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2014年4月13日 (日)

緑の魂

14greenness

朝ベランダに出たときにはまだ気温が低くて、家の中はひんやり肌寒かったけれど

午後になって外に出ると意外にも陽射しはぽかぽかと暖かい。

私の部屋から見える景色は、冬ざれの裸木、淡いピンクの綿菓子みたいな桜、そ

して緑の林へとあっという間に移り変わったけれど、外に出てふと見上げるとここ

にも淡い緑。

「降りかかる、緑のさざなみ」と詠ったのはもう30年以上も昔のこと。

私にとって窓っていつも物語の入り口みたいだ。

窓辺に立つその人は、視線の先に見えるはずのない水平線を見ている。

わびしい独り住まいの部屋でボスが倒れたときに、うつろな瞳のなかに映っていた

のと同じように。

今日、わたしは去年から抱えていた例の一件から降りた。

自分の気を最大限に引き伸ばしたところで、どうやってももう無理だと思ったから。

いつもいきなり電話をかけてきて、一方的に自分のいいたいことだけを話す。

そのほとんどが自己弁護とできないことのいいわけ。

その異常なまでののらりくらりにつきあうのに心底うんざりしたから。

私が成就させたかったのはまだ見ぬ最後のイマージュだけど、彼が異常に固執

したのは物理的な紙の束。

物に執着するなんて愛じゃなくてただの業だ。

声こそそっくりだったけど、彼はボスとは似て非なる人物だった。

個々の家が抱える病理をここにも見た思い。

でもボスは許してくれるだろう。

もともと私には一言もいい遺していかなかったのだから。

それに、もうとうにボスは軽やかな魂となってこの春の光のなかを飛びまわって

いるだろう。青くさい、緑の魂を持った少年のように。

一切の重力から解放されて。

笑いながら。

死に顔を見なかったから、ボスを思い出すときはいつも笑顔だ。

もちろん、それが唯一の救い、だなんていわない。

救いなんていくらだってある。

いま陽が輝く、

ただそれだけのことだって。

私ももう何も執着すまい。

言葉なんてただの言葉にすぎないんだ。


屋根の落ちたあばら家に散乱する大量の紙片 ・・・・・・

一生が一瞬のうちに駆けめぐり

傾く意識のなかで

切れ切れに舞う断片のむこうに聴こえるのは

ただ、蒼き海鳴り


なんて私の悲愴なイメージよりは

ボスはずっと整理整頓された死を遂げた。


もうすぐボスの命日。


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