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2008年6月30日 (月)

ブログ3周年とこれから。

08lilac_roseevelyn

さて、先日お知らせしたとおり、今年6月でこのブログも3年になりま

した。思えば、会社でHPを作ると言われて、それなら自分達で簡単

にアップデートができてコストがかからないブログdeホームページ

したらと提案したら、案の定「ブログって何?」という質問が返ってき

て、これはもう説明するより見せたほうが早い!と作って見せたのが

始まり。ダミーとはいえ作ってしまったものは始めてみようか、言葉よ

りビジュアルを意識することで右脳活性になるかもflairなんてところで

1テキストに最低1フォトというのを決め事にして始めて、最初は苦労

しながらも毎日更新すること1年。しだいに自由に書けることだけが

楽しくて、いろんな書き方がしたくて、かなり一生懸命遊ぶこと1年。

毎日のように写真を撮ることや文章を書くことは、確かに私の日常を

活性化してくれたように思う。書くということは自分の頭を整理するこ

とに他ならず、また書くことで初めて導かれる答えというものもあって

ときにそれは自分でも小さな驚きでした。そして更に、書いてしまうこ

とで古い記憶の断片を捨ててしまえるように思えて、せっせと捨て続

けた1年。徐々に人に知られるにつれ、ここで書くことにもだんだん不

自由さを感じるようになったのと同時に、結局どんなに書いたところで

捨てられるものと捨てられないものとがあって、そうそう簡単に苦しみ

が薄まることはないんだと気づいたこの頃。

このそうきちのCOLORS.というのは広義の要素を持ったブログ

だから、日々ネタが尽きるということはなく、このまま延々と続けるこ

ともできるのだけれど、だからってそんなことにどれだけの意味があ

るのか、とか、時間ばかりかかってサクサク動いてくれない画像ソフ

トを使っての日々の画像アップロードに、少々疲れを感じてもいたこ

の頃。ほとんど良いことばかりのブログではあったけれど、一方で自

分のプライヴェートを明かす、という、ふだんおよそごくごく限られた人

間にしかしないことをしてきたという意味では、自分の最も嫌いなこと

をしてきた3年間と言えなくもないのかも知れない。そして何より、単

純に自分のアウトプットとして始めたブログだから、最初はブログで友

達ができる、なんてことはおろか、コメントがくることも考えていなかっ

た私なのに、副産物というにはあまりに大きな、そして多くの出来事

や出会いを生んでくれたこのブログは、もうすっかり当初の目的以上

のことを果たして充分かな、という気もしています。

そんな気持ちの変遷を経て、この6月いっぱいをもって私の日々の日

記であるところの更新は終わりにしようと思います。

前にこのことを少しお知らせしたら、このブログがネット上から完全に

消えて、私とも音信不通になると思った方が早々にちょいと深刻な記

事を書いてくださったりしたのだけれど、そういうことではなくて、ブロ

グの中のいくつかのカテゴリ(それも曖昧なままにしておこうと思って

ます。実はよく考えていないのです)を残して、日々のアップデートだ

けをやめる、ということなので、滅多に更新しない方よりはまだ私の

ほうが更新頻度が高いかもしれません。音楽、バラ、詩、アート?

掲示板としてのお知らせと、それから私の本業である人の健康関連

についても、お伝えしたいことがあれば書くかもしれません。

そんなところで、これからはますます気儘な更新になるとは思います

が、どうぞよろしくお願いします。

いま現在のアクセス17万と少し。

途中、急激にアクセスが増えたこともあったけれど、基本的にはコン

スタントに毎日100人くらいの方が作ってくださった記録です。私の

拙い写真と文章に今までよくつきあってくださいました。ほんとに感謝

です。これも前にチラっと書きましたが、昨日CDラックの中を整理し

て、もうこれは私のところになくてもいいと思うCDをピックアップしまし

た。ブログ3周年記念感謝棚卸しってことで、また後でアップしますの

で、よかったらチェックしてみてください。今回もかなり滅茶苦茶なライ

ンナップで笑われそうなんだけれど、もし欲しいものがあったら遠慮な

く言ってくださいね!happy01 

その際、これがこのブログに初めて来たって方でも、しばらくご無沙

汰している方でも、前回もらったよって方でも全然OKです。

ほんとは古くからおつきあいくださっている方々のお名前をここで列

挙したいくらいなのだけれど、そうしなくてもわかってもらえるかなconfident

それでは、これまでの17万クリック、全ての人にありがとう!heart04heart04

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2008年6月29日 (日)

COCOCE☆サマー・セール

Cococe

早いもので、今年も明けたと思ったら(?)早くも夏のセールの季節に

なりました。友人が2月にオープンしたセレクト・ショップ『ココシェ』も、

無事オープンから半年が経ち、初のサマー・セールをやるのでぜひ来

てください、とメールがきたのが数日前。

あいにく今日はどしゃ降りの雨で、癖っ毛の私としては出かけたくな

い天気ではあったのだけれど、自分の服はさておき、こんなときでも

ないと下の女の子にお洋服も買ってあげられないから、と雨のなか

行って来ました。

さて、ココシェはこんなお店です。↑

COCOCE とロゴの入ったターコイズの屋根が目印。

下高井戸から三軒茶屋を走るたった2輌のなんともスローな電車、

東急世田谷線の線路脇にあって、松原駅から歩いてすぐです。

かつて、ニコル、ポール・スミス、マーガレット・ハウエルなどなど、

数々の有名デザイナーズ・ブランドのショップで働いていた友人が選

んだ、ちょっと癖があってこだわりがある、それでいてリーズナブルな

洋服と小物のショップです。

まだ夏はこれから。お近くの方はぜひセール期間をお見逃しなく!

