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2012年8月 4日 (土)

イチジク

12ichijiku_01

好きな人からすると信じられないかもしれないけれど、今日初めてイチジクを買った。

イチジクというと思い出があって、あれはまだ小学生だったころ、川沿いの友達の家

に遊びに行ったとき、友達のお母さんが家の前にあったイチジクの木から熟したイチ

ジクを何個かもぎとると、私に「イチジク食べられる?」と聞いた。それまで私は一度

もイチジクを食べたことがなかったし、もぎとられたばかりのイチジクの茎からはミル

クのような、タンポポを折ったときと同じような白い液体が垂れていたから、私は即座

に首をふった。するとおばさんは「東京の人はイチジク食べないからねえ」といって、

台所でざっと洗ったイチジクを友達に渡して自分も食べながら、「おいしいのに」と念

を押すようにいった。それで私はイチジクを食べている友達に「おいしい?」と小さな

声で聞くと、友達は「おいしいよ。食べてみる?」といって半分ちぎったのをくれそうに

なったから、私はやっぱり断った。

家に帰って母にそのことを話すと「その人たち、どこの人?」と聞かれたけれど、私は

「知らない」と答えた。子どもは友達になるのにどこから来たかなんて全然気にしない

ものだ。ただそれ以来、私の頭のなかには『東京の人はイチジクを食べない』という

言葉がインプットされた。実際、私の母は大の果物好きでライチでもパッション・フル

ーツでもなんでも食べたけれど、イチジクが食卓に出てくることはついぞなかった。

そしてイチジクを一度も食べたことがないまま大人になって、ふたたび目の前で生の

イチジクをぱくぱく食べる人を見たのが数年前の秋のこと。

ブログで知り合った陶芸家さんのオフ会でなんと静岡まで行って、窯で楽焼きが焼け

るのを待っているあいだ集まった人それぞれ好きに飲んだり食べたりしていたのだけ

れど、そのときビニールパックに入った熟したイチジクを見つけて、「うわあ、おいしそ

うなイチジク! これ食べていいの?」といったのがbleちゃんだった。

「いいよ。それ無農薬のイチジクだからきっとすごくおいしいよ!」と誰かが答えたのを

受けてbleちゃん、イチジクを洗いもしないでハンカチだったか洋服だったかでゴシゴシ

っとやって、ムキムキっとふたつに割って、皮のままバクバク食べ始めた。

そのおいしそうなこと!

あっという間に2つか3つ食べて、あまりにおいしそうに食べるで近くで見惚れていた

私にも「食べます? 私、ほっとかれると、このままぜんぶ食べちゃいそう」といった。

でもやっぱり私は食べなかった。

ble ちゃんがイチジクを食べる姿は本当においしそうだったけれど、それでも私には

まだ手が出せない何かがイチジクにはあったのだった。

ただbleちゃんは私とは正反対の女性らしい身体つきをしたナイスバディーの健康的

な女の子で、女の私から見ても男好きしそうなチャーミングな人だったので、その彼

女がおいしそうにイチジクを頬張る姿は強力に記憶にインプットされた。

昨日、プールで泳いだ帰りにスーパーに寄って、突然イチジクを買ってしまった理由

は私にもわからない。ただ『イチジクの王国 愛知』というシールが目に入ったのと、

明らかに完熟しているとわかる、この鮮やかな色のせいだろうか。それと先日そら屋

さんで買ったドライイチジクがとてもおいしかったのと。

家に帰ってさっそく洗って冷蔵庫で少しのあいだ冷やして、遅いお昼の後に食べてみ

た。家では食にはいちばん保守的な息子は案の定「ぼくは食べない」といった。彼は

いつでも初めて食べるものについては私や娘が食べるのをじーっと観察していて、そ

のあと自分が食べるか食べないかを決めるのだ。

イチジクのパックに入っていた『イチジクの剝きかた』に従って私が皮を剥いてゆくと

「なにそれ。バニラアイスみたい!」と息子がいった。たしかに皮を剥いたイチジクは

バニラアイスみたいだった。でも、それからは?

う~ん、よくわかりませんでした。

ほかの果物みたいに際立ったいい香りがするわけじゃなし、特徴的な味があるわけで

もなく、食感にいたってはもったりしていて、とてもおいしいとはいえない。ある種、子ど

ものときに想像したとおり。

そばで私の顔を見ていた息子は、「やーっぱり、食べなくてよかった!」ですと。

そういわれると口惜しいような残念な気もしないじゃないけど。

大体において食の好みなんていうのは幼児体験によるところがものすごく大きいのだ

と思う。大人になって人から、砂糖の入った麦茶や砂糖を入れて食べるトコロテンが

気持ち悪いといわれてびっくりしたのと同じように。

・・・・・・ というわけで、3つ余ったイチジクはコンポートにでもしてみますか。

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コメント

あ~、もったいない!

昔、うちの庭にあったので、もいで食べていました。

つぶつぶ感とほのかに甘いところが好きです。
ジューシーなところも好きです。
今日は2つ一度に食べました。

投稿: elm | 2012年8月 6日 (月) 03:07

はい。
わたくしです(*^^*)
ブログの記事タイトルの時点でそそられ
写真みて生唾!(笑)

投稿: ble | 2012年8月 6日 (月) 20:07

elmさま、
ほらね、やっぱりそういう人っているのよね(^-^)
でもelmさん、食の好みなんて幼児体験に尽きるって!
子どものころに庭でもいで食べた経験でもなけりゃ・・・・・・
私が子どものころはイチジクなんて東京の八百屋さんじゃ売ってなかったし、イチジクもカキもわざわざ買って食べるような果物じゃなかった気がする。
わざわざ買って食べるならもっとおいしい果物がいくらでもある!
・・・・・・ というわけで私はパス。
3個残ったイチジクはいまコンポートとなって冷蔵庫で冷えてます。
明日あたりお目にかけますです。
はたしておいしいか?!!!

投稿: soukichi | 2012年8月 8日 (水) 23:35

bleちゃん、
そう、今回わたしがイチジクなんて買ってしまったのはたぶんにあなたのせいである。
数年前のあのシーンは私にとっては衝撃映像でございました。
美しく、グラマーな女はイチジクが好きなのか? とかとか?

でも、トライしたけど私はやっぱり駄目ですた。
ドライイチジクだったらおいしいと思うんですけどねー

投稿: soukichi | 2012年8月 8日 (水) 23:40

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