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2011年8月29日 (月)

どんぐり

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夏のあいだじゅう鳴き続けて力尽きた蝉の亡骸に蟻がたかっている8月の午後、お昼

のパンを買いに行って舗道に落ちている緑のどんぐりをみつけた。

しゃがんで子どもみたいに拾う。

頭の上ではいまも静かな音楽のように続いている蝉の声、見上げるときれいなブルー

の空に見るからにうまそうなシュークリームみたいな雲がもくもく浮かんでいて、さざ波

のような緑の合間からこぼれる陽は鮮やかだ。

思えば緑が多いということのほかはとりたててこの町が好きなわけではなかったけれ

ど、昨日実家のある中野区に行ったらなんだか行くたびになし崩しに何かがだめにな

っているようで、ここのほうがずっといいと思った。そうしたら息子も私と同じことを思っ

たようで、ちょっと驚いた。良くも悪くも「ここで暮らしてきた」ということか。

父の案内で初めてここを見に来たときのことを思い出す。

お天気の良い明るい午後で、街路樹が途切れたあたりの野火止め用水でアヒルとカ

モが遊ぶ長閑な風景を見て、ここで暮らすのもいいかもしれないと思ったこと ・・・・・・

あのとき前に何もさえぎるものがない明るいマンションの一室でも見つかったら、私た

ちのその後も何か違ったろうか、といま感傷を少しも含まないクリアな気持ちで思う。

すべては夢のあとだ。

そしてここではたぶん、このさき一生つきあってゆくことになるであろう友達に出会っ

た。どう考えても彼女と出会うためだけに私はわずかな期間、辞書の校正室で働い

た。その仕事はあまりにも私には向いてなかったから。

そして、今となってみればそれでじゅうぶんなのかもしれない。

凸凹だけれど、すべては流れに沿ってということなのか。

いつか、今よりもっと居心地のいい場所を手に入れなければ、と思う。

それは意外と近くにあるような気もするし、ずっと遠く、波音がするような場所であるよ

うな気もする。すると私の感覚はまるでわずかな匂いでも嗅ぎ分ける犬みたいに敏感

になって、その方向をたぐり寄せようとする。

今日は新月。

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コメント

このドングリを枝ごと落としたの、ハイイロチョッキリの仕業かもしれません。
左側のドングリ、帽子の左端のところに小さな穴があるようにも見えます。
ハイイロチョッキリが卵を産むために開けた穴かも。
ちょうど今朝、このハイイロチョッキリの記事を、自分のブログにアップしたんですよ。

投稿: waiwai | 2011年8月30日 (火) 12:50

waiwai さん、
いま見た!(^-^)
面白い虫だね!
ハイイロチョッキリって、名前も面白いけど
ルックスもかなり面白い。
で、あの長い鼻(?)の先で枝をチョッキリ!
と切るんですか?
だとするとすごいハサミの威力。
そしてwaiwai さんは目がいい!
たしかにこれ、帽子に穴開いてます。
他にも地面にたくさん落ちてたんだけど、
ほとんどが穴開いてました。
卵が産みつけてあるんなら、
家の中に飾っておけないね~

投稿: soukichi | 2011年8月30日 (火) 13:34

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