ちなみに、うちの娘は(愛読している)装苑に載っていそうな手仕事

感覚の鳥のアップリケとシェルや刺繍の付いた凝ったTシャツと、鉤

針編みのモチーフが付いたショート・パンツを買いました。お洒落した

い年頃の女の子、雨のなかわざわざ行った甲斐がありました。下は

帰り際、そうだ、店長の写真も撮っておこう!と言ったらイヤダと言っ

てドアの影に隠れたショップ・オーナーの写真。おかげでスレンダー

に撮れてます。実際にスレンダーかどうかは行って確かめてね!smile

Cococe_01

COCOCE  東京都世田谷区赤堤3-3-16

telephone 03-6802-5346

mail cococe@silk.plala.or.jp

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2008年6月28日 (土)

2番花の朝

08duchesse_de_brabant_03

バラのセカンド・セット。

ドゥシェス・ドゥ・ブラバンが軽いボサノヴァなら、

シャルロットは、モーツァルトのクラリネット協奏曲ってとこ?

6月の朝に咲いたふたつのバラ。

08charlotte_08

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2008年6月27日 (金)

猫本なんか買ってしまった/一期一猫 街角の記憶

Ichigoichineko_2

私は猫は飼ってないけれど、ついうっかり買ってしまうもののひとつ

に猫の写真集がある。世の中に猫の写真集ほどいっぱい出版され

ているものもないと思うけれど、もちろん猫ならなんでもいいというわ

けではない。猫を飼っていない私でも、つい買ってしまうほど魅力的

な写真集でなければいけない。

春頃、リブロに行ったらたまたま洋書フェアがやっていて、閲覧用の

見本をさんざん眺めた末に買ったのは、素晴らしく色彩豊かな、まる

で絵画のようなギリシャの景色のなかで優雅に遊ぶ美しい猫たち。

本屋さんでさんざん眺めて買って来た後は、ビニールパックされたま

まの状態で、一度も開いていない。私がつい猫本を買ってしまうのは

実は猫のことばかりじゃなくて、私のまわりにいる猫好きの友人のこ

とを思い出してしまうからで、このギリシャの猫写真集は、Hさんの誕

生日に送ってもいいと思って買ったのだ。

そして昨日届いたこの本。『一期一猫(いちごいちねこ)街角の記憶』

は、先日たまたまTVを見ていて知った。このブログにもリンクしてい

る、妙齢のとても素敵な女性フォトグラファー、酒井久美子さんが世

界中を旅して撮った猫の写真集。ロンドン、パリ、ウィーン、ベネツィ

ア、ハワイ、リオ・デ・ジャネイロ、エトセトラ。それぞれの国のそれぞ

れの景色の中で、猫はその猫独自の、でもとても普遍的な猫時間を

生きているようだ。そこへ、偶然通りかかったエトランゼのフォトグラ

ファーの時間がシンクロする。その一瞬をカメラは捉えている。

Ichigoichineko_01

猫を飼ってない私がこんなことを言うのもなんだけれど、たぶん猫好

きは、猫と1人:1人の関係が築けるところがいいんじゃないかと思

う。(1人:1匹じゃなくて、あくまで1人:1人。)犬のような明確な主

従関係もなく、両者の間での力関係はしばしば逆転する。(私の友

人のライターなんか、夜遅く帰ると猫のお母さんがお小言を言うから

帰る、なんて言うのだ。)その一方的に自分が相手を庇護してるんじ

ゃないという感じ、対等な距離感が心地良いのじゃないかと。

酒井久美子さんの写真を見ていると、猫と確実に頼りなく心細い存

在である1人と1人として出会っていて、その瞬間に通じた柔らかい

ものが写真に溶けているように感じる。

Ichigoichineko_02

やっぱりプロは上手いな、と思うのは、自分の視角に猫が現れて消

えるまでほんの一瞬、というときだってままあったろうに、ちゃんと背

景まで計算されてフレーミングされていることだ。そして、こういう写

真集を書うと必ずちょっとピンボケみたいな写真も載っているのは、

よくできた幕の内弁当みたいに100パーセントぎっちり完璧な写真

が1から10まで並んでいるより、むしろこの方が見ている側の意識

に風穴が開いて、アーティスティックでいいのかなってこと。それにボ

ケた写真ってのは意外に人間の記憶に近いかもしれない。

写真集に付いていた帯の裏にこんな風にあった。

「もう会えないかもしれないけど、またね」

異国の名もなき街角で、旅に疲れた雑踏の中で、

ふいに迷い込んだ不思議な路地で・・・・・・

ふと目があった瞬間の喜びは、一瞬にして別れの切なさへ変わ

る。だいじょうぶ、今日もあの猫(こ)は、

世界のどこかで、きっと気ままに暮らしてる。

今でも鮮明に憶えているけれど、子供の頃、母方の叔父達と日光へ

キャンプに行って、草むらの中のストレート・ロードを先頭切って歩い

ていた私は、道が二股に分かれているところで立ち止まった。叔父に

「どっちに行くの?」と聞いたら「Sの好きなほう!」と言われてチョイ

スして歩き始めたのだけれど、しばらく選ばなかったほうの道が気に

なって仕方なかった。いま選ばなかった方はもう2度と行かない道な

んだと思うと、妙に後ろ髪ひかれた。そして子供ながらに、きっとずっ

と後になっても、今日の行かなかった道のことを思い出すんだろうな

あ、と思ったときの妙な感覚。旅にはそんな感覚がつきものだ。でも

本当は人生そのものがそういう旅なんだ。行かなかった道と、もう会

えない人ばかりで彩られた。それこそ一期一会。

切なさに負けそうだけれど、1人:1人で出会った人間が猫に、

「もう会えないかもしれないけど、元気でね」 と言う。

すると猫も首だけ振り返った顔でこちらをじっと視つめて、

「あんたもね」 と言う。

「ここの水はあんたにはあわないから、飲んじゃ駄目だよ」

「うん。ありがとう」

そして前を向いたらこう思う。

だいじょぶ、あのこはこれからもきっとここで元気にやっていける。

私も行方知れずの猫について思いを馳せるとき、次からはこんな風

に楽天的に考えようと思うのだ。毎日を笑って暮らすために。

ちなみにこの本はMちゃんのところに行くだろう。今年まだ誕生日プ

レゼントをあげてなかったし。それに最初のページの猫の写真が、

彼女の猫にそっくりなんだもの。

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2008年6月26日 (木)

