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2011年2月21日 (月)

寒桜

11kanzakura

今日、母の命日。

11年前の今日、母は亡くなった。

朝、電話が鳴って急いで病室に駆けつけたときには母は虫の息だった。

私の呼びかけにもう応えることはできなかったけれど、瞑った目から涙が一筋頬にこ

ぼれたから、ちゃんと聞こえていたのだと思う。人間の感覚のなかで聴覚が最後まで

生き残るとは聞いていたけれど、本当だったのだ。

それから息をひきとった。

正確な時間は憶えていない。

母は肺ガンだったから、最後の方はとても苦しんだ。

息ができなくなって死ぬという恐怖は後々まで私を苦しめた。

夜中にこわい夢で目覚めても私にはもう不安を安堵に変えてくれる人はいなかった

から、その恐怖はことさらだった。いま、プールで泳いでいて水の中で息ができなくな

ってもその恐怖を思い出すことはないから、それももう乗り越えたのだと思う。

母のガンは治る見込みがないことを医者から聞いてはいたけれど、かといって現実

的にそんなに簡単に死ぬとも思っていなかった。母には少しでも元気になってもらい

たくて、治って退院したら家族みんなで京都に桜を見に行こうと言っていた。それで、

仮退院で母が家にいる間はよく寒桜をみつけては持って行った。

けっきょくそれは成就しないまま終わったけれど、その年の春は桜を見てよく泣いた。

友人には危ないから夜中に徘徊するんじゃないと言われていたけれど、夜な夜な出

かけて行っては一人夜桜。満開の桜の樹の下で煙草をゆっくり3本くらい喫って帰っ

てくる。そうでもしないと、ゆっくり息を吸って吐くこともできなかったのだ。

いまではもう煙草を喫うこともないけれど、メンソール煙草は今でもときどき恋しい。

それから11年、父はよく生きた。

4月が来ればもう80だ。

今年は傘寿のお祝いをしなければ。

さっき電話をしたら、父はちょうど母のお墓参りから帰ってきたところだった。

祖父は信仰深い人だったけれど、父は律儀な人なのだ。

私も一緒に行きたかったけれど行けなかった。

代わりに午後、花屋に行って寒桜を買った。

今日はコトリさんではなく、近所のフラワーボーイへ。

きっと今時期は桜の枝があるだろうと思って行ったらやっぱりあって、いいのを一枝わ

けてもらった。フラワーボーイさんは今日は滅茶苦茶かっこいいヘアスタイルをしてい

て、ますます美容師みたいだった。そう言うと、半年ぶりに昨日切ったばかりなんです

と言うから、そのカットはすごい、カットの上手い美容師はちゃんと押さえておいたほう

がいいよ! なんて会話をした。日常は瑣末なことであふれているのだ。

桜の枝は大きいのと小さいのとあって、小さいのを選んできたのに家に持って帰って

みたらけっこうな立派な枝で、大きな花瓶に桜の枝を生けたら部屋がギャラリーみた

いになった。

11kanzakura02

それから、いちご大福。

清水焼きのお皿にのせたら春が来た。

11ichigo_daifuku_01

母は清水焼きもいちご大福も大好きだった。

母が亡くなってしばらく後に器屋で働くことになったときは、母が生きてたら私より喜ん

だろうなあ、とひどく残念に思ったものだ。人生ってのは実にうまくいかない。

母が最初のガンで入院した日がよりにもよって私の誕生日だったり、亡くなったのが

また2月であったりしたことで母とは実に因縁が深いと思うけれど、2月は息子が交通

事故に遭ったりした月でもあり、私にとってはいつもあまり良い月ではなかった。

それもここ数年、やっと穏やかに過ぎるようになったような気がする。

今月もあと残りわずか。

弥生三月はもう桜の季節だ。

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ある日のこと」カテゴリの記事

コメント

読んでいて、妹が亡くなったときのことを思い出しました。
妹は卵巣ガンでした。
駆け付けたときは、もうしゃべれなくて、
それでも私の手をかすかに握って、
やはりツーッと涙をこぼしました。

私は、桜が大好きなので、桜に対して、
もっと明るいイメージがわくように、
なにか良い思い出を作って欲しいなと・・・・・
これは、余計なおせっかい(笑)

早く、春が来るといいですね。


投稿: 四季歩 | 2011年2月22日 (火) 21:12

四季歩さま、
妹さん、お亡くなりになられたんですか?
それはさぞかしおつらかったでしょうね。
それで、四季歩さんのところも順番を守らないくちだなあ・・・
このあいだ妹に、「順番は守ってね」と言ったら、そんなこと「はいは~い(^-^)、善処しま~す♪」でいいのに、「そんなこと約束できない」とか生真面目に言うから嫌んなっちゃいました。

それで、やっぱりネットだけのつきあいだと、なかなか人ってわかってもらえないみたいですね。
このブログのカテゴリを見ていただいたらわかっていただけると思うけど、私だって桜は大好きだし、別に桜に暗いイメージを持ってるわけじゃありませんよ。
人っていうのは多面的な生きものだし、ひとつの対象に対しても多面的な視点を持っているものじゃないでしょうか。
それでこれも毎年ブログに書いているから天邪鬼にはならないと思うけど、私、春って苦手なんです。
春はいつも眠いばかりで・・・
むしろ今くらいの、凜とした空気の中にもほのかに春を感じられるくらいの頃の方がずっと好きです。
雪の日でも平気で泳ぎに行くくらいで、寒くてもぜんぜん元気ですよ!(^-^)

投稿: soukichi | 2011年2月22日 (火) 22:50

(汗)

思い出しましたよ(またまた汗)

ブログでお知り合いになったのは、
たしか桜が縁ですよね。

そういうのを忘れてはいけませんよね(笑)

投稿: 四季歩 | 2011年2月24日 (木) 20:01

四季歩さま、
ほんとにそうですよ
家でも奥さんが大事に記憶していることをかたっぱしから忘れちゃうから
夫婦の会話が噛み合わなくなっちゃうんじゃないですか?

ははは、・・・なんてね。
ジョークです。
すっ飛ばしてください。

投稿: soukichi | 2011年2月25日 (金) 13:12

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