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2012年1月17日 (火)

TVが嫌い

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子どものころから私は算数が苦手で、反対に父は算数が得意だった。

それで小学生のころは父に算数を教えてもらっていた。

難しい応用問題の宿題なんかたくさん出されたひには私はもうお手上げで、放り出し

てさっさと寝てしまいたいくらいだったけれど、父はどんなに夜遅くなっても私を解放し

てくれなかった。集合の宿題が出たときなど、自分の時代にはなかったその理論にす

っかりハマってしまって、わざわざ本屋で『集合のわかる本』なんていう本を買ってきて

しばらくひとりで勉強していたくらいだ。面白い、面白いと言っていた。そのころから私

は、数学ができる人と自分の頭の構造はどこかが根本的に違うんだと思っていた。

そんな昔のことを思い出して、父が病院で退屈しのぎにテレビばかり見ているのを見

てもう少し元気になったらやれるようにと『大人の10ます計算ミニドリル』というのを買

ってみた。父ならきっと面白がってくれるんじゃないかと思ったのと、ただただ受動的

にTVを見ているより、少しはこんなことでもやっていたほうがボケの進行を遅らせられ

るんじゃないかと思ったのだった。

でも驚いたことに、昨日この本を父に渡しながらその話をしたら、父はすっかり忘れて

しまっていた。自分が小学生の子どもに算数を教えていたことすら忘れてしまっていた

のだ。信じられない。私は脳の話が大好きなのだけれど、いったい年をとった人間の

脳というのはどうなっているんだろう。

父には、「そんな大事なこと忘れちゃだめだよ」と言った。

自分が何が得意だったかも忘れてしまうなんて。

その得意なものをこそ人生において大事に磨くべきだったのに。

逆にいうと、そんな自分の美点さえ忘れてこの人は自分の人生を生きてきたってこと

なのだ。なんだかなあ、と思う。

子どものころから母はよく私に、「おまえはうちの子のようじゃない」と言った。

母が私につけた『貴族乞食』というニックネーム通り、私が贅沢だということが理由らし

かったけれど、ときどき母は「あなたは本当はうちの子じゃないのよ。本当は橋の下か

ら拾ってきたの」なんて言った。それも当時の親の常套句で、いったいそんなことを言

われてショックな子どもが当時にだっていたのかどうか不明だけれど、この私といえば

そう言われて「そうだろう、そうだろう。私はもっとお金持ちの家の子どもで、何か事情

があって捨てられたのに違いない」なんて思っていた。

父が家に来てまだ2日めだけれど、今ますますそう思う。

私はやっぱりあの家の子どものようじゃなかった。

父は朝おきたらテレビ、昼までテレビ、夕方もテレビ、夜は食事が終わればテレビだ。

自分ではテレビはほとんど見ないとか言っていたのに。しかも我々に少しは遠慮して

これらしい。とにかくテレビテレビテレビ ・・・・・・

私があの家にいたくなかった理由のひとつがこれだったってことを今日はっきり思い

出した。いつもテレビがついている家。

別に高尚とかそんなんじゃない。私は年をとっても敬愛するドナルド・キーンみたいで

ありたい。そのためには脳トレだってする。

こうやって文章を書いているあいだもTVからはうるさい嬌声が聞こえてくる。

この環境じゃ、私は友人のメールに返事を書く気にも本を読む気にもなれない。

まいったな。

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コメント

TVの音のうるささは、我が家も同じです。まず朝起きたら、主人がTVのスイッチをオンに。消せば、長男が起きてきて、スイッチがオンに・・・延々そんな毎日が続いていて、TVを見てゆっくりした時間を過ごせてるってこの人達は思っているのだろうかと思います。
友人から、男の人はぼーっとする時間が必要だから、TV見て他に何もしない時間も許してあげてる方がいいよってことでした。
私にすればもったいない時間の使い方も彼らにとっては休息の時間かもとあきらめています。

投稿: ノブタ | 2012年1月18日 (水) 07:44

ノブタさん、
そう・・・ノブタさんちもそうですか。
なんでしょうね
でも、そう言ったら女の人にだって(ノブタさんにだって私にだって)ボーっとする時間は必要だと思うけど、それはうるさいTVを見ながらじゃないですよね。

TVが1日中ついてるってことでいうと実家ではその最たる日がお正月で、だから私はお正月って大嫌いでした。
元旦はあきらめて家族とTVの前にいても、2日には友達と街に出かけてた!
お正月の街は人がいなくて、開いてる店もまばらで静かで、なんだかとっても新鮮でした。どこに行ってもお琴の音が流れてるしね(^-^)

そうそう、大変言いにくかったけれど、父にはイヤホンをしてTVを見てもらうことにしました。ずっと病院ではそうだったし。
これでバラエティ番組のうるさい声とも演歌の流れるお茶の間ともおさらばです。
よかったー♪

投稿: soukichi | 2012年1月19日 (木) 21:55

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