ライラック・ローズ

08lilac_rose

東京は今日、梅雨寒。

4月上旬の気温だそうだ。

長袖Tシャツを着ていても外ではちょっと寒いくらい。

ストールを巻いて買い物にゆく。

今日はめずらしく息子が朝からバイトでいないので仕事がはかどる。

でも1人のときの私のお昼ご飯といったらひどいもので、仕事に集中

しだすと作るのはおろか食べるのさえ面倒臭くて、いっそお腹が空か

なければと思うけれど、やっぱり空くので仕方なく作る。簡単なパス

タを作って食べた。

ひんやりしたベランダに出ると、ライラック・ローズが咲いていた。

春に房咲きの蕾をいっぱいつけながら、天候不順でボール化して全

滅だったから、これがこのバラの最初の花だ。

ライラック・ローズの1番花は、弁質が厚くしっかりしていて色も濃い。

退廃的な午後の光のなかシュミーズ姿で窓辺に立つ女みたいで、こ

んなブルースが似合いそうなバラ、私の好みじゃないわってあなたは

思うかも知れない。けれどそんなに簡単に答を出してはいけません。

2番花以降のこのバラは、弁質も薄く軽やかで、色も淡くて儚いので

す。昨日の夢みたいに。

・・・・・・・・・・・・

愛は気長に待つこと。

08lilac_rose_01

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2008年6月25日 (水)

緑のトマトと切れない包丁

Green_tomato

「おかあさん、今年つくるのはトマトだよ!」

と娘に言われたのはまだ寒い頃。

それから先日帰るなり「ハイ!」と手のひらに緑のトマトを2つ載せら

れた。思わず「これって食べられるの?」と聞いたら、娘はちょっと変

な顔をして「これは主茎に栄養がいくように取ったんだよ」と言われ

た。なるほど。しゅけいか。主な茎ね。

私はトマトが大好きなのだ。誕生日に友達がオーダーでしか買えな

いスペシャル・トマトを箱ごと持って来てくれるくらい。いつかイタリア

に行って、生まれたての赤ちゃんほどもあるモッツァレラ・チーズと、

どこだかの農場でしか買えない真っ赤なイタリアン・トマトをダース買

いするのが夢だったりする。それで、トマトはたいていの場合、皮を剥

いて食べるけれど、ずいぶん前からめっきり包丁が切れなくなってい

た。結局いつか近所の包丁研ぎのおじさんに出さないまま、月日が

経ってしまったのだ。あれからどれくらい経ったかなんて、考えるのも

おそろしい。せっかく木屋で買った高い包丁もこれじゃ台無し。最近じ

ゃ、よっぽど細心して切ってもキャベツの1番下の1枚、長ネギの外

側の1枚がよくあるマンガみたいにビロビロ~ンと繋がっている始

末。こりゃ、いけません。

仕方ないから木屋でまた新しい包丁を買って、そのついでに今のを

研ぎに出すかなぁ、なんて考えていたところ、休日のよく晴れた日に

前の通りのベンチにブックエンドみたいに座っている老人が2人いる

と思ったら1人は包丁研ぎのおじさんだった。思わず自転車を止めて

「久しぶりだね。突然いなくなっちゃったからどうしたかと思ってた。元

気?」と聞くと、「まあ元気」と答える。今どき、道端で包丁を研ぐのも

いろいろ大変なのだそうだ。市がいいと言っても東京都に駄目だと言

われたり、近隣の住人に苦情を言われたり。そうこうするうちに身体

を壊したりしていたのだそうだ。真夏の炎天下、真冬の凍えるような

日に公園の石畳に布1枚敷いて包丁研いでいれば、そりゃ病気にも

なるでしょう。

「私の包丁、ついにトマトの皮が切れません、それにお恥ずかしいこ

とに歯こぼれもしています」と言ったら、「いつでも研いであげるよ」と

言う。近所に住んでると言ったら、家まで取りに来てくれるというの

だ。実際そういうお宅がいっぱいあるらしい。「それじゃ近々」と言っ

て家の目印と部屋番号を教えて帰った。

それから、そんなことすっかり忘れて床に仕事の資料をとっ散らかし

てボケボケしていた2日後の午後、玄関のチャイムがピンポンと鳴っ

て息子が出るとそのおじさんだった。わたしゃ、またてっきり家で研ぐ

のかと思って「いま家散らかってるけどドーゾ」と言うと、包丁だけもら

って帰ってまた持ってくる、というではないか。そんな、大変じゃない

んですか?と言ったら、いつもやっていることだと言う。手ぬぐいに包

んで、それじゃお願いします、と渡した。そして、おじさんがまたやっ

てきたのはものの2時間くらい経った後だ。暑い日だったので家に入

ってお茶を飲むように勧めたけれど、辞退するので玄関先で麦茶を

出す。「ほら。すっかり直ってるからね」と出された包丁は、ほんとに

すっかりきれいに直ってました。

おいくらでしょう? と聞くと「千円」と言う。わざわざ家まで取りに来

て、どこかで包丁研いでまた持って来てくれて、それで千円かと思っ

たらなんだか申し訳なくなったので、「頭に巻いてもかわいいよ」と言

ってお金と一緒に使ってない新しいかまわぬの手ぬぐいをあげた。

おじさんはいつも頭にタオルを巻いているのだ。聞けば元は大工さ

んなのだそう。70歳。働き者です。

そして、これからは3ヶ月おきに包丁を研ぎに来てくれるらしい。な

んだかそれって贅沢じゃないですか? お抱え包丁研ぎみたいで。

つまり私の包丁がまたあの状態になることはもう2度とないってこと

だ。素晴らしい!

母が生きている頃はよく、お塩を切らすとお金も無くなるから絶対に

塩を切らすもんじゃないとウルサク言われたものだけど、切れない刃

物というのも金運が逃げるのだそうだ。今まで逃げまくりでしたね。

研いでもらった包丁は力を入れなくてもスッと切れ、エッジが効いて、

今までのアレはなんだったの?!というくらい怖ろしいほど切れて、

頭の中で意識の変換が起こりそうなくらいなのでした。

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2008年6月24日 (火)

麗しの君!

