« '20010お聴き初め@SOMETIME♪ | トップページ | 春の陽気に誘われて♪ »

2010年1月17日 (日)

主婦と生活

Manaita

結婚したときに買って、もう22年も使っているまな板が黒くなってきてしまったから買

い換えようと昨日さんざんインターネットで眺めた末に、今日思い立って伊勢丹に出か

けた。ただ買い物をするためだけに百貨店に出かけていくのなんて何年ぶりだろう?

かつては伊勢丹マニアだった私。ある種それが高じてここで働くことになってしまった

ようなものだけれど、今ではたいていのものはわざわざどこかに足を運ぶ間もなく、

インターネットで買ってしまう。ネットの世界は価格破壊著しく、とにかく安くて面倒が

ないから。

そんな風だから最近は買い物に行くのが楽しいなんてあまりなかったけれど、久しぶ

りにわくわくして出かけた。わくわくして出かけるのが服を見るためじゃなくて、まな板

と包丁を見るためだなんて、いかにも主婦的ではないか。

出がけにネットで伊勢丹吉祥寺店がついに閉店になってしまうことを知って驚き、不

況の波はついにここまで来たかと思い、それじゃあ新宿店も空いているのかと思いき

やそんなことはなくて、ここは相変わらずの混雑。5階のリビング・家庭用品売り場に

行ってセールになっているまな板を物色し、けっきょくセールになっていない木曽桧の

1枚板のまな板を抱えて、ついでにこの際包丁も買おうと木屋に行く。ショーケースの

中には、やはりセールで多少安くなっている包丁がずらっと並んでいて、いくつか見

せてもらおうと思うのだけれど、待てど暮らせど店員は誰ひとり来てくれない。買う気

で来ているお客をほっといていいのかぁーと思ったりもするけれど、ここもご多分に漏

れずコスト削減で人員が足りていないのかもしれない、と思う。

やっと手のあいた年配の店員を呼びとめて、いま使っているのと同等くらいのと、そ

の半分くらいの値段の鎌型包丁を出してもらって実際に柄を握ってみて、驚いた。

全然ちがうのだ。持った感じも、フィット感も。

思わず目をまるくして、こんなに違うものなんですね! と言ったら、店員は丁寧に2

つの包丁の違いを教えてくれた。柄ひとつとっても材質も作りも違うのだそうだ。刃に

いたってはもっと違う。なるほどね。高いものは高いだけのことはあるってことか。

やっぱり道具は持ってみないとわからない。ネットで買えるものなんかではないのだ。

店員さんにそう言ったら、包丁をネットで買うのは危ないです、と言った。

2つの包丁を前にして「駄目ですね」と私は言った。持ってみるまではいま使っている

のより安いのを買おうと思っていたけれど、やっぱり駄目だ。こっちにします。

そう言って、けっきょく高いほうを選んで、まな板と一緒に包んでもらった。

お包みの際に、天然木のまな板のお手入れ法が買いてある紙を見せて説明をして

くれながら、私が買ったまな板のブランド名をチラッと確認してから「もし使っているう

ちに黒くなってきたり傷が深くなったりしてしまっても、ここのはカンナで削ってもらえ

ますから。そういうことを専門でやっている職人がいるところですので、お電話で言

っていただいてからお持ちくだされば承ります」と言った。

包丁は研ぎに出せるのはまだ当たり前としても、まな板まで削ってもらえるとは。

こういうところは高いだけあって、さすが百貨店!

「もう一生モノですね、大事に使います」、心の中でそう言って売り場を離れた。

それから久しぶりに来たのだからと、かつて自分が働いていた会社のショップを覗い

たり好きなショップを見たりして帰りの電車に乗る頃には、心はすっかり満足だけれど

少々疲れてもいて、膝の上のまな板が重かった。ふいに、家に帰れば22年使ったま

な板があることが思い出された。そうだ、あれを処分しなければ。

あのまな板を買ったときのことはよく憶えている。

結婚するとき、たいていの家財道具は母に買ってもらったのだけれど、なぜか包丁と

まな板を買うのを忘れていて、慌てて駅前のスーパーに買いに行ったのだった。当時

そのスーパーでは『主婦の目』シリーズという、主婦の視点で作ったオリジナル生活

用品コーナーがあって、そこで買った。包丁はステンレスの安いので、まな板もそんな

にしなかったと思う。それでもその2つは何もかもまっさらな新築マンションの白いキッ

チンで、他のものと同様ぴかぴかだった。私はたいがい物持ちのいいほうだけれど、

それを延々今まで使ってしまったのだ。包丁もずいぶん使ったけれど、たまたま家で

ご飯を作ってくれた友人に「よくこんな切れない包丁で料理してるね。器用だね」と変

な褒められ方をして、ついにトマトが切れなくなったときに買い換えた。

当時、某百貨店の特選食器売り場の器屋で働いているときに、まわりの年配ベテラ

ン主婦たちに勧められて買った、最初の木屋。(今でも同じだけれど)私にとっては高

い買い物だった。でも、それを家に持って帰って初めて使ったときの驚きときたら。

目から鱗の切れ味でした。つくづく、道具って大事だよなあと思った瞬間。

まるで料理の腕まで一気に上がったような。

たかが包丁とまな板、されど包丁とまな板なのだ。

22年間私と連れ添ったまな板は、言ってみれば台所における私の22年間の喜びも

かなしみも知ってるわけで、そう思ったらなんだか複雑な気持ちになった。

少々落ち込みそうになる気持ちを振り払って、いやいや、だからこそ今までを一掃す

るのだ、と思い直して、わしわし地面を踏んで家に帰った。


帰るとすぐ、古いまな板には労をねぎらいお礼を言って、丁寧に新聞紙でくるんだ。

新しいまな板はビニールを剥がすと、桧のいい匂いがした。ほんとにいい匂い。

思わず娘を呼んでしまったくらいだ。まな板くらいでこれだもの、桧のお風呂はどんな

にいいでしょうねえ・・・

いつも言っていることだけれど物にはすべて波動があって、固有のバイブレーションを

発している。新しい桧のまな板を置いた瞬間、私のキッチンは変わってしまった。

まるで電球を新しいのに変えたみたいに一気に明るくなった。そして、なんだか空気ま

で浄化され、キッチンのグレードが上がったようだ。これぞ職人の志。

古いものを大事にするのはいいことだけれど、たまには新しいものも必要だ。新しいも

のは新鮮な気を連れてくる。これが新しい気が入るってことなんだなあ、と実感した。

一生モノのまな板は、この先ずっとまた私と連れ添うことになるだろう。

この先20年か、30年か・・・

でも、主婦の一生を包丁数本、まな板2枚、と考えると、なんだか実にあっけなく儚い

ものにも思えてくる。それにつけても日々気分よく暮らしたいものだとつくづく思う。

Garlic_pasta

写真は今日のランチのナスとベーコンのガーリック・パスタ。

|

« '20010お聴き初め@SOMETIME♪ | トップページ | 春の陽気に誘われて♪ »

日々のあれこれ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« '20010お聴き初め@SOMETIME♪ | トップページ | 春の陽気に誘われて♪ »