« 花のある日常 | トップページ | 今年のニューカマー »

2012年10月 3日 (水)

季節の温度

12glamis_castle_05

朝おきてベランダにでると、風がさやさや鳴っていた。

昨日の暑さが嘘のように、ひんやりしている。

頭痛。

それから電話が鳴って、朝1で聞いた障害支援課の女性の声は冷やかだった。

人の声というのにも、実に温度があるなと思った。

顔色の悪い、無機質な表情をした顔が目に浮かぶようだった。

彼女はこちらに有無をいわさぬ正確さで一方的に事務的に話し、私はもし何か自分

にミスがあったのならしかたがないと思って彼女の従順な部下のように黙ってそれを

聞いた。電話を切る前に彼女は「わたくし申し訳ありませんがこれから出張なので書

類は明日送らせていただきます」といった。それは私にはなんの関係もないことだっ

たけれど、この人も人に何かいわずにはいられない人なんだな、と思った。

初めて市役所に難病申請をしに行ったときは、彼女は快活によく喋る人だった。典型

的な『仕事ができる女』といった感じで、息子のかかった病気について良いことも悪い

ことも親切丁寧にいろいろ教えてくれた。自分自身も、また一緒に働いている男の同

僚も難病で苦しんでいる1人なのだといった。難病の息子を持つ私のことを励ましても

くれた。私にとって市役所は、病院、税務署、警察に次いでできればなるべく行きたく

ないところだったから、そんな親切な人たちがいる課でよかったと心底思った。

でも、2度めに行ったとき彼女はこちらがびっくりしてしまうほどまるで別人のように冷

淡だった。3度めに行ったときはまたよく喋ったけれども仕事の愚痴を聞かされた。

これも女性特有のことかもしれないけれど、すごく仕事にムラがある人だな、と思っ

た。病人相手の障害支援課の仕事がストレスの多い、とても大変な仕事なのは容易

に想像がつくけれど、しょせん市役所の窓口業務は一般の接客業とは違うってことだ

と思った。

私は百貨店勤務の販売員を経験して、何があろうと毎日にこにこコンスタントに働くこ

とを自分に叩きこんだ。それはともすると本当の自分がわからなくなってしまいそうな

ことではあったけれど、でもそのおかげで足もとからくずおれてしまいそうなときでも

人前ではしゃんとしていることができたし、その術を身につけられたのは結果的には

よかったと思う。人間、崩れ始めたらどんどん崩れてしまうから。

12evryn_04

電話を切った後、キッチンに行って電気のスイッチを入れた瞬間に電球が切れた。

食事を始めたら娘の態度を発端に諍いが起きた。

やっと息子との話し合いが終了して自分の部屋に行けば、迷い込んできた蜂がブンブ

ンいって飛んでいる。それは人の神経を逆撫でするには充分な脅威でもってしばらく

窓ガラスの間をうるさく飛び続けた。

駄目な日って、とことんこうだ。

つまり、障害支援課の女性が朝1で家に持ち込んだ波動はこれだ。

世の中にはあたりに毒を撒き散らしながら仕事をする人がいる。

充分に仕事もできて能力もあってもったいないと思うけど、仕事でもプライベートでもで

きるだけそういう人とはつきあいたくない。

12charlott_05

食卓で1人で鎮痛剤を飲もうかどうしようか考えながら珈琲を飲んでいて、まだパン屑

だらけの食卓にはさっき切ったばかりのバラが花瓶に入ってこちらを向いていて、花

の顔はものいわずに自分を慰めてくれているようで、一日の終わりに、悲しみにうちひ

しがれてもう誰とも口もききたくない、床に突っ伏すよりほか何もできない、というような

ときにもバラはいつも私のそばにあって、とても慰められたことを思い出した。

咲いているときも、咲いてないときも。

それは生きた人間の友達とも違う。

私がバラを友達というのはそういうこと。

午後遅く、もう降らないかと思っていたら雨が激しく降り出した。

以心伝心のようにRさんから電話がきた。

今日咲いたバラは上からグラミス・キャッスル、イヴリン、シャルロット。

|

« 花のある日常 | トップページ | 今年のニューカマー »

La vie en rose 」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 花のある日常 | トップページ | 今年のニューカマー »