で思い描いた。それからひとしきり、絵を描

けるということがどんなに素晴らしいことかを娘に話した。

本日のガレット。

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前はここで生に近い半熟卵入りのガレットを食べてお腹をやられてしまった

私だから、今回は卵なしのを選んだ。

ダイスカットのビーツとクレソン、くるみにオレンジピールがのってハチミツが

かかったゴルゴンゾーラチーズ入りのガレットは、いろんなテイストが複雑に

混じりあった大人の味だった。すごくおいしかった。ガレットは卵なしに限る。

ガレットの後に娘とシェアしたデザートクレープは塩バターキャラメル。

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ガレットのランチって高いからふだん自分ひとりだったらパスなんだけど、

娘とたまに出かけたときくらいはいいかな、というのと、このときは雨で、

店のなかにはカフェ・アプレミディなフレンチポップスがかかっていて、雨も

こんなふうに都会でのんびり眺めるぶんにはラックスできていいな、なんて

思った。こういう時間、若いときにはいくらでもあったような気がするけれど

いまはもう贅沢としかいいようがなくなってしまいました。

実はこの後、行きに見つけた今年の干支の陶のひつじを買いに入ったギャ

ラリーショップで『ジクレ』をキーワードにちょっと素敵な出会いがあった。

とにかく何をするにもスローで超消極的な娘のことだからどうなるかはわか

らないけれど、それにまつわる話はまたべつの機会に。

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