二月の花屋
あさ、まだ誰も起きてこない静かな部屋のなかでピアノを聴いた。
冬の固い舗道に、コツコツと靴の足音が響いているようなピアノ。
モノローグのような、短い手紙のような、散文詩のようなピアノ。
このひともどうやら冬のひとみたいだな、と思う。
外は北風が吹き荒れ、自転車で出かけるのが躊躇われるほどの寒さだったけど
陽射しはわずかに暖かい。自転車でひとっ飛びして行った二月の花屋の入り口で
迎えてくれたのは、このあいだ降った雪が黄色く染まったような、黄色い金平糖の
ような、綿のぽんぽんのような、ミモザ。
まるで無邪気なこどもみたい。
それから、ラナンキュラス。
こんなに風の強い寒い日なのに、花屋はすでに今日を祝う先客ありで、ミモザの
花冠をつけた女の子が「それではよい誕生日を!」といって、擦れ違いざまに出
て行った。
寒い冬の早起きは大変だし、水は凍るように冷たいけど、しあわせな花屋。
ぎりぎり水瓶座の最後の日に生まれた君へ。
Happy Birthday !
私は一束の春のブーケを買って帰った。
花がくるまれていた英字新聞に踊る活字と写真も、まさしく今ならではのシーズ
ンカラーだな、と思う。
花は中心から時計まわりに、白のラナンキュラス、まるでジュエルのようなピンク
のスカビオーサ、つぼみのついたユーカリ・ポポラス、ギリア、淡いピンクのヒヤ
シンス、濃いピンクのスカビオーサ。
ヒヤシンスのそれほど甘くない爽やかな香りは早春とよぶのにぴったりだ。
「毎年ギリアを見ると春が来たって思うの」
花屋のそんな何気ない言葉が私にはひどく印象的だったりする。
2月の花屋で。
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コメント
1枚目の写真がすごく気にいりました。
もらっていいですか。
PCの背景写真の一つにしたいのですが。。。
投稿: elm | 2014年2月22日 (土) 16:48
elmさん、
どうぞどうぞ使ってください
投稿: soukichi | 2014年2月22日 (土) 19:32
お礼が遅くなりました。
ありがとうございます。
soukichiさんが感じられた光が画面に広がっています。
いい感じ
投稿: elm | 2014年3月15日 (土) 00:01
elmさん、ありがとう。
なんだか殺伐とした時代になってきたけど、
そんななかでも少しでも光をすくいとらなきゃですね
投稿: soukichi | 2014年3月16日 (日) 22:29