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2010年4月 5日 (月)

淡くはかない ・・・

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このところ3週連続で『パイレーツ・オブ・カリビアン』なんか見てしまっているのだけれ

ど、たとえばあの海賊さんのように、海に放り出されて命からがら漂着した先が無人

島で、自分よりはるかに若い青年と2人だけで残されたとして、もし惹かれあったとし

たら恋に落ちることもありえないことではないかもしれない、と思う。つまり、この三次

元空間で、人が捕らわれている常識や様々な制限なんて、そんなものがまったく通用

しない、そんなものを遥かに超えてしまった世界では、すごくちっぽけなつまらないも

のなんじゃないかって。

でも、そんなことをチラチラ考えてみたところで、私が生きているのは思いっきり現実

の三次元空間だから、相変わらず私はつまらないことが気になって、そうやすやすと

は柵のむこうには行けないのだ。


昔、女子高生だった頃、毎朝のように駅のホームで会う男の子がいた。

自分より1学年くらい上の男子学生。

電車のドアの横に立って窓ガラスから外を見ていると、彼はいつもちょうど私が降りる

車両のドアの前に立っていて、私が降りるのと入れ違いに乗ってくる。一瞬、目が合っ

て擦れ違う。ただ、それだけ。

ただそれだけなのに、いつしか私はその一瞬を心待ちにした。いつも乗るその電車に

遅刻して乗りそびれてしまったり、いつも通りの時間に電車に乗ったのに彼がホーム

にいなかったりすると、がっかりした。人は毎日顔をあわせていると、その相手を好き

になってしまうという習性があるそうだけど、そんなものなくても同じことだった。彼はち

ょっと素敵な人だった。

そんなことがどれくらい続いたか。おぼえてない。けっきょく一度も口をきかなかった。

ただ、人は、いや人に限らず生きとし生けるものは、無言のエネルギーで瞬時に何か

を分かち合う瞬間があって、ときおりその人と一瞬合ったその目の中に、微笑や、あ

る種の感情が混ざることがあって、確かに私たちはその瞬間、何かを共有した。

それで私は今でも彼のことを憶えているのだ。彼が着ていたのが詰襟の制服だった

かテーラードジャケットだったかも憶えていないのに。

まだ好きとも、恋とも違う、淡くはかない感情 ・・・

(誰かのことが)視野に入るっていうのは、文字通り、その時点ではまだそれ以上でも

以下でもなく、ただ視野に入るってことなんだよなぁ、と思う。

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