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2012年1月29日 (日)

テレビなしの甘い生活

Kitamura_taro_2

読点がやたら多かったり、打ち方が

でたらめだったりする新聞を、毎朝

二時間、すみからすみまで読み

くたびれてしまうが、そうしないと気が休まらず

おまけに旧国電の駅まで、私鉄で行って

べつの新聞を二、三紙買いこむと

昼すぎまで、ひとり喫茶店にねばり

ゆっくり第一面から、ていねいにページをめくるが

いつものように、似たような内容の記事にうんざりし

それでも倦まずに、せっせと目を走らせ

たちまち午後が通り雨みたいに過ぎてしまう


どうしてこう新聞を読みたがるのか、ふしぎで

夕方には借りている部屋に戻り、庭の

ユキヤナギの陰にひそんでいるニヒルという名の猫を、ちっちっと呼び寄せ

暗くなってから、また読点だらけの夕刊に視線を上下させ

十分ほど歩いて、マーケット近くの喫茶店で

そこがとっている夕刊と、朝のスポーツ新聞をひろげ

芸能欄まで、目の舌でつぶさに味わうころには

さすがに裸眼の目、ふちが赤くなって

うっすら涙が浮かび、家に帰ってベッドに入ると

犬にまぎらわしいところがあるので、ファジーと名づけた猫が

毛布にもぐりこんでこようとして、こちらの鼻をなめ


そこでやっと、枕もとのランプをつけ

ラジオで定時ニュースと、FENのデイヴィッド・ボウイを聴いたあと

十年ほど前に出た『狂王ルートヴィヒ』を、いまごろ読み始めている


( 北村太郎詩集『すてきな人生』より、『テレビなしの甘い生活』 )

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今朝は風が強い。

各部屋についた通風口から、北風がぴゅうぴゅう入ってくる。

風が強いと陽射しがあっても体感気温は下がる。

ジイサンがストーブをひとり占めしているのでしかたなく窓際で太陽の光で背中をあっ

ためていると、冬の陽に照らされたこの本のタイトル、『すてきな人生』というのが目に

飛び込んできた。思わず手にとってパッと開いたページにあったのがこの詩だ。

神さまの啓示かと思って可笑しくなっちゃった。近くにいた息子に見せて笑った。

今日も朝からジイサンはテレビにしがみついている。

テレビを見ながらごはんを食べるとものの味がいくぶんわからなくなるんじゃないかと

思うのだけれど、どうなのかな?

でも、いまジイサンがいま見ているNHKの将棋・囲碁トーナメントはまだ許せる。

垂れ流しの情報をただただ口をポカンと開けて眺めているのと違って、まだ頭を使う

余地があるからね。

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コメント

私の父は、読書とTV。
まだ仕事はしていますが、暇な時は自室でTVを録画してわざわざ私達に見てほしい番組があると届けにやってきます(溜息)
父の選ぶ本はほとんどが政治の本ばかり。まぁ父のお陰で私も本を読むようになったのはありがたいことだと思いますが。

家族がいない一人の空間が何とも愛おしく、静かに過ごせている昼間は私にとって天国(笑)
ただ、人の和の中にいるからこそ、それも天国に感じられることを知っているので家族のTVの時間もお互い様と腹をくくりつつ、雑音の中に身をひそめています。

投稿: ノブタ | 2012年1月29日 (日) 22:45

ノブタさん、
先日は元気そうなお声きけてよかったです(^-^)
お仕事ほんとにお疲れさまでした。

ノブタさんのお父様、読書が趣味ならまだいいじゃないですか。
ただTVを見ているのと違って頭が活性化されるし。
読書ができるってまだ知識欲も好奇心も旺盛ってことですよ。

そして、ほんとにそうね。
家族がいるのはほんとにありがたいこと。
そのなかで1日のうち数時間、静かで自由な時間を持てるっていうのは最高ですね♪
私も少しは1人の時間が持てるようになりたいです。(切実に。)
早くみんな外に出て行ってくれるといいんですけど。

投稿: soukichi | 2012年2月 5日 (日) 18:50

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