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2014年11月21日 (金)

りんごの季節

14ringo_pan

電車の中でいただいたばかりの詩集をひらくと『林檎』という詩が出て

きて、放たれた言葉の美しさにはっと息をのむ。それから実家のある

駅前の、母と昔ときどき行った器屋のショーウィンドーを覗くと、ちょうど

去年の今ごろだったか、あるひとにさしあげようと思って買ったりんご

柄の器がいまでも飾ってあって、一年の早さを思う。あたりにはこの時

期特有の世界をまるごと浄化するようなまぶしい初冬の光が満ちてい

て、あの日、人様の居間にいるような窓際の席でテーブルをはさんで

はらはらと泣いた美しいひとの涙を、昨日見た夢のように思い出して

いる。帰りに家の近所のパン屋に寄ると、ここもまたりんごだ。思わず

りんごのかたちをしたりんごパンを買う。今日はついに髪がどうにもな

らなくなって切りに行った。長さはそれほど変えずに、といったのに、

相変わらず美容師のJ君は威勢よく切ってくれて、男の子みたいになっ

て帰ってきた。その自分の顔を鏡で見たらいい歳をしてまるっきりマン

ガみたいで、ボスのところで働きはじめたころ、「早苗は黙ってすまして

れば深窓の令嬢みたいに見えるけど、話したり、やってることを見てる

とまるでマンガだな」といわれて、「何いってるんですか。私なんてどこ

から見てもマンガじゃないですか」と答えたことを思い出した。そして夜、

髪のことなんかすっかり忘れてキッチンで遅い夕飯を作ってたら、アル

バイトから帰ってきた娘が人の顔を見るなり「星の王子さまみたいにな

っちゃって」といって笑うので、「星の王子さまですか? そんなにいい

ものだったらいいんですけど」と答える。おととしはボスから、去年は

ボスの弟さんから大きなダンボール箱いっぱいの弘前りんごをいただ

いたけど、今年は自分で一箱買おうかな、なんて思っている。

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