Sakuranbo_01

今年もさくらんぼの季節が始まりました。


梅雨の晴れ間のキラキラする午後、

さくらんぼを買って帰る。

太宰の時代からさくらんぼは贅沢品。

口に含むとあっけないほど儚い味なのに、

シーズンに1度は買わずにいられない。

買い物カゴに入れた瞬間から、なんだか心がうきうきしてしまう。

人にもそんな存在の人っていますよね。


佐藤錦は

とっても甘かった。

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2008年6月23日 (月)

2番花の季節

08heritage_07

空はもの思わし気に重く堆積するグレーのグラディエーション。

梅雨のさなかにゆっくり2番花の季節が始まった。

先頭を切ったのはだいぶ小ぶりなヘリテイジ。

私の部屋にはポール・デズモンドの柔らかなアルト・サックスの音が

流れていて。

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カフェ・ラグラスで

Laguras

梅雨の晴れ間が続いた先日、カフェ・ラグラスでバラ友ブロガー、ルイ

さんと会った。私が10年以上持っていて、思うように咲かせられない

まま終ったバラ、ジャック・カルチェを今年ルイさんが見事にバラ本通

りに咲かせていたので絶賛したら、「なんならさしあげましょう」とあっ

さりおっしゃるので、それなら代わりにルイさんが欲しいと言っていた

スウィート・チャリオットが2株あるからひとつさしあげましょう、というこ

とになったのだった。

カフェ・ラグラスは家から自転車で20分もかからない水道道路沿いに

あるガーデン・カフェ。まるで個人宅のような庭には、季節の花やハー

ブがとても自然な形で栽培されている。

Laguras_02

Laguras_03

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さてイタリアの食材、これはなんだっけ?

Laguras_05

白い、清楚な花。

Laguras_06

私のほうが少し早く着いたので庭を眺めていたらルイさん到着。

そしてめでたくバラのトレード成立。

このルイさん、ほんとに薔薇時計で生きているような方で、先日行っ

たロザリアンの聖地『草ぶえの丘』が素晴らしいからぜひ行ってくれ

と強力に勧めるのだけれど、なんと片道3時間もかかるんですって。

「バラ見るだけで3時間もかかるなんて嫌ですね。私だったら海見に

行っちゃいます。片道2時間もかからないもの」と言う私の言葉にも

ひるまず、でも行けとおっしゃる。

なら、ツアーでも組んで行きますか? 賑やかに。

ってことで、行きたい人は手をあげてくださいね。(私の気が変わらな

いうちにコメント欄に)。集団行動がとっても苦手なルイさんと私です

が、もうこの際、私が幹事を買ってでましょう。マジです。

そして大変マメでもあるルイさん、「ブログ3周年らしいのでプレゼント

があります」とくださったのがこれ ↓

Laguras_07

たしか姫草でしたっけ。山野草だそうです。挿し木をしたんですって。

バラは手はかかるけど人が思うよりずっと強くて、私と同様タフなサ

バイヴァーだからなんとかやれているけど、こういうか弱そうなのは

私はすぐに枯らしてしまいそうなんですけど・・・。はたして。

そして交換したジャック・カルチェ。

Jacques_cartier_01_2

銅のネームプレートが付いて。

Jacques_cartier_2

「ひとつ花もついているんですよ」とルイさんは言った。

それはもう終わりかけだったけれど、とても強く香った。

私のベランダでもきれいに咲いてくれるだろうか。

私は土地に縛られるのも嫌いなので家が欲しいとかいう願望もあま

りないのだけれど、小さいけれど気持ちの良い庭があって、部屋の

中から緑を眺めてお茶できる環境はいいなと思う。

ラグラスはそんなカフェです。西武新宿線の小平駅から約5分。

近くに来たらお寄りください。

Laguras_08

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2008年6月21日 (土)

ミッド・サマー・ナイト

Blue_sea

Sさんを色にたとえるならブルー。

それも深いブルーじゃなくてアクアマリン。

光の角度によってグリーンにも灰色がかっても見える。

どうやっても彼のイメージは海だ。

私は彼の描くおっきな海の絵が欲しいんだ。

私の殺風景なリヴィングの白い壁に。

もうわざわざ遠くまで海を見に行かなくてもいいように。

私の席からいつでも海が見えるように。

いつか買うからスペインに全部送ってしまわないで、1枚だけでも残

しておいてくれないかと言いたかったけど言えなかった。そんないつ

になるかわからない約束なんて。

今日ミッド・サマー。1年でいちばん昼が長い日。あいにく曇り空だっ

たけど、太陽の光の分子は思うさま私に降り注いでいただろう。

夜遅く携帯が鳴って、どうせこんな時間に人の携帯鳴らすのはAちゃ

んだろうと思ったら、Sさんで驚いた。ディスプレイに浮かぶ、久しぶり

に見るフルネーム。もう彼の笑顔を頭で思い浮かべようとしても、すっ

かり輪郭が薄れてしまってマイケル・フランクスの昔のアルバムの写

真とダブっちゃうんだけれど。でも声はそのままだ。

Sさんはテニスも陶芸もまだ続けているらしい。私があげた海のような

色の青織部の皿もよく使ってくれているらしい。前はたまに電話をし

ても電話をもらってもお互いふざけながらどこか緊張してた感じだけ

れど、今はもうそんなこともなくなって、もしかしたらやっと友達くらい

にはなれるんじゃないかと思ったりして。

思いつきで小さな花器を作ってくれないかと言ってみた。

私の薔薇に合うように。

「わかった!」とSさんは言った。

ちょっと酔ってたみたいだったけれど、もし忘れなければそのうちきっ

と彼はどんな花器を作ろうかとイメージするだろう。それから私も彼が

どんな花器を作るか想像してみる。それからその花器に薔薇をいけ

たところも。

これってちょっと素敵じゃないか?

