« 今季二度めの栗ごはん | トップページ | セルリアが咲いた »

2014年11月26日 (水)

シベリヤあります

14siberia_2

連休明けの今日は、昨日おとといの晴れて暖かかった海日和が嘘みたい

な冷たい雨になった。

その雨のなかを各種支払い、納税に行く。

外は風もあって、雨が吹きつけるからもっと寒いかと思ったけれど、歩き

はじめてしまったら意外にそれほどでもない。私は暑さにも寒さにも強い。

支払いをぜんぶ済ませたらますます身軽になって雨の中ぼんやり叔父の

ことを考えながら歩いてたら、ふいに昔流行った歌を口ずさんでいた。

小椋圭の『めまい』。

この歌いい曲だとは思うけど、歌うたびいつも『ワイングラスの角氷』って

ところがしっくりこなくて困る。音の響きはいいとしても絵としておかしいで

しょ。角氷だったらロックグラスかウィスキーグラスじゃなきゃ。

ってなどうでもいいことを無表情に考えながら歩いていて、ふと横を見て

昭和レトロなパン屋のガラス戸に貼られたこの張り紙を見てはたと足が

とまった。「シベリヤあります」?

シベリヤって何?

それで、いったんはそのまま通り過ぎたものの、ちょうどなんだか物足り

ない気分でもあったし、思い切って中に入って聞いてみることにした。

こういうところ、自分でも子供だとは思うけど、知りたい気持ちは止めら

れない。それで店の中に入って、奥から出てきた店主らしきおじさんに

「あの、変なことを伺うようですけど、シベリヤってなんですか?」と訊い

てみた。おじさん一瞬、面食らったみたいな顔をして私の顔をじっと見な

がらとっさに「今日はもう売れちゃった」といった。それじゃ答えになって

ないので「で、シベリヤってなんなんですか?」と繰り返すと、「カステラ

です。中に羊かんの入った」とそっけなくいう。

それを聞いても私にはさっぱりわからないので、「それのどこがシベリ

ヤなんですか?」とさらに訊くと、こんどはおじさん、あきれたような顔

で私の目の前で手振りをしながら、「白いカステラのあいだに、こう黒い

羊かんが2本入ってるの。カステラの白は雪、羊かんの黒は列車のレー

ル。イメージできる? シベリヤ鉄道をイメージして作られたお菓子なん

だよ」という。それでやっと私もなんとなくイメージできて「ふ~ん、シベリ

ヤ鉄道! なるほど」と感心していうと、おじさんはやっと興が乗ってきた

みたいで、「50年前の映画で『風立ちぬ』ってのがあってね、そのなかで

主人公がシベリヤを食べるシーンがあって、それでひところすごく流行っ

たの」というから、「ブレイクしたんだ」というと、「そう。作っても作っても

飛ぶように売れたね。それでいつも冬しか作らないのに、お客さんが夏

も作ってくれ作ってくれ、っていうから夏までシベリヤ作ったりしてさ」

と、おじさん、そこまでいって「うちはその当時のまんま、50年前のレシ

ピで作ってます」とちょっと威張るようにいった。「この前もね、秋津から

わざわざ若いパン屋が訪ねてきて、シベリヤってどういうものなんです

か? って訊かれたよ。なんでも秋津に住んでる宮崎駿に作ってといわ

れたとかで。若くてまだなんにも知らないパン屋だったから、ちゃんと作

れたのかどうか知らないけど・・・・」といった。

けっきょく肝心のシベリヤは売り切れだったから実物を拝むことはでき

なかったけれど、疑問は解決したし、それに羊かんがはさまったカステ

ラなんて想像しただけでもあまり食べたいとは思わなかったから、売り

切れでよかったのかもしれない。それで、聞くだけ聞いて「じゃっ、また」

と店を出るわけにもいかないからパンを買って帰ろうとガラスのショーケ

ースの中を見ると、昔ながらのジャムパンにクリームパン、こしあんぱん

に白あんぱんと、私が子どものころそのままの昭和レトロなパンが並ん

でる。どれも素朴でぜんぜん飾り気がないのだけれど、いかにも手作り

って感じでかわいらしくもあり、おいしそうだった。私がどれを買おうか迷

っていると、おじさんがまた「うちのパンはいまのパンと違って、ふわふわ

したやわらかいパンじゃないからね。昔ながらの製法でなんにも入れて

ないから。すぐにカビが生えるよ」とぶっきらぼうにいった。そんなことに

はいっこうに頓着せずに私は「添加物は入ってないってことね」といって

ショーケースの上に置いてあった2個入り桜あんぱんと、シナモンロール

みたいな形のバターロールが4個入った袋をひとつ買った。

家に帰って、夕飯の前だったのでオヤツがわりに桜あんぱんを娘と半分

ずつして食べてみたら、薄皮のパンの中にほどよい上品な甘さのこしあ

んがたっぷり入ったあんぱんだった。昔の、物があまりなかったころの素

朴なあんぱん。パンを食べてるというより、あんこを食べてるみたいな。

それで、あんぱんを食べながら何気なく娘に「シベリヤって知ってる?」と

訊いたら、予想に反して「知ってるよ」という返事が返ってきたのでなんで

知ってるのかと思ったら、件の宮崎駿の映画『風立ちぬ』の映画で知った

という。

それでちょっと調べてみて、「ああ、なんだ、これか!」と思ったのでした。

シベリヤ。

Siberia_01

これなら子どものころ、それこそ今日行ったみたいな近所の小さなパン

屋で見たことがある。味の記憶はないけど、たぶんきっと何回か食べた

ことだってあると思う。

娘にそういったら、「ヤマザキでも売ってるよ」といわれてしまった。

なんだなんだなんだ・・・・・・

これぞまさしく百聞は一見に如かず!

|

« 今季二度めの栗ごはん | トップページ | セルリアが咲いた »

日々のあれこれ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 今季二度めの栗ごはん | トップページ | セルリアが咲いた »