桜と雨
あさカーテンをあけると雨だった。
窓をあける。
掃除をする。
精油を焚く。
ローズマリーとラヴェンダーとベルガモットとフランキンセンスのいい匂い。
午後、遅いお昼を買いにパン屋に行く途中、遠まわりして桜の下を歩く。
毎年、桜には驚かされるけれど、今年も驚かされた。
一週間前どころか数日前には咲く気配さえなかった枯れた老木のような桜の樹が
三月の終わりの一気に気温が上がったすぐ後にはもう咲きだしてしまって。
花咲さかじいさんの話もこんな桜の性質あってのことだろう。
時がきて花が咲く。
毎年変わらず繰り返される自然の営み。
なんの不思議もなかれども。
桜が咲くと雨が降る。
それも毎年のことだ。
桜の下、遊歩道を歩いていると毎年おなじ桜の樹の下で三脚を立てて家族写真を
撮った昔のことが思い出される。
映画のワンシーンのように。
まるで別の人の人生のように、ただ懐かしく。
こんな年になるまでこういう暮らしをするとは思わなかった。
前から歩いてきた、見るからに心を病んでいる人とすれ違う。
傘をさして、まるで自分を自分で守るように片腕を自分の半身にまわして、目をつ
ぶったままごくわずかづつ前に進んでいく。
都心より緑が多くて環境がいいからなのかどうか、あたりには精神病院が多いから
こんなことはとくにめずらしいことではないけれど、こういう人の人生。
ときどき生きるってどういうことなのかわからなくなる。
雨は思いのほか激しくて、こういうときカメラを持って出るからカメラが傷むと思いな
がら、灰色の空をバックに曖昧にぼやけた桜を見上げる。
健やかでいることと病むことの境はいつも紙一重で、わずかなところでバランスして
いるにすぎない。光と闇がいつも隣りあわせにあるように。
家に帰って、ふと思いついて花粉症用のアロマバームを作った。
このあいだ医者の友人が、花粉にはワセリン軟膏を鼻のまわりに塗るのがいいと
いっていたから。ユーカリにペパーミントにラヴェンダーにティートゥリー。
花粉症がひどいうというあの人のために。
イージー・ブリーズなすっきりした香り。
少しは効くとよいのだけれど。
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