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2013年10月22日 (火)

初冬の香り

13kikugohan

古い一軒家に住んでいたころ、晩秋ともなると隙間風が寒いので夜は雨戸を

立てて寝ていて、朝おきて立て付けの悪い雨戸をゴトゴトいわせながらやっと

の思いであけて裸足で縁台に出ると、きりっと冷えた大気のなかにほのかに

菊の香りがして、それが冬のはじまりだった。

今日、朝早くHさんの家に母のニットを届けに行って、菊ごはんをいただいて

帰って来た。彼女は私が持って行ったニットを喜んでぜんぶもらってくれた。

私が思った通り、母が編んだセーターやカーディガンはサイズはもちろん、色

やデザインの感じも彼女にぴったりだった。Hさんが、ほんとうにこれぜんぶ

私がもらっちゃっていいの? というから、そうしていただけるとありがたいの

嫌じゃなかったら、と私はいった。気を利かせてどこかに散歩に出かけてしま

ったらしい彼女の旦那さんは、もらうなんて申し訳ないから買ってあげなさい

といったそうだけど、とんでもない。箪笥の中にただしまっておくだけでも経年

劣化してしまう手編みのセーターが彼女のもとでまた活用してもらえるならそ

れ以上のことってない。それだけでじゅうぶん。

家に帰って、鰹節で濃いお出汁をとってタケノコとがんもどきと水菜の簡単な

煮物とお味噌汁を作り、菊ごはんを最近じゃ滅多におでましにならないとって

おきの夕暮れ四方皿に盛ったら素敵なお昼ごはんになった。

一見、ごく簡単なチラシ寿司のように見えるこの菊ごはんが、びっくりするくら

いおいしいのだ。ごはんに混ぜられているのは菊とちりめんじゃことゴマと生

姜の千切り。それに大葉の千切りと刻み海苔をかけて。

それで何故こんなにおいしいのだろうと思うけれど、いいお米を使っていると

いうことはあるにしても、味付けが絶妙なのだ。それに風味はすれど入って

いるかいないかわからないほど微細に切られた生姜もキー。彼女はこれを

作るときは庖丁を研ぐことから始めるといっていたっけ。

彼女は声も大きいし思ったことをはっきりいう人だし、私の母と同様、太っ腹

の姉御肌のように見えるけれど、こんなところに彼女の繊細さがあるようだ。

今日、彼女の邸宅のオープンキッチンのカウンターでお茶をいただきながら

聞いた、胃ろうにしてから10年寝たきりだった姑を看取った話にしても、一

見何不自由ない裕福なマダムに見える彼女からは想像もつかないような苦

労だった。人は見かけによらない。そしてこれはいつも思うことだけれど、お

母さんとなってしまった人は、とても優しい。

いつかと同じように息子はうまいうまいといって食べた。

私もいまではいちおうベテラン主婦の部類に入ると思うのだけれど、懐の深

さの違いを感じてしまった今日。明日は二十四節気の霜降。

家を出るときは彼女の家からほど近い花屋に寄って帰ろうと思っていたけど

少々薄着で出てきたせいもあって肌寒く、朝から頭痛もしていたので自転車

飛ばしてまっすぐ帰った。

13nimono

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