BAD DAY
東京のよくない一面。
雑踏における虚しさ。
人は、頭(脳)でわかるより先に身体(筋肉)でわかっているそうだ。
このときすでにわかってたんだろうな。
土曜日にプールをやめて、持ってるなかで一番いいシャツにアイロンをか
けて靴を磨き、道に不案内なタクシーの運転手がきてもいいように地図を
プリントアウトして、スーツをぱしっと着て早めに家を出てきたのに、門前
払いされるとは。あーあ・・・・・・
ウォーター・フロントの無駄にバブリーでキラキラした建物を背に、こんな
景色を前にして途方に暮れる私は、東京っ子の私でこれだから、見渡す
限りあたりいちめん田んぼ、なんてとこから出てきた人ならもっとだろうな、
と思う。やり場のない思いを胸に、ただただ休日に電話をとってくれた唯
一の同僚に感謝。
それから30分も待ってタクシーを拾うと、乗って落ち着くなり例によって
運転手が「お仕事ですか」と話しかけてくる。こんなときでさえ私はそんな
に話しかけやすいのか。
そうです、とこたえると運転手は「お疲れ様です!」と陽気にいった後に
「休日なのに。六本木や赤坂はいまごろ人で賑わってますよ~」と楽しそ
うにいう。「でも、そういう意味では運転手さんのほうが大変でしょ、週末
も祭日もなくて」というと、「お盆休みも暮れ正月もたしかにないですね」
といってから、「でもプラス思考で考えればこの仕事は2日働いたら休み
だから、けっこう休みは多いほうなんですよ」といい、「それに好きな仕事
だから、大変なんて思ったことないですねえ」という。
それは素晴らしい、と私がいうと運転手は、「8年企業に勤めた後、この
仕事がしたくて会社をやめて始めたんですよ。あんまり歳になってからだ
とキツイと思って、比較的若いうちに」といった。
これまでどちらかというとタクシーの運転手ってほかに仕事がなくてなる
人が多いのかと思っていたから、ふーん、そういう人もいるんだ、と思っ
て聞いていると、「やっぱり好きってことは強いですね。仕事だからいい
こと嫌なこといろいろあるけど、好きだからなんとか乗り越えられる。そう
いう意味では仕事を選ぶうえでそれって大事なポイントなんじゃないでし
ょうかねえー」というので、今日みたいな日にタクシー乗ってこういう話さ
れるとは、これって神の声か? と思いながら「私は今日がその嫌な日
でした」というと、彼はもういちど威勢よく「お疲れさまです!」といった。
駅のホームについてどうしようか迷った後、気分転換に新宿のタイ料理
屋でごはんを食べて帰ることにした。今日は夕飯を作ってこなかったから
家に帰っても何もないし。
いつも行くその店はいま耐震工事中とかで営業してないから初めて2号
店に行ったら、料理を運んできたのはいつも店にいるかわいい女の子だ
った。思わず「あら、こっちにいたの?」というと向こうは向こうで「あれ?
いつもスーツでしたっけ? 感じが違うから全然わかりませんでした」と
いう。ほんとにいつ会っても感じよくてかわいい女の子。
彼女の顔を見たらなんだか気持ちがほっとなごんだ。
今日よかったのは彼女にここの本店の2割引券をもらったことだけ。
私が男だったら彼女を好きになってたかもしれない。
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