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2012年8月23日 (木)

三日月の夜、珈琲を買いに。

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水曜の朝、木曜の猫は、あ! と思った。

まずい。明日の朝で珈琲豆がなくなる!

なんたってこの猛烈な暑さのなかでさえ熱い珈琲を飲んでいる木曜の猫一家なのだ。

おまけに土居珈琲の豆を何年も愛用し続けているせいで、珈琲に関してはすっかり

違いのわかる猫であるからして、豆ならなんでもいいってわけじゃない。

それで今日、木曜の猫は仕事が終わるとそそくさと珈琲を買いに家を出た。

行くのはもちろん、顔の濃いトムネコのところだ。

あそこには猫の好きなビターコーヒーがあるのだ。

折しも空には安らかに猫が眠っているような三日月が。

そしてはじめて今日は日のあるうちに公園までたどりついた。

池では人間の大人の男が1人でスワンに乗っていた。(麗しくないので割愛。)

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暮れなずむ空と月を眺めるのによさそうな岸辺のベンチである。

大きな柳の木がちょっとお化けみたいだけど。

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木曜の猫は噴水を眺めるのも好きだ。

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木立のフレームのなかに見える三日月。

それにしてもいつも木や空や月ばかり見ている猫だ。

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このドアを明るいうちに撮るのも今日がはじめて。

よく見るとなにやらいろいろ書いてあって、なかなか几帳面で親切なトムネコである。

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静かにドアをあけると「いらっしゃいませ!」というトムネコの元気な声が聞こえて濃い

顔がチラッと見えた。今日は仕事帰りのサラリーマンらしい大人の男が2人、右の席

にいたので木曜の猫は左の奥の席に座った。

今日、店のなかに入ったときにかかっていたレコードはこれである。

  After Hours

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そして、その次にかかったのはなんだっただろう。

こんなジャズでこんなレコードがあるのかというくらい静かな、静かすぎるほど静かな

対話みたいな音楽で、思わず木曜の猫は追想に耽り、つまらないことを考えた。

つまらないこととは考えてもしょうがないこと。

もしあのときああせずにこうしていたらいまごろどうしていただろう、というような類のこ

とだ。いままでだって散々考えたことだし、いまさら考えたってほんとにしょうがない。

でも猫の頭も人間の頭と同様、合理的にばかりはできていないのだ。猫はサカナの

みにて生きるにあらず。どうもここに来ると木曜の猫はぼんやりし過ぎる。

たしかにここは誰かと来てお喋りするよりは1人で来てぼんやりするのにふさわしいと

ころだけど、大人の男2人は無言のまま、時折りアイスコーヒーらしきものをストロー

で吸うズズっという音だけが妙に大きく響く。いったい男2人で何が楽しいのかしらん。

古いJAZZマニア?

ぼーっとしながら苦い珈琲を飲み、須賀敦子のエッセイをひとつふたつ読んだらあっ

という間に1時間が過ぎた。いったいいつから来ていたものか、大人の男2人はさっき

やっと帰って行った。あれだけゆっくりまったりして酒代、もとい珈琲代が600円とは

安いものだ。木曜の猫も本をパタンと閉じて席を立った。

「トムネコビターを200ください。」

それからトムネコとは少し話した。今日はぼんやりし過ぎたせいで木曜の猫は左脳

がすっかりぶっ飛んじまって、何やらおぼつかない会話であった。おまけに少々、挙

動不審のところも見せてしまった。あーあ。そんなわけなのでどういう流れでそういう

話になったのかはわからないが、トムネコは「僕にだって個人的な悩みはあります」

といった。えっ! あるんですか? といったら「そりゃあ、もう悩みのない若い時代

は終わりましたから。もう30も過ぎたし」といった。木曜の猫には人の年も猫の年も

わからないが、意外と若いトムネコなのだった。

そのときかかっていたのはこれだ。


  Thelonious Monk In Action


セロニアス。

まるで昨日の続きみたい。

挙動不審を演じてからそそくさと外に出た木曜の猫は、暗い木立のあいだから見える

ピカピカの大きな三日月を左手にずっと見ながら、解決するには知力と精神力と体力

を要する悩みって、いったいどんな悩みなんだろう? と思った。

肩にさげた猫柄のエコバックからは歩くたびに珈琲豆のいい匂いがした。

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このあいだ座ったときには小さなカボチャが置いてあったところに、今日はビクターの

犬がちょこんと首をかしげて座っていた。

この犬、おばあちゃんの家に大きいのがあったな。

たぶんレコードマニアの叔父のだ。

懐かしい。

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