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2008年7月30日 (水)

大口純一郎トリオ@サムタイム

Junichiro_ohkuchisometime

さて、月曜の夕方、働く主婦の私としてはいつもながら家を出る直前まで時間との戦

いをしていて、アタフタと家を出る。いつも悠々としているのは子どもばかりなり。

スタートの時間をちょっと過ぎてサムタイムに着くと、ちょうど最初の1曲めが終ったと

ころらしかった。この日のメンバーは大口純一郎(p)、米木康志(b)、原 大力(ds)

どの方も私には初めて。通された席はピアノの右斜め後ろ。ピアニストの指までがは

っきり見える位置だ。

そして、ピアノの前でグレーの帽子をかぶった大口さんは、土曜日の夜に見た大口

さんとは全くの別人だった。テイク・オフ直前の飛行機みたいな緊張感。当然のことか

もしれないけれど、うはぁ~、オンとオフでミュージシャンってこんなにも変わるのか、

と思った。

ドラマーをじっと見据えていた大口さんのカウントで演奏が始まる。強いアタック。

指先にまで力が漲っているのがわかる。そして、アップテンポになってくると足をバタ

バタさせてリズムをとるのだけれど、そんなに強く打ち付けたら足がどうかなるんじゃ

ないかというくらい強く床を蹴る。なんというか、凄くパワフル。そしてドラマーがまたす

ごい。こういうこと言ったら怒られるかもしれないけれど、ビースト(beast)系。

あの荒巻さんがドラマーになったんじゃないかと思ったくらいだ。唸るし吠えるしプレイ

がヒットすると豪快に声をたてて笑う。笑うドラマー。びっくり! 

そして、このドラマーの大力(だいりき、すごい名前!)さんが煽る。

でもよく見たら、ドラマーが煽ってるのか大口さんが煽ってるのか判別つかなくなった。

それくらい、あ・うんの呼吸だってことなんだけど。MCもほとんど無いまま続けて4曲。

お陰で何をやったのか頭からぶっ飛んでしまった。

そして、聴きながら、こういう音楽をやっていたのか、と思った。

大口さんは自分を断崖に追い込んでフレーズを叩き出すタイプのピアニストに見えた。

ピアニストがとても孤独に思えた瞬間。

事前に大口さんのホームページを見たらボサノヴァ・フリークとあって私はますます親

近感を持ってしまったのだけれど、こういう緊張度の高い人だからこそブラジル音楽、

ボサノヴァに惹かれるんだろうなぁ、とか。そんなステージの緊張感をもろともせず、

私のひとつ空いた隣りの席には頭のネジがユルそうな男女の2人連れ(まだカップル

ではないらしい)がいて、演奏中も頭の悪そうな会話を大声でしていてまいったのだけ

れど(「オレって危険な男だぜ」と言うから思わず彼を視界の隅に入れたら、確かにそ

の体重は危険かも、って思いました)この日は他にも誕生日の彼女を連れてきたカッ

プルがいて、ファーストセットの後にその女性のために大口さんがバースデイ・ソング

を弾くなんて一幕もあり。

そして、それが終るなり大口さん、途中でお知り合いとおぼしきご年配のご夫婦と青

年が1人私の後ろにきていたのに、客席もろくに見ずに控えのコーナーに戻ると何や

ら慌しく外に出て行ってしまった。戻ってきてやっと彼らに気づくと「やあ、来てくれてた

んですか。まぁ、お揃いで。僕は今日は飲めない。チキショー」なんて言っていて、更

に私に気づくと「あれ?おとといの今日でお早いことで」などとおっしゃる。「だって帰り

際に月曜のサムタイム来られる? って言ったじゃないですか」とやんわり言うと「そう

でしたっけね。でも、まさかほんとに来てくれるとは思わなかった」と、大口さん。

Junichiro_ohkuchisometime01

デートコースのカップルがみんな帰ってすっきりした頃にセカンド。

いつも思うことだけれど、セカンドになるといきなり音の聴こえ方が変わる。

大口さんの指も柔らかく、ファーストセットよりリラックスしたように感じた。確かギル・エ

ヴァンスとデューク・エリントンとセロニアス・モンクの曲、ラストにマイルスのスタンダー

ド『I could write a book』をやって、よく知っているスタンダードのせいか最後の曲のメ

ロだけが頭に入ってきた。終った後、思わずセカンドから隣りの席にいた年配の男性

に「すっごくパワフルですね」と言ったら、「凄いですよね。あれのどこが調子悪いんだ

か。彼は天才ですよ」とその男性は言った。演奏中、私の左隣でじーっとピアニストの

指先を見つめていたから、コアなファンかと思ったチューリップ・ハットの青年は、なん

と大口さんの息子さんだった。年配の女性が教えてくれた。芸大の音楽科を出てファ

ッション・ショーや演劇の音楽を書いているという、なかなか魅力的で面白そうなその

息子さんに、今までJAZZピアニストって難しいと思っていたけど、この間の花火大会

で大口さんがあんまり面白くていい人だったから今日初めて来たんです、と言ったら

彼は「そりゃ、すごく珍しいパターンです」と言って笑った。ふだんの大口さんは息子

から見てもやっぱり難しい人なのだそうだ。「最初にくだけたほうを見ていて、後から

こっち(プレイしているところ)を見た人ってのは、今までいなかったんじゃないかなぁ」

ってことだそうだ。息子さんにそう言われると、なんだかとっても得した気分ですね

そうこうしているうちに妙齢の雰囲気のいい女性が近くにやってきたと思ったら、息子

クンが「母です」と紹介してくれた。この日はご家族3人で仲良くお帰りになったんでし

ょう。ライブに家族が来てくれるなんて、大口さん、しあわせですね。

最後のセットが1番良くなるだろうとは思ったけれど、息子君に「すごくパワフルでいい

演奏だったとお伝えください」とだけ言って、私はセカンド・セットでサムタイムを出た。

いつか、この日みたいなテンションの高いインプロヴィゼーションじゃなくて、大口さん

がとリラックスしてブラジル音楽をやっているところが聴きたいな、と思う。

できれば『オ・グランジ・アモール』かなんか。

結局また長くなったけれど、下はとても雰囲気のあった長髪のベーシスト、米木康志

さん。

Yasushi_yonekisometime

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