最近のお気に入り*ニコラ・コンテ
数日前、夕飯にひと口カツを作っていて、3人分にしてはいささか多い、ひと口大に切
った肉に小麦粉、卵、パン粉を順に付ける、という作業を黙々とやっていて、あれ?
何か変だぞ、なんか煮詰まってきたと思ったら音楽が何もかかっていないのだった。
最近、TVをつければただウルサイだけで笑えないお笑い芸人ばかり、ラジオをつけ
ればうんざりするようなJポップばっかりで、丸1日TVもラジオもつけずに無音で過ご
すことが多いこの頃だけど、料理をするときに音楽は必須です。
人によっては音楽を聴きながら料理をすると料理に集中できないとか、料理をしなが
らじゃ音楽は聴けないとか言うけれど、私の場合は全然そんなことはなくて、むしろ
音楽があったほうが料理に集中できる、料理をしながらでも五感はしっかり音楽を感
じとって新たな発見をする、って感じなので、音楽は必須なのです。
・・・ というわけで久しぶりに音楽の話。
実を言うとタイトルの『最近の』というのは正確ではなくて、私がニコラのアルバムを買
ったのは2月。あれはまだ1月だったろうか。ある日の朝、ラジオからいつになく気持
ちの良い音楽が流れてきた。疾走感のあるハウスっぽいバック・グラウンドに乗って、
夏の夜を涼しくさせるような大人の女性ヴォーカル。
いや、カッコイイな! 誰だろう? と思って、思わずそわそわとキッチンから洗いもの
の手をとめてコンピューターで検索しようと部屋に入れば、すでに似たようなことをして
いるヤツが ・・・。いやあ、カッコイイね! と息子。
もちろん、何から何まで趣味が同じってわけじゃないけれど、お腹にいるときから私
の聴く音を聴いてきた息子だけに、そうとう好きなものの傾向は似ているわけで・・・
そんなわけで2月の誕生日に3枚まとめて買ったニコラのアルバム。
届いたのはちょうど今日みたいな雨の休日で、「さて。何から聴きたい?」と息子に訊
けば、「ジェット・サウンズ」とすかさず答えが返ってきた。
このJet Sounds Revisited。
まずかけた瞬間に思うのは音(録音)がすごくいいってことで、それは当然と言えば当
然で、これは去年から何かと気になっているイタリアのJAZZレーベル、Schema(スキ
ーマ)のアルバムなのだった。実はニコラ、ギタリストでありながらスキーマ・レーベル
の発足にも参加し、スキーマの看板アーティストとしてDJ、コンポーザー、プロデュー
サーと、マルチな活躍をする才能の持ち主。ジャズ、ラウンジ、ハウス、ブラジル音楽
などが混然一体となるニコラの作る音楽を、一言で言うとしたらスタイリッシュ。
とにかくセンスが良くてクールでカッコイイとしか言いようがないのだけれど、私が買っ
たこのアルバムはJet Sundsのリミックス・バージョンだったらしく、よりダンサブルな仕
上がり。ちょっと矛盾した言い方にも聞こえるかも知れないけれど、モノトーンでありな
がらカラフルなサウンド。今回買った3枚の中ではこれが最も妖しくて、不穏で、映画
的で、聴いていると日の暮の見知らぬ都会のラビリンスに迷い込んだ異邦人のような
頼りない気持ちになってくる。折しも不安定な春先の暗い雨の日曜日なんかに聴いた
ものだから、いっそうそんな感じがしたのでした。これはどうやっても晴れた日より曇り
か雨の日、昼より夜の音楽。
そして次に聴いたのが最新タイトルとなるトップに掲げたRITUALS。
これはラジオから流れてきたヴォーカル・チューンが入っているアルバムで、5人の
ヴォーカリストをゲストに迎えてのヴォーカル中心のアルバム。疾走感のあるスリリ
ングなサウンド、シルキーなヴォーカル、一見すごく洗練されたお洒落な音楽に聞こ
えるのだけれど、でもそれだけじゃなくて(息子も言うように)『JAZZが死んでない!』
そこが要でニコラのすごいところだと思うけれど、それは彼が実は正統的な生粋の
