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2010年3月16日 (火)

花の下で

10koubai

今日は春を通り越して一気に初夏の陽気。

まだ3月にして最高気温21度とは。

今日はスウェットパーカ1枚でもちょうどいい。

知らない間に日もずいぶん長くなった。

夕方、まだ明るいうちに買いものに行くと、斜陽のノスタルジックな光の中で、一気に

満開になった紅梅が、まるで大きなピンクの綿菓子のようだ。そこだけぽわっと華やい

で、あたりいちめんにしあわせのオーラを放っている。

買い物帰りにまたその下を通るとき、そうだ、と思って携帯を取りだした。

家にいると途切れめなく家事と仕事に追われて、ちょっと誰かに電話するタイミングす

ら見つけられなかったりするから、たまには思い立ったときに電話してみよう。

だいぶ暖かくなってきたからボスも少しは元気になったかもしれない。

・・・ と、いつになく短いコールで出てきたボスは、前回とはくらべものにならないほど

元気な声だった。島も今日はそうとうあったかいらしい。家の固電からかけてくれば都

内と同じ料金しかかからなかったのに、と言うから、外があんまり気持ちがいいので

歩きながら電話した、いま満開の紅梅の下なんだ、と言うと、おお、そうかと言った。

ボスの元気なのにはちゃんと理由があって、どうやら生活費の目処がなんとかついた

から、ということらしい。ボスいわく、殺さず生かさず程度に。それでなんとか3食まとも

に食べて、大好きなBUNの珈琲も飲めるようになったので元気になったのだという。

つまり、現金のあてができて元気になった現金なボス、というわけだ。

その変わりぶりようたるやほんとに現金だな! と思うけれど、人間なんてそんなもの

か。腹が減っては戦はできぬ。とりあえずボスが元気になったならそれでいいや。

満開の梅を見ながら話す。

10koubai_03_2

けれどボスが元気になったのはそれだけじゃなくて、3年かけて書いた、原稿用紙に

して500枚もの小説を10校もして、やっとできあがった最終稿を古い友人に送ったと

ころ、ちゃんと読んでくれたうえにさらに校正して感想文までつけて送ってくれたのだ

そうだ。それがさっきポストを見たら入っていたのだそうで、今日の元気の理由はたぶ

んそっちのほうが大きかったのじゃないかと思う。

それにしても500枚を10校! 考えただけでもくらくらするな。

物書きって、ほんとに持久力と忍耐力と執念がないとできません。

それから、先日たまたまNHKをつけていたら始まったので最後まで見てしまった(室

生犀星原作の)『火の魚』というTVドラマがとても良くて、作家の島での生活がどこか

ボスと重なるところがあったと話したら、そのうち友人が校正してくれた原稿500枚を

最終稿にして送るから読んでくれ! それは『火の魚』より面白い『金の魚』だよ、なん

て言うから笑ってしまった。3冊めとなる詩集ももうまとめてタイトルも決まったらしい。

それからおもむろに、小説は頑張れば書けるけれど、詩はどんなに頑張っても書ける

ものじゃない、とボスが言うから、そうなんだよ! ほんとにそう、と言った。

そんなことを言うのは私のまわりではやっぱりボスしかいないのだ。

それにしても家に帰ってからはたと気づいた。

詩集をまとめたというから「装丁は誰にやってもらうかもう決めたの?」と聞いたら、

「もう決めた」と言ってから「なんで。誰かいるのか?」と聞き返すから、「素敵な人と知

り合ったんだよ。書家」と言ったら、「独身か?」と聞くので、なんでここで独身が関係

あるのかと思いながら「いや、結婚されてる方」と答えたのだけれど、そうか、私が素

敵な人と言ったら男だと思ったわけですね。今さら気づくなんて、あたしも鈍いな。

つまり、それくらいそういったことがいま私の頭にはないわけで。

それよりも今日、何かをしていてふいに閃いたこと。

10koubai_02_3

ボス、私は長いこと忘れてたのかもしれないな。

なんであれ、表現は人を自由にしてくれるもので、不自由になるためのものじゃないっ

ていうことを。それは、お金のあり・なしにも関係がなく、何かになる、ということとも全然

関係がない。私はそれを忘れて、自分をがんじがらめにしてただけなのかもしれない。

・・・ そう思ったら、なんだかちょっと書けるような気がしてきました。

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