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2012年7月21日 (土)

クスノキ

12kusunoki

昨日、久しぶりに遠出して疲れたせいか今日も思いっきり寝坊した。起きたら11時。

プールの日は泳ぐ2時間前に食事をすませておかなきゃならないのにぜんぜん時間

がない! おまけに寝過ぎで頭痛。片頭痛と肩こりに効くというので買った精油を焚い

てみるけどバジル、すごく変な匂い。外は今日もひどい雨だ。家から20分近くプール

バッグと傘を持って歩いて行かなければならない。ふぅ。こないだから私は左脚の調

子が悪く、またもや2週間ぶりのプールで足がつりそうだ。

でも行けない理由を考えてるとあっという間にやめることになるから、シャワーも早々

に家を出る。いつものことながらアップはからだが重くて苦しかったけれど、終わって

みたらなんとかなった。今日のコーチは若い新人の女の子ながら1人1人よく見てい

て、今日はバッタの第2キックとクロールの左手と平の脚を直された。相変わらず私

はたいして泳げないのだけれど、このところ何かがちょっといい感じだ。10年過ぎて

やっと少しは力をぬいて楽に泳げるようになってきたのだろうか。

行きは雨のなか歩いて行くだけでも疲れたのに、帰りは雨もやんで涼しい風を心地

よく感じながら歩く。スイミングの行きと帰りではからだの軽さが天と地ほどに違う。

ブリヂストンの工場脇の大きな樹木たちは府中街道の拡張工事のせいで半分ほどが

根こそぎ切られ、残った道路脇の樹もずいぶん切られて、かわいそうにトルソみたい

なかたちになってしまったけれど、それでも大きなクスノキを見上げると清々しい息吹

を感じる。できることならこんな大きな樹の近くで暮らしたい。

プールの日は家に帰ったらもう外には出たくないのでそのまま買い物をして、重い荷

物をぶら下げて近所まで来たら、いつもパンダが出てくる辺りで一軒家から男の子が

出てきた。最近は聞こえないけど前はよく2階の部屋からドラムを叩く音が聞こえてき

た家だ。それで私、何を思ったのかプール帰りでほとんどノーメークで髪も洗いっぱな

しのバサバサだというのにその男の子に声をかけた。

「あの、すみません。前によく2階でドラムを叩いてた方ですか?」

私が聞くと、いきなり声をかけたにもかかわらずその青年は嫌そうな顔もせず、律儀

にこちらに向き直って「はい。昔はよくドラムの練習をしてました」といった。ちょっと覇

気はないけれど、大人しくて素直そうな青年。よく2階のベランダでホタル族をしてい

るのを見かけたときは、暗かったし野球帽をかぶって小太りの背格好にてっきり30

過ぎのおじさんかと思ったけれど、うちの息子と歳はたいして変わらなそうだ。

「昔? ・・・・・・ ってことはもうやめちゃったってことですか?」

私が驚いて聞き返すと、「はい。もうやめました」とあっさりいう。思わず「なんで?」と

いってしまってから、彼が居心地悪そうにいいよどんでいるのを見て「ごめん。そうだ

よね。そんなこと、いいにくいよね」といったら、あわてて「いえ。あの。なんというか、

楽器に向きあう気力がなくなってしまったもので」といった。

気力、その若さで? と思ったけれど、前からちょっとそうじゃないかと思ってたとおり

もしかするとこの人やっぱり引きこもりちゃんなのかもしれない。

「そうなの。残念だね。実はうちの息子もジャズギターやってて、よくここ通ると真夏の

くっそ暑いときでもめちゃめちゃ練習してるのが聞こえたから、家で息子に『今日も練

習してたぞ!』なんていってたのに」といったら、青年なんだかちょっと明るい目をして

「ぼくも最初はギターをやってたんです。中学からジャズギターをやってて、それで途

中でドラムも面白そうだと思って興味を持って。あの、荒巻茂生って知ってますか?」

と彼の口からとつぜん意外な名前が出てきたのでこっちのほうがびっくりして「知って

るよ。大好きだよ。あのビーストみたいな」といったら、青年ますます瞳を輝かせて嬉

しそうに「そう、野獣みたいな。でも、すごいあったかい音楽をやる人で、熱い情熱と

か涙とか・・・・・・。一緒に演奏してるとこっちまで元気になっちゃうような人で、ぼく、

その荒巻さんが駅の向こうにあるスタジオで週に1回セッションしてるときに行って教

えてもらってたんです」というから、私、ますますびっくりしちゃった。

まさか、この人から荒巻さんの名前が出てくるとは思わなかったし、たまたま道端で

声をかけた若い男の子の口から『熱い情熱とか涙とか』なんて素敵な言葉が聞ける

とは思ってもみなかったから。なんだこの子、気力が失せたとかいってるけど、実は

話せるヤツなんじゃん、と思ったのだった。「それでドラムセットは?」と聞くと「ぼくの

使ってるのはデジタルドラムで ・・・」というから、「まだあるの?」と聞けば「まだ置い

てあります」という。

「それならまた始めたらいいじゃない。もったいないよ。せっかくそこまでやったのに。

気力なんてやってるうちに、そのうちまた湧いてくるよ。そんなに好きなんだから」と

いったら、最初に話しかけたときよりずっとしっかりした声で「そうですね」といった。

そして相変わらずかしこまった姿勢でまっすぐこちらを見て、「ジャズは大事です」と

いった。

それで私は自分の名前とすぐそこの住宅に住んでることをいって、「家が近いからい

つかうちの息子と一緒に近所のスタジオでセッションやったりできるかもしれないよ。

そのときはよろしくね」といって別れた。

実は書く都合上だいぶ会話をはしょったのだけれど、彼とはほんとはもっといろいろ

なことを話した。通りすがりの人とそんな風に話せるなんて、彼はまだそれほどこころ

が閉じてないんだな、と思ったし、それにちょっと大人しくて優しすぎる感じだけどいい

子だった。もしかすると親はそれなりにお金があって、1人息子がギターをやりたいド

ラムをやりたいというから買ってやったものの、実は音楽になどぜんぜん造詣がなく

て、家の中で音を出されるとウルサイだけだったのかもしれない。とくに父親のほうは

学生のころならいざ知らず、大学を出てもいっこうに就職もしないで一日じゅう家にい

る息子が疎ましく、息子は息子でそんな家で肩身の狭い思いをしてたのかもしれな

い。勝手な想像だけどよくありそうな話だ。

家に帰って遅いお昼を食べながらさっそく息子にその話をすると、息子もびっくりして

笑いながら「信じられない。この市で若い人に声かけて荒巻さんのこと知ってる確立

なんて3000分の1くらいだね!」といった。「ちょうどバンドのメンバー探してたんだし

荒巻さんに教えてもらってたドラマーなんていいじゃない。S、あの子を家から引きずり

出せ!」と私はいった。頭の中ではビートルズのDear Prudenceが流れていた。

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コメント

おもしろいね!バンドが出来ちゃうといいね。

投稿: jose | 2012年7月26日 (木) 20:04

joseさん、
そうなの、おかしいよね!
灯台もと暗し、っていうか。
ほんとにバンドができちゃうといいんだけど・・・・

投稿: soukichi | 2012年7月27日 (金) 23:18

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