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2013年3月 1日 (金)

春一番

13haruichiban

朝早く起きたのに、バタバタと家じゅうの掃除をしていたら時間がなくなって今朝は珈

琲を味わう暇もなく、あわててマフィンをひとつだけ食べて、仕事の電話が鳴っている

のも無視して駅まで走った。予定通りの電車に乗ってホッとしたのも束の間、約束の

時間に駅の改札に着いてみれば、いつもは私と同じ電車かひとつ前の電車で来てい

る父の姿がない。

こんなことは初めてなので、もしやうっかり忘れたか、それともついにボケたかと心配

になってすぐに返事がくるわけもない妹にメールをしながら待っていたら、1本後の電

車で父がいつものようにのろのろとおぼつかない足取りでやってきた。なんでも出が

けに鳴った電話に出ていたら遅くなったと、ひどくのんきな口調でいう。

今日は先週、うっかり父と妹がすっぽかした父の診察の日。

父の病院の日はなぜか雨になることが多くて、今日は晴れて暖かくてよかったと思え

ばものすごく風が強い。そうじゃなくても父は歩くのが遅いのに、時間に遅れてきても

し受付に間に合わなかったら、仕事を残して出てきた私の今日が無駄になるから、と

にかく急いで歩いてというものの、まだ行きだというのに父は前のめりのいまにも転び

そうな前傾姿勢で、よたよたと歩く。今日は花粉の飛散量が多いうえに砂混じりの強

風が吹き荒れているというのに、ぽけっと口を開けたまま。その呆けたような顔を見て

いると思わず「口は閉める。ウイルスが入る」といってしまう。けっきょく、病院を目の

前にしてもう5分前、というところで父から診察券を奪うようにして私が病院の受付機

まで走って、なんとかぎりぎりセーフで間に合った。走っているとき目に何かが飛び込

んできて、左目がおかしくなってしまった。

この病院は一度予約した診察時間に来ないと再予約はできないシステムなのだそう

で、予約外診察につき時間の入ってない受付票を持って2階に行くと、今日もうんざり

するほど大量の患者であふれている。毎度のことだけどこの景色は気が滅入る。今

日はマスクをしてうるつもりでいたのに朝あわてて忘れてきてしまった。

こうなるともうどれだけ待たされるかわからないから、下で水を買って、父にはどうせ

すぐには順番は回ってこないからカバンをおろしてくつろいで待ってたほうがいいよ、

という。30分が過ぎ40分が過ぎ、お腹はぎゅうぎゅう鳴るし左目はごろごろして涙が

出るから私は持ってきた本も読めない。しだいに父がまたやきもきしだしてカバンの

中から何かを出したり入れたりしはじめる。電光掲示板と私の顔を交互に見ながら

ついに「もう1時間も待っているのに」というから、しょうがないよ今日はビリなんだか

ら、先週すっぽかした自分が悪いのよ、といえば、自分のことを棚に上げて妹のせい

にするだ。まったく人まかせで困ったじいさんだ。

そうこうするうちにやっと掲示板に番号が出て、診察室の前でさらに待ち、診察はわず

か数分で終了。結果はCT画像、血液検査ともに問題なし。で、また3ヶ月後にCTス

キャンとその結果を聞くための診察だ。限りないエンドレス ・・・・・・

病院で会計が終わるころには私は空腹のピークで、「何かおいしいランチでもゴチす

るから食べて帰ろう」というと貧乏症の父はまたもや「おとうさんはお腹が空いてない」

という。このあたりで私もいささか限界がきて、どうしていつもそう自分のことしか考え

られないのといってみるけど、父にはまったく無駄なことだった。帰りも強風のなかゴ

ロゴロする目を気にしながら駅まで歩いて、父を改札まで送ったら自分はどこかに食

事に行くつもりだったけど、改札まで行ったらもうその気力も萎えて同じ電車に乗って

帰ってきた。電車に乗ったら、西武池袋線は突風のため全線運行を見合わせている

とアナウンスが入った。電車が止まってしまうほどの突風って、凄すぎる。父はまたい

つもの壊れたテープレコーダーのように聞き飽きたことを喋り続け、「こんどはお彼岸

にお墓参りだね」といったけれど、私は目をつぶったまま返事もしなかった。父が何か

いって私が返事もしなかったことなんて初めてじゃないだろうか。

家に帰って息子に「今日は終始、不機嫌でした」といったら「そうなの?」と聞き返すか

ら、「父が、ではなくて私がです」と答えた。

子供たちにはいつもおじいちゃんには優しくするようにいっているし、私もいつだって

父には優しくしているつもりだけれど、私だってたまには不機嫌になることもあるんだ

と思った。

ゴロゴロする目は帰りに薬局で買った目薬をさしたら充血はしているけれどゴロゴロ

は治った。そのとき駅前で見た強風に吹き飛ばされそうになっている老人の姿が気

になって父に電話してみると、父はけろっとした様子で「心配ない」と答えた。実はこの

人って変なとこものすごく慎重な人だ。

今日の激しい風は春1番だったらしい。どうりで暖かい南風だったもの。

冬のあいだ、私のベランダの枯れ木のようだったバラの木からは元気な緑の葉っぱが

出てきて、少し穏やかになった風のなかで揺れていた。

先月、父と妹が病院をすっぽかして唯一よかったことは、次の次の検査が盛夏の8月

ではなく晩夏の9月にずれたことくらいだ。たいした違いじゃないかもしれないけれど。

それにしても3月始めの1日からなんだか疲れたなあ。

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