甘い砂糖菓子のような想像。

いつも夏の前になると起こるちっちゃなミラクル。

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2008年6月18日 (水)

予期せぬ来訪者

Tokage

昨日の夜中、ブログのテキストを3分の2くらい書いて席を立とうとし

て絨毯の上をよぎった黒い影に我が目を疑った。トカゲ???! 

「うっそーん! ・・・coldsweats02

前に住んでた古い一軒家では夏お風呂に入ってると外側のガラス戸

に大きなヤモリがへばりついてお腹をひくひくさせてたり、縁側からカ

エルが素早く獲物を捕まえるところが見られたりするワイルドな環境

だったのだけれど、ここは4階だ。ベランダ側の窓を開け放していた

からきっとそこから入ってきたのだろうけど、何時の間に?

プリンタに差し込んだ紙の間から頭を出してるところなんざ、かわいら

しくなくもないけど、こんなのに部屋の中をチョロチョロされたらたまら

ないから捕まえようと試みる。先日、Yちゃんの家で「トカゲくらい捕ま

えられるよ!」と豪語したばかりの私なのであるが、私はもう子供じ

ゃなくなってました。残念ながら。

なんとか無事に外に出て行ってもらおうと追い立ててたら、机の下の

PCコードがごちゃごちゃしてるところに入り込み、机の下に潜ったら

モデムを倒してその弾みでインターネットが落ちてしまった。それで2

時間もかかって書いた書きかけのテキストはパアになり、ショックで

男友達に電話しようかと思ったけれど、「あなたはそんなことで電話

してきたんですか」と言われるのがオチだからやめにした。

トカゲに素足の上にちょろりんと乗られるのが恐くて、それから椅子

の上に正座して書き直すこと更に1時間。やれやれ。

だからトカゲはまだこの部屋にいる。

「もし、どこかで干からびてるのを見つけたらブローチにでもしたら?

君のその黒いTシャツに付けたら似合うよん」なんて息子には言った

ものの、そうならないことを祈る。そういえば以前、若い女の子に「そ

うきちさんてトカゲに似てますね」と言われて、「トカゲに?私が?!」

と驚いたら吉本ばななの小説『とかげ』の主人公のことだったのだけ

れど、あれって、どんな話だったっけかな?

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2008年6月17日 (火)

ブログ3周年&最高の夜♪

Takeuchi_nao4s_3

昨日はブログ3周年の日だった。そして夜は竹内直カルテットの日。

でもPay Day10日前ともなるとすでにカウント・ダウン状態の超プアな

我が家としては行こうかどうしようか悩む。でも昨日はベースが井上

陽介さんの日だ。しかも平日。平日だと週末より終電が遅いから、サ

ムタイムなら3ステージ余裕でラストまで聴ける! おまけに昨日を

逃すと7月までこのバンドのライブは無いのだ。行きたい!

行こう行こう、行かなきゃ行かなきゃ、でも ・・・

で、けっきょく行く。これが最高によかった!!

サムタイムに10分前に着くと、月曜の夜だというのにすでに良い席

は予約で満杯。相変わらず凄い人気だなぁ。ちょっと早く行ったから

よかったけれど、これじゃ危うく1人だって席につけないところだった。

通されたのは、ステージすぐ後ろのカウンター。

そして始まった曲は『RAPTURE』に入っている『HOME』だ。

この曲って個人的には1日の仕事から開放されて、すっかりリラック

スした気分で嬉々としてトワイライト・タイムの高速をクルマで走って

帰るとこ、ってイメージで、これをライブで最初にやられたらもう満足

して家に帰っちゃうね、なんて前に息子と話していたのだけれど・・・。

そんなことは全然ありませんでしたcoldsweats01

音が出た瞬間、思わず「ああ、直さんだー」と思う、これっていったい

なんなんでしょ。安心感? サウダーヂ? ライブに行って、これが聴

きたかったんだよね!と思う、思わせてくれるのは、今のところ日本

では私には直さんしかいないのだ。そして昨日あの場にいた大半の

人がきっとそんな風に思っていたんじゃないかと思う、1曲目から大

いに盛り上がりました。また井上陽介さんが良いベーシストなのだ。

ディープ・フォレストのような音。聴いていると映像が浮かんでくるよう

なベース。世の中には音楽的な人っていうのがいて、たぶん音楽は

音を出す前からもうすでに始まっていて、その人が楽器を持って立っ

たときもう聴こえてる。そんな風に思うけれど、井上陽介さんはそうい

う人。(と、ここまで書いて、いつか駒形橋の袂で秋山さんがギターか

まえたときのことを思い出した。あのときファインダーの中に流れてい

たのもそういうものだったな。音楽的な人が立っただけで、その場の

景色が音楽的になる。あんな経験は初めてだったけど、とても素敵な

体験でした♪)

