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2014年7月31日 (木)

日本の夏のいろ

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とくにめずらしいわけでもなんでもないけれど、夏の夕暮れに絞りのおしろい花を

見ると、ああ、これってまさしく日本の夏のいろだな、と思う。

まるで小さな女の子の浴衣みたいだ。

今日、友人が仕立てあがったばかりの浴衣を着た写真をFacebookにアップしてい

て、私もなんとなく思い立ってもうずいぶん着てない自分の浴衣を洗いなおした。

Facebookに載っていた彼の浴衣はあんまり見たことのないターコイズブルー。

私の浴衣は生成り地に墨の濃淡で朝顔を描いたモノトーン。

いつか百貨店の浴衣売り場で、個性的なあなたにぴったりなとっておきの浴衣が

ある、といって年配の着物姿の店員さんが奥から出してきたその浴衣は、鏡の前

であわせてみると果たして私にぴったりなのだった。それでただ見ていただけった

私は買わないわけにはいかなくなって、してやられた、と思った。

もともと体型からいっても顔立ちからしてもたぶん、着物のほうが似合うのだと思

う。昔、母がよくいってた『世が世だったら』はかなげな着物姿の文学少女で思う

さま人心を惑わせられたかも、などと浅はかな妄想(というかジョークです)をひと

くさり。それだとて果たしてそれが幸福だったかというと、そうともいえないかもし

れぬ。ついうっかり蒼白の美形文士の口車にのせられて一緒に冷たい水に入る

羽目になったりして。

14oshiroibana

そんなくだらない与太はともかく、子どもだったころの私はお祭りのお囃子が鳴る

といてもたってもいられなかった。早めの夕飯をすませると浴衣を着せてくれる母

の手を「早く早く」とせかせて帯を結んでもらった。赤い金魚みたいなやつ。そして

帯を結び終わるやいなや下駄を履いて外へ飛び出してゆく。そのころの私の呼び

名は『鉄砲玉』。出て行ったっきり帰ってこない。

それでも金魚すくいでは母にいわれたとおり尾が三つに折れた高級そうな大きな

金魚をちゃんとすくって帰ったものだ。金魚すくい屋の親父さんにはいつも「お嬢

ちゃん、うまいねえ」といわれた。親父さんはずるっこしないでちゃんと大きい金魚

をそのままビニール袋に入れてくれた。ビニール袋の金魚を眺めながら帰った夜

道。シッカロールの匂いとアセチレンの光と夜遅くまで響く下駄の音、の夏。

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午後、スーパーマーケットに行ったらタイミングよくクリーニング屋のおばさん(とい

っても御年80歳のおばあさん)に会って、浴衣もってったら糊してくれる? と訊い

たらやってくれるというので、じゃあ、後でもってく、といった。そんなことくらい自分

ですればいいのだけれど、糊付けなんて滅多にしないからもうどうやるか忘れた。

そしてクリーニング屋の彼女はといえば「私また踊るのよ」というから「どこで?」と

訊けば、この暑いのに近所の盆踊りでやぐらに上がって踊るという。しかも町内会

をまたいで何ヵ所かで。「だっていつまで踊れるかわからないから」、踊れるうちに

踊っておくのだそうだ。なんて元気なんだろう。でもそうやってきれいにして人前で

踊ることがこのひとの若さやハリの秘訣になってるんだろうな、と思った。

それから私は、いったいいつから浴衣を着なくなったんだっけかな、と考えて、そう

か髪を短くしてからだ、と思いだした。夏に浴衣を着ていたころは髪が長くて、暑い

ときは頭のてっぺんでシニヨンにしてとんぼ玉のかんざしを挿していた。

それが私のトレードマークだった。

ヨーヨーみたいな柄の涼しげなガラス玉。

とんぼ玉の色も日本の夏のいろ。

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コメント

踊ることは、そういうことなのかもしれません。
誰かに見られたい、見てもらいたい、そして
そこに自分がいることを証明しているような。

私も何歳まで踊るんだろう。
今まで、見られたいんだなんて、口に出して
言えなかったけど、踊る人とはそういうもの
なのかもしれません。


soukichiさんの文章を読んでいると、瞬く間に
夏祭りに自分がいるような情景が現れます。

私の両親は、あまりそういうのに連れて行く人達
じゃなかったけど、父の会社の社宅に住んでいた頃
社宅の人が集まって、盆踊りの日にカレーを炊いて
いたのだけど、私と妹は水疱瘡かおたふくかにかかって
そこに行けなくて、4階のベランダからそれを眺めて
カレーを食べていたことをふと思い出しました。

投稿: ノブタ | 2014年8月 5日 (火) 22:02

ノブタさん、

毎日あっついですね~!shock
群馬じゃ今日、過去最高の39.5度を記録したって。
TVのニュースで映ってた街の温度計では42度になってました。
ほんとにもうなんなんでしょうねー
数年前にインドカレー屋のインド人が日本はインドより暑いってびっくりしてたけど、
日本はもはやアマゾン???

夏好きの私も最近は消耗するせいか夕飯が終わるともう眠くて眠くて、書くことはいっぱいあるのに手が追いついていきません~ (^-^;

そして、そうそう、踊るって私もそういういことだと思います。
私もできることなら(いまから5.6キロ太って)サルサを踊ってみたいです。
人に見られることとか恥ずかしさとか、そんなもの忘れてただ夢中で無心に踊ってみたい。
これ願望ですね。

でも、たぶんやらない。
踊らないかわりに、より理性的に、水中でも落ち着いて安定していられるための泳ぎを模索するんだろうなあ。

ノブタさん!
踊れない私のかわりに思うぞんぶん踊ってください!shine

投稿: soukichi | 2014年8月 5日 (火) 22:46

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