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2013年7月20日 (土)

スカビオーサ

13a

6時に起きて窓をあけると高原の朝のように爽やかだった。

爽やかな夏空。

でも昨夜は疲れているのになかなか寝つけず、夜中にけっこう長い地震があったせい

で私は寝不足でひどく眠かった。これじゃあ今日はまともに泳げそうにない、と思いな

がらいつものように精油を焚き、お湯を沸かし、娘の朝食を作って1人分の珈琲を入

れた。娘を玄関で送りだしてしまうと、外は気持ちよく晴れていたからもったいないよう

だったけれど眠さに負けて絨毯の上にクッションを3つ並べてふたたび眠った。

夢を見たのは目覚める直前だった。

夢の中で、私はここじゃないどこか高層マンションの部屋にいて、時刻はちょうど日の

暮れだった。徐々に暗くなりはじめた部屋のなかには父もいて、どうやら二人でソファ

によりかかってくつろいでいるようだった。目の前にも大きな窓、右手にも大きな窓が

あって、右の窓からは遠く海が見え、海から流れ込むかたちで川がこちらに向けて直

角に流れているのが見えた。私たちの視線の先ではちょうど夕日が沈もうとするとこ

ろで、景色はあたりいちめん紫の光に包まれ、そのなかでぎらぎらと閃光を放つ夕日

と、夕日に照らされてキラキラと光るさざ波だけが黄色で、そのふたつが強烈なコント

ラストでもって迫り、この世のものとも思えない美しさだった。

まるでゴッホの絵みたいだなあ! と思ったときだ。

突然、パタパタと大粒の雨が目の前の大きな窓を打ちはじめた。

その瞬間、私の頭には「洗濯物!」というのが浮かんだのだが、父も同じように思った

のだろうか、それまで静かに景色を眺めていたのが弾かれたように立ちあがると、激

しく動揺した様子でおろおろと部屋のなかを徘徊しはじめた。そのときもう部屋のなか

は暗くなっていて、その暗い部屋のなかを妙な動きをする父の顔がわずかな光で照ら

されるのを見たとき、こんどは私のこころに衝撃が走った。父はおろおろと徘徊しなが

ら頬にだあだあと涙を流していたのだ。それまで父の泣くところなんぞついぞ見たこと

のなかった私は、驚いて思わず父の手を取りながら「父、どうしたの!」と大声で聞くと

父は子どものように泣きながら「この時間はいつも1人でいるからぁ・・・」といった。

私は父の手を握ったまま「だいじょうぶだよ、だいじょうぶだよ、ここは私の家だから」

といいながら、子どものようにわけがわからなくなってしまった父が可哀相で可哀相で

心臓がどきどきしながら目が覚めた。

近くにあった携帯を見たら娘を送りだしてから1時間40分が過ぎていた。

変な時間に変なところで寝たりしたからふだん気になっていることや不安がいろいろ

あわさってこんな夢を見たんだ、と覚めた頭で思ったけれど、ゴッホの絵のように強烈

な夕日の色と激しい父の混乱ぶりが頭に焼きついてしばし離れなかった。

落ち着くためにキッチンでふたたびお湯を沸かして息子を起こして朝食にした。

食卓では、昨日はぎゅっと詰まって小さな太陽みたいだったスカビオーサがふわふわ

と開きはじめていて。



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