話がちょっと横にそれたけれど、昨日あらためて思ったのは、竹内直

さんには確実に人を酔わせる力がある。ジャズって簡単な音楽じゃな

いので、テクニカルだったりロジカルな演奏だったりすると、それがす

ごく良くても2ステージあたりでかなり疲れて、ひどいときは頭が痛く

なって帰って来るんだけれど、それが全然ない。昨日1人でステージ

の間の休憩に間がもたなかったら読もうと思って持って行った大島弓

子の猫マンガのどっかにあった言葉、『心地いいって、何も考えなくて

いいってことです!』じゃないけれど、なんにも考えずに音楽に身をま

かせて酔っていられる。それを最高と言わずしてなんと言おう。

私の席はちょうどサックスの直さんとベースの陽介さんの中間の後ろ

だったのだけれど、2人の背中の色っぽかったこと。特に昨日は陽介

さんの肩がこう、くっと入って横を向く瞬間がとてもよくて「ああっ。こ

の瞬間を撮りたい!」とか何度も思うのだけれど撮れないのだ。全身

耳になってるので身体がすぐに動かないの。

Takeuchi_nao4s01

Takeuchi_nao4s02

昨日は清水絵里子さんも絶好調で、彼女がバンドにすごくいいグル

ーヴを作っていた。絵里子さんのピアノは聴くたびに進化してる。もち

ろんドラムの江藤さんだってすごくカッコイイ。

つまり今の直さんのベスト・メンバーで、最高の3ステージを聴けたと

いうわけ。1番盛り上がったのはセカンド・ステージだったけれど、全

部終ったあとで後ろから聞こえてきたのは陽介さんの声。「初日から

こんなにやっちゃって、明日から8日連続なのにもつかなぁ?」

今日から竹内直カルテットは8日間の九州ツアーなのだそうです。

ミュージシャンってほんとに体力ないとできません。

Takeuchi_nao4s03

個人的にはとても聴きたかったジョビンの曲『Ligia』をフルートで、そ

れから誰かのリクエストでやったこれまた好きな曲(直さんオリジナ

ル)『トンプキンス・スクエア・パーク・セレナーデ』が聴けたのがとて

もよかった。

3ステージ最後まで聴いて、疲れるどころかすっかり意気高揚して闊

歩しながら、来月もまた行こう、それまで頑張って働こう、なんて思っ

て帰って来たのでありました☆

(長くなったのでブログ3周年のお知らせはまた後日。)

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2008年6月15日 (日)

雨のブラウンライス・カフェで

Brown_rice_cafe_2 

雨のブラウンライス・カフェで、『書をつま弾く、そして歌う』のブロガー

calligraphyさんと会った。先日一緒にギャラリーに行けなくなった埋め

合わせにランチでも、なんて誘われたのだけれど、埋め合わせなん

ことはともかく1度は会ってみたい方だったので、雨をもろともせず

イソイソ出かける。

初めて会ったcalligraphyさんは背の高いとてもスレンダーな方で、友

人から聞いていたとおり、落ち着いた日本的な雰囲気の方。いつも

ログで見ている書画や和菓子のパッケージ・デザインのイメージそ

ままの印象だった。

下は、この日のブラウンライスの『日替わり膳』。

Brown_rice_cafe_01

ブラウンライスのコンセプトは"WHOLEFOOD"。素材の良さを活かし

素材まるごとのおいしさを五感で感じよう!ということでマクロビオ

ティクの理念も入っていて、ゆえに私がふだん作って食べている食

事に較べるとだいぶん薄味なのだけれど、こんな風には無理でも、い

つか米は始めたいな、と思う。健康云々はともかく、とても美味しい

ので。ここで楽しくお喋りしながらランチして、けっこうひどい雨のなか

風庵行った。ここには何度も行っているのに、初めてお会いするか

と思う店主の女性がとても穏やかで気さくで素敵な方なのに驚いた。

時代に逆行するような、利益のあまり出そうにない手間のかかる

をされてる素敵な店なので、花好き(特に和の花好き)さんには

ぜひ贔屓にしてほしいと思う店。お花をやっている人はもちろん、

calligraphyさんのように書を書いている人、創作料理、陶芸、日本画

やっている方ならきっと気に入ってくれるんじゃないかと思う。

さて、そしてその後は例のごとく私の好きなカフェでのんびりと。

話は尽ずに夕方ラッシュ・アワーの時間くらいまで過ごしたのでし

た。常日頃思うのは、もちろん必要最低限のお金は必要として、そ

に大切なのは『やっぱり持つべきものは友達』ってこと。私の漠

然としたやりたいことにも強力な助っ人ができたこの日。

有意義でした。

これはcalligraphyさんにいただいたLUPICIAの烏龍茶と包み。

Lupicia

包みの中は彼女の好きなAKEBOSHIのCDだった。

どれも素敵なアートワークス。

Akeboshi

まだ猫のを1回しか聴いてないけど、暗い群青色の空に瞬く星、の

ように繊細な印象の音楽。人から好きな音楽をもらうたびに、自分

の感覚との違いがわかって面白い、と思う。

 calligraphyさん、ありがとねhappy01  またいつか会おう!

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2008年6月14日 (土)

緑に抱かれる

Nogawa_june

六月の瑞々しい緑の中を自転車で駆け抜けてカラーを見に行く。

思わずどこに迷い込んでしまったかと思うような深い緑のここは、東

京23区から西に少しはずれた都下だ。

Nogawa_june_01

産婦人科の母親学級で知り合った友達。

その後わずか数日違いで生まれたこどもが今年二十歳で、彼女との

関係ももう20年になる。

Nogawa_june_02

20年。

ついこの間のような気もするし、遥か遠くの光に満ちた別世界のよう

な気もするし。だからどうしたって彼女に会うと自然といろいろなこと

を思い出してしまう。人と自分を較べてみたってしょうがないけど、比

較的何事もなく平穏にやってこられた彼女と、茨の道の私。

この違いはなんなんだろう? なんて、ね。

私は馬鹿だから辛かったことはみんな忘れてしまって、光の世界は

今でも遜色なく失われた場所にあり、それと背中合わせの苦しみは

いつまでも薄まっていかない。それが苦しいと言ってわかってくれる

人はごくわずかだけれど、わずかにいるだけでもありがたいことか。

と思う。

草ぼーぼーの狭い坂をダーっと下って、ふぅふぅ言いながら上る。

同じ歳の私たち。同じようなラフィアの帽子をかぶって。

梅雨の晴れ間の陽射しはもう夏だ。

水田で遊ぶカルガモにしばし見とれる。

Karugamo_03

Karugamo_02

Karugamo_01

そしてカラー。

Calla_lily

Calla_lily_01_2

カラー自体はもう終りかけだったけれど、 行き帰りの鮮やかな緑と、

太陽の光と、旧友の明るい笑顔にわけもなく癒された。

友達が言うように、いつか一緒に旅をするのもいいかもしれない。

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2008年6月11日 (水)

まるでスプラッシュ!/歌うベーシスト Esperanza Spalding

Esperanza_spalding_3 

あれは5月の休日のことだったかな。

部屋にはめずらしく誰もいなくて、低く流れるラジオを聴きながらのん

びりと1人の休日の午後を過ごしているところだった。ちょっと背中を

伸ばそうと横になってクッションに頭をのせたら一気に睡魔が襲って

きてうとうとしかけたとき、それは聞こえてきた。高音の軽やかで自

在に舞う気持ちの良いヴォイス。若い女の子のポップ・チューンかと

思いきや、バックは完璧なジャズだ。カッコイイ。いやあっ、なんてい

いピアノなんだろう! やってるのは誰だろう? ・・・

歌もさることながらピアノの気持ちよさにそのままズルズル眠りに引

きずり込まれそうになるのを、興味に駆られて無理やり起きた。この

うとうとしかけたときに耳から入ってきて心を捉える音楽ってのがまた

良いのだ。ふだん左脳優位に働いてる脳みそがすっかり右脳優位に

なってるときだから、こういうときヒットしたのはたいていハズレがな

い。ジスモンチが然り。

俄かにむくっと起き上がり、開いたままのラップトップのキーを叩いて

検索して出てきたのは、エスペランサ・スポルディング、23歳のシン

ギング・ベーシストだそうだ。え? 歌いながらベース弾いてたの?

