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2012年1月 5日 (木)

個人的な記録・通院日記①

12nishi_shinjyuku

昨日不在だった主治医と話すために約束の時間に病院に行くと、父は待ち構えるよう

に病室の前で立っていた。私の顔を見るなり、昨日は同じ病室の人のいびきがひどく

てよく眠れなかったとか朝から何度も血をとられたとか手に刺した針がすごく痛いとか

病院の食事は味がなくて不味いとか、いろいろ泣き言を言う。まだオペの前だというの

にこれじゃ先が思いやられるなと思いながら、うんうんと話を聴く。それにくらべると母

はとても我慢強かった。オペの内容はもちろん、それ以前の度重なる生検もかなりの

苦痛をともなう過酷なものだったのに、こちらの心配をよそにほとんど泣き言を言うこ

ともなかった。よく女は男と違って子どもを出産する痛みに耐えられるようにできている

んだとか、そんな言い方で何でも片づけられてしまうけれど、本当にそれだけなんだろ

うか。女性は社会や家庭における男性とのつきあいのなかで、言ったってしかたのな

いことは言わないようになってしまうんだと思う。少なくとも私の場合はそうだ。

主治医である消化器内科の先生の説明はとてもわかりやすかった。

肝臓がんの治療にはいま主に3つの方法があり、そのそれぞれの具体的な方法と効

果、リスクと治癒率のパーセンテージ、そのなかでなぜ今回この方法を選んだかとい

う先生の考えを、小冊子の絵と図、父の肝臓のCT画像を使って理路整然とわかりや

すく、易しい言葉で説明してくれた。いままでにも何度か母の主治医である大病院の

外科医と話したことがあるけれど、その中でもダントツにわかりやすかった。それで私

はますますこの病院に好感を持った。逆に他人を介して話したことで、私はいままで

自分が思っていた以上に父がボケてしまっていたことを思い知らされた。

哀しいかな、年をとると人はボケる!

でも、それは私の友人の医者が言うように、哀しいことばかりじゃない。

こういう場合、多少なりとも本人の痛みを軽減してくれる。

医師の言うことがよく理解できなかったせいなのか、今回のオペをしてもガンが完全に

治るわけじゃないということに落胆したのか、あるいは私に何か腹を立てているのか、

わからなかったけれど病室に戻った父は少々不機嫌になり、冷淡な口調で私にさっさ

と帰るように言った。もちろん、そんなことは私は平気だったけれど。

私がもうずいぶん前からとても気になっているのは、父の手が異常に冷たいことだ。

からだが芯から、内臓からすっかり冷え切ってしまっているのではないか。

病院を出ると一気に疲れが襲ってきた。

昔ほどではないにしても、やっぱり医者と話をするのは緊張する。

それにしても病院というのはどうしてあんなに疲れるところなんだろうか。

短時間いるだけでもエネルギーを吸い取られる感じがする。

昨日も今日もお昼を食べ損ねて空腹だったけれどひとりでレストランに入る気にもな

れず、デパートの地下で子どもに甘いものでも買って帰ろうと伊勢丹に寄った帰りの

ことだ。いきなりけたたましいサイレンの音がして救急車が走ってきたと思ったら目の

前で止まった。すぐ前に人垣ができている。あ、このままだと通行止めされて直進でき

なくなるかも、と思ったら交通整理の人に前に通された。行きすぎる瞬間に見えたの

は石畳の路上に倒れた人。ほんの一瞬だったのに人間の感覚ってすごいもので、白

いシャツに黒のスーツを着た身なりのよい老紳士が横向きに目のあたりを押さえるよ

うにして倒れているのが見えた。その白髪の、髪のない頭頂部からは流れるほどでは

ないけれど血が出ていた。それはまるで、路を歩いていたら頭上から何か重たい物が

落ちてきて頭にぶつかり、脳震盪を起こして倒れたように見えたけれど、あたりには落

下物のようなものは見当たらなかった。まるで映画のワンシーンのようだった。瞬時に

私は「なんて可哀相に!」と思ったけれど立ち止まることはできなかった。

倒れていたのが老人だったせいもあって、電車に乗ってからもその光景をしばらく頭

の中で反芻した。正月早々、入院している自分の父。正月早々、路上で倒れて病院

に運ばれる老人。運が悪ければ彼はICU行きだ。

家に帰って珈琲をいれて伊勢丹で買ってきたカヌレを食べたら、一気に劇的睡魔が

襲ってきて、それから1時間ばかし眠ってしまった。カフェインはいつもこういう場合、

私にはまったく効力をなさない。

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コメント

なんと!父が12月より医者と相談していた心臓の痛みで1/5に救急搬送
→当直医の検査を拒み続け(相談していた医者では無い為)、説得に未明までかかり、やっと撮ったCTで心臓以外に意外なものがみつかってしまいました。酷い現実。

現在、父の顔色を見るとすこぶる調子よく、滑舌もよく、、、、
「諦めないワ」と思わせてくれます。
重要なこれからの検査、
高齢もあり、検査にすら耐えられるか?という体とは思えません。

久しぶりにお邪魔してお父上がオペ後、快方に向かわれているようす、元気づけられました。ありがとう。(*^-^)

投稿: kurodeme | 2012年1月11日 (水) 00:33

kurodemeさん、
それはお正月から大変でしたねぇ・・・
説得するのに未明までかかってしまったとは(^-^;
うちの父も頑固で人の好意をよせつけないところがあるけれど、男の人っていうのはどうしてこうも融通が効かない、というか、面倒な生き物なんでしょうね。
うちの父なんか、いまだに近所のかかりつけの医者にうるさく言われて健診なんて受けなければ、ガンなんて見つからずにすんだのに、と言ってますよ。もう、まいっちゃう。

kurodemeさんの場合もうちの場合も救いなのはまだ本人が比較的元気なことかな。
あとは本人が持ってる生命力を信じて、よくなることを祈るしかないね。
あと自己治癒力を上げることを本人の意思でしていかないとね。

kurodemeさんも疲弊してしまわないようにどうか気をつけてください。
ひとたび家族が病人になると先は長いです。
1年で最も寒い時期ですし、くれぐれもご自愛のほど。

投稿: soukichi | 2012年1月12日 (木) 22:56

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