JAZZ人だからじゃないかと思う。曲もどれも良くて、これがほとんどすべてニコラ自
身の作詞・作曲によるものというんだから、すごい才能です。ただ、ごく個人的なこと
を言えば、惜しいかな、ヴォーカルの趣味が私には合わないってことだろうか。
ここでの白眉はやっぱり最初に聴いた『I See All Shades of You』。
アリーチェ・リチャルディというイタリア人ヴォーカリストが歌っているらしいのだけれど、
彼女はとてもいい。エアリーで軽やか、フェミニンで爽やかな色っぽさがある。久々に
とてもとても気に入りました。ヴォーカルは難しい。ヴォーカルの好みは個人の生理的
感覚によるところが大きいと思うから。
次にいいのはジャイルス・ピーターソンに絶賛されたホセ・ジェイムズなんだろうけど、
彼が出てくると一気にゴージャスでグラマラスな、まるで昔のコットンクラブみたいな雰
囲気になっちゃうのは、たぶん好みの分かれるところでしょう。私はよりナチュラルに
哀愁たっぷりに歌っている『Like Leaves in the Wind』が好き。
そしてこのアルバムで聴かれるニコラ・コンテのギターは、暗いトーンで地味だけれど
陰影が深くて印象的な音。
ラストの3枚目は、OTHER DIRECTIONS。
ブルーノート・レーベルだけあって、この3枚の中では1番ジャジーなアルバム。
といってもやっぱりニコラ色、ニコラ・スタイルのJAZZであって、1曲が4分からせいぜ
い6分くらいにまとまったキャッチーな楽曲作りで、ところどころまったりしたヴォーカル
チューンも入るけれど、時に軽いスキャットだけがフィチュアーされたボッサ、全体的に
はアップテンポな曲が多くて、とても聴きやすい。全13曲中11曲までがニコラのオリ
ジナル。10曲にヴォーカルが入っていて、ここでも全然ヴォーカルの声は趣味じゃな
いのだけれど(好きなのはLUCIA MINETTIだけ)、ここまでヴォーカルが好きじゃなく
ても聴けてしまうのは、もうニコラの圧倒的なサウンド・センスによるものとしか言いよ
うがない。それにミュージシャンたちは言うまでもなく最高。サックス、ベース、どれをと
ってもいいのだけれど、やっぱり私はタイコのロレンツォ・トゥッチ(っていうのかな?)
とピアノのピエトロ・ルッスですね。彼らの演奏が最高なのは当然だそうで、イタリアの
ジャズ・シーンのエリートたちだそうです。(このあたりは私はあまり興味がない。)
ここでは結局紹介しそびれてしまったのかと思うけれど、1番最初にスキーマから買っ
た現代クラブジャズ・シーンにも通用しそうな60年代のケニー・クラーク フランシー・
ボラン セクステットを彷彿とさせるような(攻めモードの)JAZZでありながら、そこに
今風のラウンジ的リラックス感と、音楽のジャンルをやすやすとクールに超えてしまう
リミックス的センスが入り混じったのがニコラの音楽と言えばよいだろうか。
とにかくカッコイイです。
ニコラ・コンテを聴きながらJAZZの可能性を感じるとともに、どうしてこれが日本でや
れないのかな、とも思う。レベル的にはまったく問題なくやれるミュージシャンはいっ
ぱいいると思うし、ヴォーカリストだって隠れた逸材がいると思うんですけれどね。
要はセンスがあって売れるコンセプトを持ち(と言うといやらしいかなぁ)、一家言ある
一筋縄じゃいかない日本のベテラン・ジャズ・ミュージシャンたちをエキサイトさせるだ
けの情熱と実力のある敏腕プロデューサーが必要ってことでしょうか。
ぜひとも出てきてほしいもんです。できれば若い世代じゃなくて、歴史を持ったニコラ
くらいの渋い世代で。















































































最近のコメント