・・・ というわけで、さっそくオーダーしました。Amazon でもまだ輸入

盤しかなくてNYからの直送便。オーダーして1週間で届いた。

そして期待したアルバム(これがワールドワイドでの実質的なデビュ

ー・アルバムになるらしい)『Esperanza』の1曲目は、なんとミルトン・

ナシメントの『Ponta De Areia』(砂の岬)のカバーだ。ラブリーな声!

まるで飛び散るスプラッシュのような瑞々しさ。華やかでありながらプ

リミティブなものも感じさせる。サウンドも良い。知らないミュージシャ

ンながら、バックを固めるのがすごい。ピアノにしたってドラムにした

ってギター、サックスにしたって。もちろんエスペランサ・スポルディン

グのベースも良い。軽やかにスキャットしながらベースを操るところも

すごいけれど、何よりこの人歌が上手い!ちょっと上手すぎるくらい。

その自在さ軽やかさはまさに風に舞う羽のごとし。ラブリーな高音を

生かしての華やかな曲から、シャドウを纏った落ち着いたジャジーな

曲まで。多彩で飽きない。全12曲中、前述のミルトン、それからジョ

ニー・グリーン、バーデン・パウエルの3曲のカバーを抜かして9曲が

彼女自身のオリジナル。

実はこの人、すごい才能なのである。

まだ国内盤が未発売ということでAmazon でも英語の紹介文しかな

いのだけれど、あまり英語が得意じゃない私が読んだところによれば

ベーシストでもありヴォーカリストでもありコンポーザーでもあるエスペ

ランサ・スポルディングのインターナショナルなデビューはHeads Upか

ら2008年5月20日リリースの本作となる、ものすごいインストゥルメ

ンタルの切り口とセイレーン・ヴォイス(とは美しい声で船乗りを誘惑

したといわれる人魚の声)を装備して、3つの言語(これはスペイン語

英語・ポルトガル語あたりか)を操り、作曲とアレンジのスキルはバー

クレーの最も良い要素をプログレッシブに織り成している、云々。

ラジオからちょっと耳に入ったところによると、バークレー音楽院で学

位を得た後、そのままバークレーで弱冠20歳にして異例の講師に抜

擢され、働きながら音楽活動をしているとか。それだけでもすごいけ

ど、おまけにこのルックスだ!

Esperanza_spalding_001_3

『のだめ』のマスミちゃんもびっくり!のボンバー・ヘア。

知的にしてかわゆらしいお顔立ち。スタイル抜群!

と、これだけ揃えば、この夏日本でも発売されるアルバムを機に、あ

のブルーノート東京で来日記念公演が行われるのも間違いないと思

はれる。その日を今から期待したい♡

梅雨時のいま聴くのにお勧めの爽やかでスプラッシュなアルバム!

 Esperanza Spalding  Esperanza

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2008年6月10日 (火)

ドュセス・ドゥ・ブラバンが咲いた。

08duchesse_de_brabant

梅雨の中休みのように晴れた今朝、ドュセス・ドゥ・ブラバンが咲い

た。去年の春とても好調で今季不調だったバラは数々あれど、房咲

きの蕾をたくさんつけながら、ボール化してひとつとしてまともに開か

ずに終ったのが、このドュセス・ドゥ・ブラバンだった。いつまでつけて

いても開かない蕾をあっさり摘蕾して、あまり陽の当たらない東から

日当たりのよい西に場所を移動したら、また一気に蕾をつけた。わか

りやすい。バラに日当たりは何よりだけど、狭いベランダでは全ての

鉢を同じ条件で育てるのは不可能だから、日当たりの悪さをものとも

しないバラってどこかにないものだろうか、と思う。

下はマダム・フィガロ。

08mmefigaro_02

開ききったところは金色のシベが睫びっしりの憂いのある女の子の

瞳みたいで、きれい。

08mmefigaro_03

悲しみに終わりはなく、幸せにはある

悲しみに終わりはなく、幸せにはある

幸せはまるで花びらを滴る

夜露のしずくのよう

静かに輝いてそっと震え

愛の涙のように落ちる

貧しい人たちの幸せは

カーニバルの華やかな幻影

はかない夢の一瞬のために

一年中働き続ける

王様や海賊、庭師

思い思いの仮装をするために

全ては灰の水曜日に終ってしまう

悲しみに終わりはなく、幸せにはある

悲しみに終わりはなく、幸せにはある

幸せはまるで風に身をまかせ

空を漂う羽のよう

軽やかに舞い

短い命を終える

止むことなく風が必要なんだ

僕の幸せには

恋人の瞳の中で夢を見ている

夜明けを探し求めて過ぎて行く

この夜のように

お願い、声をひそめて

彼女が胸躍らせて起きられるように

愛の歓びに満ちたあの日のように

(『Felicidade.フェリシダーヂ』対訳:荒井めぐみ)

(今たまたま書きながらヴィニシウス・カントゥアリアの歌うこの曲を聴

いていたので。深い歌詞だなあ、なんて、私はため息ついてるところ

です。)

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2008年6月 7日 (土)

