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2011年5月 8日 (日)

久しぶりにロールキャベツを作った。

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ロールキャベツにはちょっとした思い出がある。

それはまだ私が学生の頃で、あるとき父の仕事仲間から電話がかかってきて、「お宅

のお嬢さん、たしかマスコミ志望だったよね? 実は知り合いの編集者から連絡があ

って、なんでも身内にご不幸があってしばらく通常通りの仕事ができないから、彼女が

完全復帰するまでのあいだピンチヒッターのアシスタントを探しているって言うんだけ

ど、よかったら話を聞きに行ってくれない?」というのだった。私がいつからマスコミ志

望ということになったのか、自分にできる仕事なのかもわからなかったけれど、なんた

って押しの強い人だったもので、とりあえず連絡先を聞いて面接に行くことになった。

当日は相手の女性が指定した喫茶店がわかりずらい場所にあったのと、極度に緊張

していたせいで早めに家を出たのにもかかわらず私はちょっと遅刻してしまい、お互

いの第一印象は(たぶん)それほどよいものではなかったけれど、なんと翌日から働く

ことになってしまった。家に帰って母が「なんの仕事だった?」と聞くので「週刊○日の

仕事」と言ったら、『週刊○○○芸能』と間違えて「あんな下品な週刊誌で働くの!」と

くってかかられそうになったのにはまいった。

そこでの仕事はたしか週3日ほどで、主な仕事内容は対談ページのセッティングの補

助業務や、原稿とゲラのトラフィック、出版物の関係者へ送付や、たまに取材の同行

など。最初に会った女性編集者に鋭く釘を刺されていたこともあって私は常に緊張し

ていたから、職場を離れた途端ヘナヘナしてしまいそうなほど疲れたけれど、今にも

増して感受性ビンビンの時代だったから当時のことは短い期間だったにもかかわらず

すごく鮮明に憶えている。

それについては今回は詳しくは書かないけれど、当時はマスコミといっても今にくらべ

たらまだずっと良い時代だったのだろう。

ふだんは直属の女性か、もっとエライ人と2人きりでいることが多かったから自分のほ

かに同じようなアルバイトがどれだけいるかも知らなかったけれど、年の終わりの忘年

会にはそんなアルバイトも全員呼んでくれて、プロのカメラマンが記念写真を撮ってく

れたりもした。そのモノクロの写真は今でも実家のどこかにあると思う。

その忘年会で知りあった年上の女の子が作り方を教えてくれたのがロールキャベツ

なのだ。人の記憶って変なものだけれど、今となっては彼女の名前も、どういう経緯で

彼女の桜台のアパートに遊びに行くことになったのかも憶えてないけれど、彼女のキ

ッチンの感じは今でもなんとなく映像として思い浮かべることができる。まるで村上春

樹の小説のワンシーンみたいに。

その日は午後、駅前で落ち合って彼女の部屋に行った。とりたてて何をするというわ

けでもなく、私が持って行ったケーキを食べつつお茶をしながら話した。そして彼女は

私との話が途切れるとふと時計を見て、「ごめん。そろそろ夕飯を作らなきゃ」と言っ

て立ち上がった。「今日は彼、7時には帰ってくるって言ってたから」。

その台詞で私は初めて彼女が男の人と同棲しているのを知ったのだった。

彼女は驚いている私に目もくれずエプロンをしながら、「よかったら手伝ってもらっても

いい?」と言った。「いいよ。何を作るの?」と聞いたら「ロールキャベツ」と言うので「私

作ったことないや」と言うと、こちらを見てちょっと笑って「教える」と言った。

それから彼女は大きな鍋に湯を沸かし、お湯が湧くあいだにタマネギをみじん切りに

してバターで炒めた。鍋が沸騰すると慣れた手つきで大きなキャベツの芯のあたりに

包丁で切れ込みを入れて丸のまま鍋の中に入れた。

「こうすると葉が破れずにきれいに取れるのよ」

それからキャベツをザルにあげ、それが冷めるあいだにボウルに入れた合挽肉に炒

めたタマネギと少量のミルクに浸したパン粉、タマゴ、塩・コショウにナツメグ、隠し味

にウスターソースと醤油も少し入れてこね始めた。

「具はよくこねたほうがおいしいの。しばらくこねてると肉の繊維がつながって白っぽく

なってくるから、それが目安」と彼女は言った。私は「ふぅ~ん」と言いながら彼女がこ

ねるのを見ていた。結局、私が手伝ったのはロールキャベツを巻くところだけだった。

彼女のやり方は、冷まして水気を拭き取ったキャベツの芯を包丁で少し削いで、芯の

側を手前に置いて中心より下にタワラ状の具を置いたら手前を具にかぶせるように折

って、右端を折ってからくるくるっと巻いて最後に残った左端を筒の中に押し込む、と

いうやり方で、爪楊枝を使わないやり方だった。削いだキャベツの芯は細切れにして

具の中に入れてしまという無駄のなさ。実にうまいもんだった。感心した。

巻き終わったロールキャベツは巻き口を下にしてきれいに鍋の底に並べ、トマトピュー

レとローレル、別の鍋に作っておいたスープを流し込んだら終わり。

「あとは煮込んで味をみるだけ」

と彼女が言ったときにはもう外は暗かった。

私は彼女がどんな人とつきあっているのか興味があったけれど、といってそれを口に

するほど積極的じゃなかった。私は「駅まで送る」という彼女と桜台の駅まで歩いて、

駅の改札で手を振って別れた。後にも先にも彼女に会ったのはそれっきり。

いったいあの日はなんだったんだろうと今になっても思うけど、子どもの頃から多少な

りとも料理はしていたものの、まだ親と暮らしている親がかりの身である私にとって、

いくらも年が違わないのに家を出て男の人と一緒に暮らしていて、眼の前で鮮やかに

ロールキャベツを作ってみせた彼女がどれだけ大人っぽく見えたことだろう!

そしてもちろん、それから数日たたずに家でロールキャベツを作ったことは言うまでも

ない。

・・・・・・ というわけで、昨日大きなキャベツを買ったので、昨日に引き続きキャベツ料

理。ロールキャベツなんて久しぶりに作った。息子いわく、2年ぶりくらい、だとか。

だって、大きないいキャベツが手に入る時期じゃないと作れないし、ハンバーグにくら

べてもひと手間あって、なかなかやる気にならないんだもんね!

(私が面倒くさいと思うのは、キャベツをゆでて1枚1枚水気をとるあたりです。)

彼女の作り方と少し違うのは、私はトマトのカット缶を使って他にも野菜を入れてあら

かじめトマトスープを作ってしまうことくらいで、あとは同じです。

『ホノカアボーイ』のビーさんが作る、巻いたキャベツをフライパンでいったん焼いて、

ホワイトソースで仕上げるロールキャベツもおいしそうだったけれど、自分で作るなら

私はこれか、コンソメ仕立て。

あまりコテコテさせずにあっさりしたのが好きです。

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