Petit Point
あなたは一見、脆弱そうに見えて実はとっても強い人だからこんなことは思わないか
もしれないけれど、私はときどき何もかもが嫌になってしまう。いままで自分がこの目
で見て信じてきたものがまったく意味のない俗っぽいもののようにさえ見えて、なんだ
かひどくばかばかしく白けた気分で、自分の目さえ節穴だったように思えて。
おなじ1人の人間から時を経てなんども傷つけられる。
当の本人の厚顔無恥ともいえる有頂天をよそに。
そんなことで傷つく弱い自分も嫌。
そんなとき見た速水御舟の『名樹散椿』は凄かったな。
子どものころから『西洋かぶれ』と呼ばれた私が日本画にあんなに打たれることって
滅多にない。
それからまた編み物をはじめて、なんていうことなしに近くにいた娘に「スプートニクの
恋人を貸して」といったら、今朝、私の机の上に置いてあった。
それを開いてびっくりした。そして懐かしかった。
いつか吉次さんにもらった桜の花が栞にしてあったから。
この何気ない鉛筆の線書きを見ても、まんなかのいろんな色のてんてんを見ても吉次
さんのピュアさがわかる。
これをもらったときもたしか私はちょっと元気がなかったんだと思う。
たぶん、疲れた顔をしてた私に吉次さんはこの花を渡して「ほら、花が咲くんだよ!
春はすぐに来るよ!」といってくれたのだった。
そのことを思いだしたらまた光がキラキラしだしたみたいだった。
小さな不意打ち。
こういうのってささやかだけど日々の小さな救いじゃないかな。
そして人のこころにそんな魔法がかけられる人こそ真のクリエイターだと思う。
なんだかまた吉次さんに会いたくなった。
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