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2013年9月27日 (金)

Mysterious night@上町63

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昨日は午前中、JAZZヴォーカリストの翠さんから思いがけないお誘いがあって

急きょ夜から馬車道にでかけた。

馬車道といえばいわずと知れた上町63。

昨日のメンバーは滝野 聡(gt)、萬 恭隆(b)、江藤良人(ds) の3人。

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席に着くなりマスターに「やっとですね」といわれて、「へ?」(なんで知ってるの)

と思う。実はもうずいぶん前から滝野さんがここで演っていることを知っていて

いちど聴きに来たかったのだけれど勇気がなかった。JAZZバーに行くのに勇

気がいるのか? いる。私の場合は。ここはとても小さな箱で、ミュージシャン

とも至近距離、すごくインティメートな空間だから、必然的に音楽と対峙するこ

とになる。それで勇気がいるのです。とくに滝野聡さんと江藤さんというこの組

み合わせ。昨日も翠ちゃんが一緒じゃなければ行けなかったかもしれない。

でも今日はできるだけよけいなことははぶいて言葉少なにいこう。

ファーストステージ、まずびっくりしたのは滝野さんがMCをやったこと。

リード楽器だからとうぜんといえばとうぜんなのだけど、いままでステージで滝

野さんが話すのをまったく聞いたことがなかったから。すごく律義できちんとし

た話し方でした。

以下、私の記憶が間違ってないことを祈る、セットリスト。


1st 

 1.バナナチップス/デクスター・ゴードン 

 2.Giraffe

 3.I Remember You 

 4.レジ・ブルース(・・・と聞こえたけれど、違うかもしれない)

2st 

 1.シモーネ 

 2.In Your Own Sweet Way/Dave Brubeck 

 3.Stella By Starlight/Victor Young 

 4.Pent Up House/Sonny Rollins



簡単に私の感想を書くと、ファーストセットでは2曲目の『ジラフ』という曲がすご

くよくて印象的だった、3拍子の曲。私はこの手の三拍子から変速の曲に弱い。

それから『I Remember You』。

セカンドでは『シモーネ』と『In Your Own Sweet Way』。

ジラフとシモーネは際立ってよかったからこれは滝野さんのオリジナルかもしれ

ないと思いながら聴いた。

滝野さんのギターを言葉で表現するのはとてもとても難しいのだけれど、この日

の印象を無理に言葉にするなら、暗いトーンのなかにすごく都会的なセンスがあ

って、寡黙でありながら歌心がある。無駄に弾きすぎない、間というか、弾いてな

いときの聞こえてない音の連なりまで大事にしているギター。

昨日はなぜか、滝野さんがプレイするのを見ながら、ギターって我慢強くなきゃ

できない楽器なんじゃないかと思った。

我慢強く自分の歌を歌う、というか。

じわじわと静かに上りつめてゆく青い炎。

そんなギター。

そして、今まで書こう書こうと思いながらいつも書き忘れていたのだけれど、ここ

上町63のよいところは、まるで自分のリスニングルームみたいな箱だってこと

です。自分のリスニングルームにいるみたいに一切の雑事・雑念に邪魔される

ことなく、他人を気にすることなく、音だけに集中できる。そしてその音源がCD

でもレコードでもなく、目の前で繰り広げられる生演奏であるという、贅沢。

贅沢といえば、ここでのブッキングは全てマスターの佐々木さんの人選によって

成立したものだというから、そんな贅沢ってあるでしょうか。まさにここでしか聴け

ない、他ではほとんどありえないような、ある種、夢の組み合わせだったりするわ

けで、これは考えるとすごいことです。いつも息子と、JAZZバーなんておよそ儲か

らない、心底好きじゃないとやれない商売だと話しているんだけど、息子が何か

で見た記事によれば、「JAZZバーを長く続けていく秘訣はなんですか」と聞かれ

た老舗JAZZバーのオーナーは「貧乏に耐えること」と一言こたえたそうで、そん

な苦しい経営のなかで上町のオーナーが続けていられるのは、上述したような

自らブッキングしたミュージシャンたちによる至福の瞬間があるからなのかなあ

と思ったりする。そんな至福の瞬間を耳を凝らして聴くために、余計なものは全

てとっぱらっちゃったのが上町63、という気がします。

前から翠ちゃんには、上町って、あの空間でリラックスできればすごく集中して

音を聴けるいいライブハウスだと思うよ、といわれていたのだけれど、最近よう

やく私にもそれがわかってきました。それまでは私は上町63ってミュージシャン

と近すぎて、ストイックな空間過ぎて緊張して疲れる、と思っていたので。

そしてもうひとつの特徴は音の聴こえかた。

ここの音の聴こえかた・響きかたはプロの耳からしてもすごくいいのだという。

昨日、滝野さんはとても微細な音にまで神経を使って弾いていたのだけれど、

ああいう弾き方がどこででもできるとは思わない。客が飲んだり食べたり話し

たりしている空間ではもっと大きな音で鳴らさなきゃならないだろうし、その微

細な音がきれいに鳴る、聴き手にも聴きとることができる静かな箱ならではの

演奏なのじゃないかと思いました。

その繊細な音世界を壊すことなく、添うように叩ける江藤さんの繊細さと巧さ。

そんな二人を前に緊張しないかなと思いきや、すごくリラックスして集中した音

を紡ぎだしていたベースの萬 恭隆さん。

まるで暗い湖面に映るたまゆらな光の揺れを凝視めるような、ミステリアスで

濃密な夜。

そんなわけで、昨日は午前中に友達からメールをもらったことで思いがけなく

友達にも会えたし、思いがけなく滝野さんの演奏も聴けたし、いい日だった。

好きな花屋であれ本屋であれ自然食品屋であれJAZZバーであれ、好きで無く

なってもらいたくないと思ったら通い続けるしかないから、私も夜の往復3時間

はキツイぜ、とかいってないで上町63に行こう! と思ったのでした。

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