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2011年6月 5日 (日)

センチメンタル和風ロールキャベツ

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ふつうに結婚していた頃には家で食事を作ることなんてきっとほとんどなかったのじゃ

ないかと思うけれど、家を出奔して一人暮らしになってからの北村太郎は料理も上手

で、なんでも器用にひとりで作って食べていたという。おいしいものに出合うと、いつも

「絶品!」と叫ぶのだそうだ。なんだか目に浮かぶな。

その北村太郎の自信の一品が和風ロールキャベツで、前述の橋口幸子さんは羨まし

いことに何度もそれをご馳走になったそうだ。『珈琲とエクレアと詩人』の中にも何ヶ所

か和風ロールキャベツが出てくるところがあって、最後のほうにこんなシーンがある。

以下、一部抜粋。

 北村さんが亡くなる一月半ほど前だったと思う。

 和風ロールキャベツをつくったから、食べにおいでとさそわれた。ほんとに申し

 訳ないと思いながらも、よろこんで飛んで行った。

 赤ワインが1本用意されていた。

 とてもおいしかったのはいうまでもないけれど、ふとワインを注ぐ手に気がつ

 いた。手がかすかに震えていたのだ。

 < 中略 >

 「あっ、北村さん、ワインをささえるのも手が震えるほどに、つらいんだ」

  ちゃんとそうわかったのに、北村さんが何でもない風を装うので、つい、甘え

  てしまったが、だいぶつらかったのだと思う。

  だから、「いいんだよ」と頑張る片づけは、「いいえ、片づけまでやってもらっ

   たら、罰があたります」と、気づかぬふりをして、無理矢理片づけを横取りし

   てやってきた。

  手を握ったら、とても冷たくて、まだすこし震えていたところをみると、やっと

   の思いでつくったロールキャベツだったのだと、胸が痛む。

  「おいしいですね。なんで味づけするんですか」と聞くと、

  「簡単よ。ブイヨンひとつに醤油をいれんのよ」

  真似してみたけど同じ味ではなかった。何かひと味違うのだ。

  ほんとうにおいしかった。

それで、この本を読んだあと勢い和風ロールキャベツが作りたくなって、作ったのが上

の写真。和風ロールキャベツというと、タネであるひき肉に鶏肉を使ってお豆腐やシイ

タケを入れたものもあるけれど、この抜粋した文章から言って、北村太郎が作ったの

はそうではなくてごくふつうのロールキャベツに和風の味つけをしたものではないかと

思ったので、そうした。だから、作り方は先日アップしたものと一緒で、わずかに違うの

はタネの合挽肉にナツメグを入れる代わりにおろしショウガを入れたのと、スープにチ

キンブイヨンと酒・醤油を加えたことくらい。

結果、とてもおいしくできて、家族にもいつものトマト味のと甲乙つけがたいくらいおい

しい! と言われたけれど、私自身はもうとうぶんロールキャベツは作りたくないなと

思った。正直、大きなキャベツをゆでて葉っぱを1枚1枚破らないようにはがして水分

を拭き、捏ねてまるめたタネを中に入れて上手に巻くのは、一応ベテラン主婦の私で

もけっこう手間がかかる。これを亡くなる一月半前の最高に調子の悪いときに、誰か

に食べさせるために震える手で一生懸命作ったとは、なんともいじらしいではないか。

どう考えてもそれは、それまでいろいろ世話をかけ、自分に優しくしてくれた橋口幸子

さんに対する最期の恩返しのつもりだったのではないかと思う。そんなことを思いなが

らロールキャベツを食べていたら、ますますセンチメンタルな気分になっちまった。

そうそう、いつも夕飯を作るより早い時間に私がキッチンでバタバタ始めたら、息子が

「今日は何?」と聞くから「センチメンタル和風ロールキャベツ」と答えたら、「何だよ、

それ」と言わてしまった。

なんだよじゃない、センチメンタル和風ロールキャベツだ。

この変な母親はいつだってそういう風だ。


そして食後のデザートは、珈琲とエクレア。

いつも北村太郎は鎌倉の小町通りにある喫茶店イワタで珈琲を飲み、いとおしそうに

ゆっくりとエクレアを食べていたのだそうだ。

というわけで、いとセンチメンタルな休日。

鎌倉小町通りの喫茶店イワタ、稲村ケ崎。

故人の思い出を偲んで、この秋あたり、行ってみようかなあ ・・・・・・

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コメント

ロールキャベツ、大好きです。
で、和風・・・・・・
食べたこと無いかなあ。
猛烈に食べたくなった(笑)
私は、特にキャベツが好きなのです。

鎌倉こまち通りは、平日じゃないとダメですね。
週末とかは人が多すぎて。

私も鎌倉行きたくなりました。

投稿: 四季歩 | 2011年6月 8日 (水) 19:45

四季歩さん、
ロールキャベツ、好きですか?
外食でも食べる?
ロールキャベツといえば、いつか友人と新宿のJAZZバーにライブに行く前にまだ時間があるから腹ごしらえしようということになって、彼女ご推薦の有名なロールキャベツの店の前まで行ったんです。でも、その店のショーウィンドーのディスプレイを見たら、ホワイトソースのロールキャベツだったんですね。
私、歳のせいか年々ホワイトソースがトゥーマッチになってきちゃってるものだから、なんだかそれ見ただけでお腹いっぱいで、けっきょくそこでは食べずにJAZZバーでイタリアンのアンティパストを食べたってことがありました。

四季歩さんのおうちのロールキャベツはどんなでしょう?
私の作るロールキャベツはトマト味でも和風でもコンソメ・ベースであっさり味です。
和風もおいしいですよ(^-^)
特に春キャベツはおいしくて栄養たっぷりですから。
ぜひ、ご家族に作ってもらってください♪

鎌倉はほんとにいつ行っても混んでますね。
変わらぬ人気スポットです。
古いものと新しいものが混在してるところがいいのかなぁ~?

投稿: soukichi | 2011年6月 9日 (木) 23:57

うちは、カミさんの母親が大阪の人間で、
完全に関西の味です。
ですから、薄味なのは間違いないです。

好きなのは、キャベツなんですよね(笑)
おカズのバランスによっては、キャベツはしっかり消えて、
中のひき肉だけ残ってる図が・・・(笑)

年とったせいか、煮た野菜が好きになりましたねえ(笑)

生野菜もガッツリ食べますが。

投稿: 四季歩 | 2011年6月10日 (金) 20:20

野菜好きの四季歩さん、
健康的ですね(^-^)
しかも味付けが関西風の薄味だったらなおさら。

野菜は昔にくらべてビタミンが無くなったとか言われるけれど、
それでも食べるに越したことないですね。
意識して野菜を食べるようにしたら、やっぱり調子がいいです♪

投稿: soukichi | 2011年6月13日 (月) 23:57

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