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2013年12月13日 (金)

今年最後の検診

13nanten

父の検診の今日はよく晴れて陽射しは暖かったけれど風がすごく強かった。

西武新宿の駅を降りて西新宿方向に歩きはじめたら、副都心のビル群をバック

に黄色く色づいた銀杏並木が逆光を浴びて金いろに輝いていた。父が「銀杏の

葉がきれいだ」といったと思ったら後ろから激しい北風が吹いてきて、黄色い銀

杏の葉っぱがバサバサと大量に落ちてきて、父と私の上に降りかかった。

すごいね、と父と笑いながら後ろをふり返ると、それはもうまるで銀杏の雨だった。

その一瞬だけはなんだか映画のワンシーンみたいにきれいで、もしかするといつ

までも記憶に残るかもしれない、と思った。

先週、血液検査とCT検査を受けに行った妹から、その日はめずらしく病院が混

んでなくてスムースに終わったとメールをもらっていたけれど、今日も同じだった。

消化器内科に予約票を出してから間もなく電光掲示板に番号が表示されて中待

合に行き、診察室前のソファでもそう待たされなかった。師走のこの時期は病院

も混んでいるかと思っていたのに意外だった。

結果は可もなく不可もなく、異常なし。

CT検査はあまりやりすぎると腎臓に負担がかかるからということでいつもの3ヶ

月後ではなく、今回になってはじめて4ヶ月後になった。次は来年の4月。父の

誕生日の2日前だ。私が父と一緒に病院に来るのはその1週間後だから、その

ころ父は83歳になっているのだ。

あっさり結果を聴いて、いつものように次のCT検査の承諾書に父がサインをし、

ありがとうございました、来年4月またよろしくお願いします、といって父をうなが

して診察室を出ようとしたら、父が椅子から立ち上がらずに何事か考えている。

と思ったら、担当医に向かってやにわに「それだけですか?」といった。

え? 何かほかに聴きたいことでもあるの、と思ったら「お会計はいくらですか」

と医師に聞いた。思わず「会計はここじゃないよ!」という医師。「おとうさん、

会計はいつも下でしょ」という私。それでも解せない顔をしている父をうながして

医師に礼をいって外に出た。最近、父のボケかたはひどい。このあいだも家に

りんごジャムとパンを持って行って、手作りジャムだからお昼にでもパンにつけ

て食べてね、といったのに、私が帰るころになって「これは、ごはんにつけても

いいもの?」と聞くから、「はあ、嘘でしょ」と思ったばかりだ。

自分でもいま聞いたことをすぐに忘れてしまう、といっていた。

今日だって入り口でさんざん診察券がないといって探したのだった。

そんな風なのに、「次に来るころには83だね」というと、「オリンピックまで生きら

れるかな」という。

病院を出るころには12時半をまわっていたけれど、例によって父が「お腹すいて

ない」というのでまっすぐ駅に向かった。父は切符を買うのに手袋をはずしたりそ

れをポケットに入れたりするのに手間取ってたが、何を思ったのかお札を1枚取

り出して私に差しだすので、人混みの中でみっともないからやめて、といった。

父はこれからクリスマスでケーキを買ったりしなくちゃならなくて大変だからといっ

たけれど私はうけとらなかった。電車に乗って横を見ると父は荒れた冷たそうな

手をしていて、私は自分がしていた指なし手袋を見せて「こういう手袋だと切符を

買うときも指が動くから手袋を脱いだりしなくてよくて便利だよ。父にも編んだから

する?」と聞けば、「しない。もともとおとうさんは手袋なんて滅多にしないし」とぶ

っきらぼうにいう。「でも、父用に編んだんだよ?」といってみたけれど、「お気持ち

だけでけっこう」といわれてしまった。

父が途中で電車から降りてしまうと私は本に目を落とした。

家の近所を歩きながら、けっきょく、最後まで父のことはほとんど何もわからない

まま終わるんだろうな、と思った。優しさと懐かしさの曖昧な輪郭だけを残して。

家に帰り着くころにはすっかりお腹が空いていて、ナポリタンを作って子どもと食

べた。ナポリタンの隠し味あたしベイベーさん のブログで教えてもらったカレー

粉、少々。これがないのとあるのとでは全然ちがう。

コンピュータを立ち上げたらブルーノート東京からメールマガジンが入ってきて、

『Alone Togther』コンビで、ロン・カーターとともに公演予定だったジム・ホールが

ご逝去されたので、1月に予定していた公演は中止になりましたと書いてあった。

亡くなったのは12月10日。

12月4日に83歳の誕生日を迎えたばかりだったそうだ。

それにしても、亡くなるそのときまで現役のトップミュージシャンであり続け、海外

公演まで予定していたとは。すごい。

まさに今を生ききった偉大なジャズギタリストに思わず感服をおぼえた。



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コメント

わわ、突然の登場でビックリ。

お父上の話、自分だったら
やりきれないな~なんて
感傷にひたっていたら。

友人からの受け売りですが、
お役に立っているようでよかったデス。

やっぱりsoukichiさんちの子だと
おいしいものが食べられて
いいなあ。と、
思いつつ。

今日は雪にならなくて
ちょっぴり残念な気もするけど
寒くなってるので
風邪など気をつけてくださいね~!

投稿: あたしベイベー | 2013年12月19日 (木) 13:02

あたしベイベーさん、やっほう!
元気してますか?

まあ、わたしの父はもともとボケた人というか、変わった人だったの。
わたしが小学生だったか中学生のころだったか忘れたけど、TVの『刑事コロンボ』をじーっと見てたと思ったら「しかしこの俳優さんはすごいな!」と感心するから何かと思ったら「日本語がものすごくうまい」って。
吹き替えだっちゅーの! みたいな。
そんな話ばかりですよ。
だから父がいつからこんなにボケたのか考えてみてもよくわからない。
ただ最近その進み方がひどいのはわかる。
年をとるにつれて頑なに、頑固に、そして自己中心的になっているのが悲しいです。

でもってナポリタンの味付けのコツは助かってますよ。
カレー粉を味に反映しない程度に入れると、ほんとにレストランで食べるような味になる。入れるの入れないのとじゃ大違い。
料理ってそんなちょっとのコツが大事なんだろうなあ。
私は自分がまずいもの食べたくないからごはんはおいしいと思うし、子どもに対して理解もあるからまあまあいい親なんじゃないかと思うけど、これでもっと経済力があればって感じですね。

あ、それから、あたしベイベーさんのことも忘れてないよ。
ただノコギリを使える場所がなくって・・・・、って、なんのことやらですね。
まあ、もちっと待ってて。


投稿: soukichi | 2013年12月19日 (木) 23:44

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