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2014年8月 8日 (金)

ホットチョコレートバナナファッジ

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昨日、電波の入らない地下のJAZZバーを出た瞬間にメールの着信音がして、

電車に乗ってから見ると妹からだった。今日の待ち合わせ時刻についてはすで

に電話で父に何度も念を押してあったにもかかわらず、父が心配して何度か確

認の電話を入れた、とある。例によってピリピリした感じの事務的なメールで、

読み終わったとたんに一気に疲れてしまった。このあいだも、父によけいなもの

は買ってこないでといくらいって買ってきてしまう、という愚痴をなだめたばかり

だけれど、妹は年をとって穏やかにまるくなっていくどころかどんどんアグレッシ

ブになっていくようだ。いつも自分がまわりにどういう空気を撒き散らしているの

か全然わかってない。それで、いつも人と約束しているときはたとえ前日寝るの

が遅くなっても寝坊することはないのに今朝はうっかり1時間も寝坊した。

あわてて飛び起きて身支度をすませ、家族分の簡単な朝食を作って珈琲をいれ

自分は食事も珈琲もそこそこに席を立って、窓の外を見ながら傘を持って出よう

かどうしようかと考えているうちに雨が降ってきた。こりゃ、ますます大変だ、とい

いながら家を出た。昨日の帰り道はまさしく立秋だと思えるくらいに涼しかったの

に、今日はうんざりするほど蒸し暑い。

父の通う病院は電車一本で行けて、私の足なら駅から15分もかからないところ

にあるのだけれど、父の歩く速度では真夏の炎天を行くのはキツイから、今日

は地下鉄を乗り継いで行くことになっていた。乗り換えは乗り換えで面倒だけど

病院は地下鉄の降り口からはすぐなのだ。だいいち地上よりは涼しい。

雨がひどいようならいつもどおりの駅からタクシーで行ってもいいと思っていた

ら、待ち合わせの駅に着いてみると雨はぜんぜん降ってなかった、都内と都下

では天気にもかなりの違いがある。それから西武線と都営大江戸線と丸ノ内線

を乗り継いで行ったのだけれど、やっぱりそれはそれなりに大変だった。まず西

武線の駅を降りて大江戸線の乗り口に行くまでの間に雨に降られた。エレベー

ターもエスカレーターもない駅では父は階段の上り下りに苦労する。父の遅い

歩調にあわせて常に先回りして周りに注意しながら父に気配りながら歩くのは

ほんとうに疲れる。何よりどこかに遊びに行くときと違って、異常に時間を気に

しながら神経を張り詰めている父の様子がわかるからよけいに疲れる。こんな

思いをして病院に通わなければならない父がかわいそうにもなってくる。

けっきょく、私が家を出てから1時間半近くかかってやっと病院に着いた。

ロビーに入ると、父はいつものようにショルダーバッグに手を突っ込んで診察券

を探している。そして診察券が見つかると、先週妹と検査に来たばかりなのにも

うそれをどうしたらいいかわからないのだ。

でも今日はこれまで通院したなかで最速の速さで診察が済んだ。

自販機で買ったミネラルウォーターを飲んで一服するかしないうちに名前が呼ば

れて診察室に入れたのだ。

結果は軽くグレーではあるけれど、いちおう異常なし。

そしてこんどは4ヶ月後だ。

これまでは3ヶ月毎だったから年に4回だった検診がやっと3回になったのだ。

やった! ラッキーだね、といいながらロビーに降りた。

会計をすませるとやっと父もさっきまでの緊張から解放されたようだった。

めずらしく父が「ジュースでも飲んでちょっと休んでいくか」というから、てっきり私

は喫茶店にでも入ってのんびりしていこうというのかと思ったら、どうやらさっき買

ってあげたペットボトルのジュースのことらしい。

すでに疲れていた私はがっかりして、「えー、そんなこといわないで近くの喫茶店

にでも入って、涼しいところで冷たいものでも飲んでちょっとのんびりしていこうよ

お茶代くらい私が払うから。もう疲れた!」と子供みたいにいって、近くにあった

ロイヤルホストに父を引っ張って行ったのだった。

店はまだ11時過ぎとあってランチで混みはじめる前で空いていて、明るい窓際

の席に通された。朝ごはんをちゃんと食べられなかった私はすでにおなかがすい

ていたけれど、父はすいてるわけもないので甘いものにした。

オーダーしたものがくるのを待つあいだ、「こんな広くて明るい部屋が家にあった

らいいのにね」といったら、「そうだね。広々として。気持ちがいい」と父がいった。

私が食べたのはホットチョコレートバナナファッジだ。

バナナサンデーに熱々のチョコレートをかけて食べる。

めちゃめちゃ甘かった。

虫歯ができそうなくらいに甘かった。

父はクリームあんみつを食べた。

クリームあんみつを食べながら、父はまた例によって「おとうさん、こんなの初め

て食べた」というから「何いってるの、このあいだ後楽園に行った帰りに神楽坂の

紀の善で食べたじゃない」といったら、「そうだっけ」といっている。

父はなんでもすぐに忘れてしまう。昨日のことも覚えてない。

そんなひとにいくらよけいな食材は買ってこないでとヒステリックにいったところで

ぜんぜん無駄だと思う。それよりは父が何か買ってきたら、ハイまた買ってきた

のね、とすぐに冷凍するか、駄目になったら父の見てないところで何も考えずに

捨ててしまえばいい。そのくらい罰当たりにもならないだろうし、女親と違って高

い洋服を買ってくるわけじゃないのだ。半分ボケてるといったって父はまだ話が

通じる。落ち着いて話せば会話が成り立つ。感情表現もあれば表情も豊かだ。

それが何よりいちばん大切でありがたいことじゃないか。

店に入って食べ終わるか終らないかのうちに父が気にすることといったら会計

だ。父はウェイトレスがテーブルに伝票を置くなり、さっと取った。

娘だっていい歳で働いていて収入があるんだからいいじゃない、と思うけれど

とにかく自分が払わなくちゃいけないと思っている。

父が会計をすませて外に出たあと「ごちそうさまでした」と私がいうと、父は「いや

今日はお疲れさまでした」といった。

あさ家を出たときはものすごく蒸し暑かったのが、午後はカンカン照りじゃないだ

け少しはマシだった。父が歩くというので、帰りは西武新宿駅まで歩いて行った。

次は12月。

一年って、ほんとにあっという間だと思う。

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