« カラフルCOBO! | トップページ | 秋のペルル・ド・ジャルダン »

2009年10月12日 (月)

金木犀の雨のなかを

09new_rose

それは台風がくる前日の夕方。

私は仕事上のストレスでひどく疲れていて眠く、何をする気力もなかったのだけれど、

どうしてもその日のうちに買いたいものがあって、雨のなか傘をさして出かけた。

自転車で行ったらすぐだけれど、歩くとちょっとあるホームセンター。

外に出るとあたりはすっかり金木犀の匂いでいっぱいで、まるで大気にも雨にも金木

犀のエッセンスが溶け込んでしまったようだった。

滴るような金木犀の匂い。

雨で、おまけに台風が近づいているせいでホームセンターの中はガラガラだった。

私は疲れていたこともあって、こんな雨のなかせっかく歩いて来たんだから、ただ用事

を済ませて帰るのじゃなくて、ちょっと緑でも見ていこうと気まぐれに屋外ガーデンの植

物売り場に向かった。それが間違いだった。

雨の中うろうろと見て回るうち、一時のブームも去って最近はあまり変わり映えのしな

いここのバラ売り場で、見つけてしまったのだ。

立派なスタンダード仕立てのイングリッシュ・ローズを。

しかも3割引き!

それは先シーズンの売れ残り品に違いなかったけれど、でもここの残りもののスタン

ダードにしては変な剪定もしていないし、葉も落ちてないし、病気にもなってない。

しかも元気に上を向いた蕾がいっぱいついているではないか。

雨にうたれて俯くように咲いているピンクの花はふわふわと儚げで、鼻を近づけると

とてもいい香りがした。足もとのタグを見ると『グラミス・キャッスル』と書いてある。

グラミス・キャッスル? ピンクなのに?!

よく見れば近くにあったルイーズ・オディエは一季咲きのはずなのに四季咲きとなって

いる。どう見てもいい加減なタグの付け方だけど、150センチ以上もあるイングリッシ

ュ・ローズの立派なスタンダードが5000円以下とは破格でしょう。

それでもまだ決断できぬまま、カウンターの奥で仕事をしていた女性店員に声をかけ

た。「あの、スタンダード・ローズを配送してもらうことはできますか?」

それからネームタグが違ってるんですけど。あれはグラミスじゃない。

そう言うと、彼女はヨットパーカのフードをかぶって外に出てきた。

「あら、ほんと。すみません。でも同じバラがあれば名前がわかるんですけど、無いか

ら何だかわからないわ」

そして、配送はできるけれど、他の荷物と一緒のトラックだからあまりお勧めはしない

と言った。でも、そう言われても私はクルマも持ってないし、運転もできないのだ。

さんざん迷った末、「いいわ。送ってください」と言ってしまった。

彼女がカウンターの上に置いた配送伝票に住所と名前を書きながら、「あー、もう何

やってるのかなぁ、私・・・。今日は全然そんなつもりもなくて来たのになぁ。ただ緑を

見てちょっと癒されたいと思っただけなんだけど。やっぱり見てしまうと駄目ですね」

などとブツクサ言っていたら、彼女は「お花の好きな方はそうですよね」と言った。

私なんかもそうですよ。働いてるのに、自分が買って帰ったりして。何やってるんだか

ちっともわからない。特に駄目になりかけてる植物を見ると放っておけなくて、買って

帰って再生させたり。いったいどれだけここの植物を家で再生させたかわからない。

「私も同じです。それがもとでバラにハマってしまったの。再生させたバラがあまりにも

繰り返し良く咲いてくれたものだから、もう嬉しくなってしまって」

植物ってすごく素直ですよねえ。「ええ、人間なんかよりよっぽど!」

・・・ そんな話で思いがけず店員と意気投合しながら、なぁーんだ、この人も私とご同

類かぁ、と思った。さしずめ私がここで働いていたら、やっぱりそんな風かもしれない。

店を出て歩きながら、Mちゃんに電話した。

「Mちゃーん、わたし久しぶりにやっちゃったよー。しばらくこういうことなかったんだけど

さ。私ってもう駄目ねー」と言ったら、Mちゃんは一瞬よくないことを想像してシリアスな

声を出したけれど、すぐに状況を察知したらしかった。

「なーんだ。いいじゃん。つぼみがいっぱいついたスタンダード・ローズなんて、それだ

けでしあわせじゃない。私だってその値段なら即買いしたと思うよ!」

・・・ ここにも、ありがたきご同類が1人。


その名前のわからないバラは土曜日の夕方届いて、昨日テラコッタの大きな鉢に植

え替えた。すべての作業を終えて、所定の位置に納まったバラを眺めたら、やっぱり

このバラは我が家に来るべくして来たバラだとわかった。あまりにもしっくりとその場

所に馴染んでいたから。

さて、はたしてこのピンクのバラの名前はなんでしょう?

09new_rose01

|

« カラフルCOBO! | トップページ | 秋のペルル・ド・ジャルダン »

La vie en rose 」カテゴリの記事

コメント

綺麗なバラですね(笑)。

投稿: jose | 2009年10月13日 (火) 22:48

やさしいバラとの出会い、何か運命的なものをを感じます。
秋バラって、ひっそりと一輪咲いている姿がいいですね。
「マイガーデン」ありがとう。
季節出版なので、つい買いそびれてしまいとても嬉しいです。
大切にみています。
バラ酵母も、挑戦してみま~す。

投稿: みちこ | 2009年10月15日 (木) 18:14

joseさま、
この記事を書いてから早1週間が過ぎてしまいました。
最近、日の暮れもめっきり早いし、ほんとに1日があっという間です。
joseさんは元気?
それからjoseさんちのバラも。

投稿: soukichi | 2009年10月19日 (月) 23:06

みちこさま、
運命?
ほんとにそうかもしれません。
雨の中わざわざホームセンターに歩いて行ったあたりから、私はもうこのバラに呼ばれてたのかもしれませんね。
そのくらいしっくりなじんでるのです。
またバラとの長いつきあいが始まりました。

マイガーデン、喜んでもらえてよかった。
バラ酵母もできたらぜひ見せて(写真でも)くださいね~♪

投稿: soukichi | 2009年10月19日 (月) 23:09

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« カラフルCOBO! | トップページ | 秋のペルル・ド・ジャルダン »