お聴き初め@白楽ビッチェズブリュー
昨日は北風が吹き荒れる、いまにも雪が降りそうな寒い夜だったけど、めげずに
出かけた。白楽ビッチェズブリュー。
去年の1月はここでの直さんの7daysに最低2回は行くつもりで早くからスケジュ
ールをチェックしていたのに、あろうことかインフルエンザにかかって1日も行け
ずに終わってしまったのだった。昨日はそのリベンジというところだけれどブッキ
ングが凄かった。あの『OUR TRIBAL MUSIC』の金剛督さんと竹内直さんのデュ
オ。これを聴き逃すわけにはいかないでしょう。
でも、なんと昨日はめずらしく直さんが風邪なんかひいてると思ったら金剛さん
は金剛さんで全身の関節が痛くてたまらない、とJAZZバーの隅でずっとコート
を着たまま固まっていて、ありゃあー、という感じだったのだけれど、「それでは
今日は風邪っぴき対決ってことで」と直さんがいって始まるや、いったいどこが
風邪っぴきなんですか? というくらい二人ともちゃんと音が出るわけです。
なにしろ狭い部屋に管2本、手を伸ばせば届きそうな近距離でバリバリのイン
プロヴィゼーションを聴くのだからもうその音量、音圧といったら。凄い。
最初の1曲めで2本のサックスが炸裂しまくったときにはまるで頭の中の大きな
白い壁をダーッと一気に塗り潰されるような感じでなんだか血圧まで上がってき
て、「うわぁー、どうしよう!」という感じだったのだけれど、それも最初だけで次
の曲からはなんとかなった。
完全なフリーだから聴いているあいだはほとんど瞑想状態で何も考えなかった
けれど、そんななかでぼんやり頭をよぎったのは、子供のころよく母に「あんた
の頭をパカッと割って中を見てみたい」といわれることがあって、親になったいま
では私もときどきそんなことを自分の子供に対して思うのだけれど、けっきょく、
人の頭をパカッと割ってみたところでなんにもわからないんだろうなあ、というこ
と。音はその人そのもので、それがいかに精妙で、複雑で、深遠か。いったい
それがその人のどこからやってくるのか、考えた。事前にどんな暗黙の了解が
あるのかないのかわからないけれど、年じゅう会っているわけではない二人が
まったくリハなしで、なんの打ち合わせもなく、合図もなくどちらかが始めると、
流れを読んでもう片方が始め、ふたつの音はしだいに2本の線のように交錯し
離れ、ぐちゃぐちゃに混じりあい、弾け飛び、パーカッションみたいだったり弦の
音だったりしながら時折りメロディーとともに見たこともない風景が現れ、つかず
離れず互いに違う線を描きながら、いつかひとつの線になって消えてゆく。
気を読む、という点ではこれって武道みたいだと思った。
言葉でそのとき感じたことをいうことはできないけれど、音を聴いているあいだ
は頭をパカッと割ってみるよりたしかにその人の何か(本質みたいなもの)が
見えた気がした。
金剛さんと直さんは立ちかたも楽器の構えかたも違えば重心を置いているポイ
ントも違う。いつも思うのは直さんはすごくグラウンディングができてる人で、重
心がとても低いのだけれど、金剛さんはもう少し高くて瞬発力が高そうな感じ。
金剛さんの音はノーブルで端正だけれど、やることはかなりラディカルでアグレ
ッシヴ。直さんの音はやっぱり何かを破り続けているよう。
それは私にはまるで破邪の音にも聴こえて、こんなこといったら風邪をひいてい
たお二人には悪いのだけれど、これで私はこの冬はもう風邪ひかなくてすみそう
だなあ、なんて思った。
直さんのバスクラも金剛さんのクラリネットもフルートもいい音してたなあ。
音を出してるあいだは二人とも体調が悪いなんてことが信じられないくらい。
さすがプロ、とかそんな言葉ではくくれないくらい。
この日は聴いていたのがマスター入れてもたった3人だけだったからすごくプラ
イベートな感じで、休憩時間に金剛さんと直さんが話す楽器談義も面白かった。
金剛さんの放つ短い言葉がなんだかいちいち深くてリアルで、二人の会話は実
に率直かつストレートで見ていて気持ちよかった。
私は昨日のために持って行ったCDにサインをしてもらいました。
このジャケットの渋くてダンディーな金剛さんは前から誰かに似てる似てると思っ
てたら、藤竜也でした。いまの金剛さんは岸部一徳をもっとハンサムでかっこよく
したような感じ。このアルバムを録音したのももう15年も前のことだそう。
「でも、あんまり変わってない。老けてないですよ」といったら「ふけてないって、
今日吹けてなかったってこと?」と突っ込まれちゃいました。
そんな金剛さんだけど、帰るとき出口ちかくで「今日はありがとうございました。
あのアルバム見て嬉しかった」といってくださって、そういうことをさらっとストレート
にいえるって素敵だ、と思いました。
そして詳しくは書かないけれど今日も直さんはとってもいい人でした。
幸先のいいお聴き初め。
こころから感謝!!!
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