雨の晴れ間を縫って

08ys_home

Yちゃんが何度目かの引越しを終えたあと電話してきて、新しい電話

番号を聞いたら局番が一緒なので「これからはちょくちょく会えるね」

なんて言ってから早2年と少し。月日はあっという間に経ってしまう。

梅雨になるちょっと前、雨の晴れ間を縫うようにしてYの家に行った。

どんな条件よりも先に『猫と暮らせる』ことを優先するYが選ぶのは当

然一軒家ということになるのだけれど、都下といってもだんだんそうい

う家は少なくなってきた。今回もずいぶん苦労して探したらしい。

Yの引越し先に行くのはこれで3回目だけれど、Yがまるくなったのか

単に物件が無いだけなのか、今度の家はこれまでの家の中ではもっ

とも変わった家だった。日本家屋なんてよっぽどもともとの造りとデザ

インが良くない限り古くなったら美しくない、と思っている私は、経験

的にどんなに掃除をしてもちっともきれいにならならない、あちこちど

んどん壊れてカビが生えてくる古い家にはもう住みたくないな、と思

う。とはいえ、Yちゃんの部屋はどこに行ってもYちゃんの雰囲気なの

だ。そう言ったら、それは持ち物が変わらないからでしょう、と言われ

たけれど。

08ys_home_01

Yちゃんがいれてくれたのは『ろば屋の珈琲』。

それで珈琲に何を入れるかと訊くから「砂糖をください」と言ったら、

「うちに砂糖ってあったかな」と言う。「砂糖が無い家なんて、もしかし

てYちゃん、料理にはいっさい砂糖を使わない主義?イタリア人みた

いだね」と私が驚けば、「あった。黒砂糖しかないけどいい?うちなん

かこれ1袋で1年持つ」と言って1キロ入りの袋を見せる。「信じられ

ない。うちなんか甜菜糖の1キロの袋をひと月で使うよ」と言えば今

度はあっちが驚いて「え~っ!アフリカ人みたいだね」なんて言う。

なんでもアフリカ人に珈琲に砂糖を入れないと言うとビックリされる

のだそうだ。ちなみにイタリア人も珈琲には死ぬほど砂糖を入れた

と思ったけどな。・・・ 久しぶりに会ったからって、特別何を話すとい

うわけでもなく。猫を眺めて過ごす午後。この子はタル ↓

08taru

S:「タルって、タル・ファーロウのタル?」

Y:「タル・ファーロウって誰?」

S:「アメリカ人のギタリスト」

Y:「違う。タルコフスキーのタル。稲垣足穂のタル。でも、いつもご

飯が足らないから、足らずのタルって言われちゃうんだよね~cat

と言うYちゃんもご他聞に漏れずベタベタ・アマアマの猫好きである。

この子は寝てばかりいたミケ。こう見えて1番野生的らしい。

08mike_2 

08mike_01

結局この日も雨が降り出してきて、自転車で30分も走って来た私は

帰りはどうしようかと思ったけれど、それも夕方にはやんだ。それと

同時にどこかに散歩に行ってた親猫ブータンも帰って来た。

雨が降って、いっそう鮮やかさを増したYの庭で。

08bootan

7キロ以上もあろうかという巨体なのに、この子が1番人見知り、かつ

甘えんぼなのだそうだ。猫の性格もいろいろなんだね。

08bootan01

「もうそろそろ帰らなきゃ」と言ったらYちゃんが「今日の夕飯なに?」

と訊く。「昨日タイカレーにしたタケノコが半分残ってるからタケノコご

飯。それに鳥の照り焼きにカブのソテー、お味噌汁」と言ったら、Yは

「タケノコご飯は昨日食べた」と言い、それから破竹のタケノコが美味

しいんだとか昨日のは福岡産だったとかそんな会話をして私たちは

全く主婦だ。私の帰る方向にある魚屋に行くから、と言うYと途中まで

一緒に自転車で走った。近所だからといってそうそう行くわけじゃなく

ても、自転車で行ける近さに友達がいるのはいいなと思う。

今度は晴れた日に猫のオヤツでも持って出かけよう。

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2008年6月 5日 (木)

ローズマリーとヘリテイジ

08heritage_05

ヘリテイジの枝代わりとしてみつかったローズマリーは、言ってみれ

ばヘリテイジの双子の姉妹のようなもの。ヘリテイジがピンクの薔薇

ならローズマリーはそれが白薔薇になっただけで、あとは何から何ま

でそっくりの薔薇なのだけれど、雨のなか昨日咲いたこの薔薇↑ 

てっきりローズマリーだと思っていたのに、鉢の名札を確認したらな

んとヘリテイジでした。ヘリテイジなのに真っ白! 

何ゆえでしょう??? ローズマリーになっちゃった、とか?

下はもうだいぶ小ぶりのローズマリー。

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今年2年目のクレマチスは、だいぶフェンスを覆うようになってきた。

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5月の終わりとともに、春薔薇の季節もほとんど終わり。

けれど早いものはもうすでに2番花の蕾があがり始めていて、これ

から数ヶ月おきに夏、秋と、初冬の頃まで薔薇の季節は続くのです。

下はカメラの中に入ったままアップし忘れていた、5月の終わり頃に

咲いたラストのイヴリン。すごい房咲き。

今日、奇特にも私に薔薇のアンコールをくださったCさんのために。

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2008年6月 3日 (火)

7グラムの結婚

Ring_01

最近テレビやラジオで希少メタル(レアメタル)のことをよく聞くように

なって、同時にプラチナや金も高騰していると言っているのを聞いた

と思ったら、近所にそれを買い取る店ができた。駅に行く途中にある

その店は、店といっても暫定的な営業であるかのような、ごくわずか

なスペースを借りての開業。前を通るたび、店の前に立っている幟を

なんとなく眺めながら通り過ぎていた。

実は私には処分に困っているものがあった。

去年、大々的に家の中を片づけたときもどうしようか迷ったけれど、

結局は捨てられなかった。というか、どう考えたってゴミ箱にポイっと

捨てられるようなものじゃない。誰に何を言われなくても、いつまでも

そんなものを持っているのはいいわけなかったが、かといってどう処

分したらいいんだろう?

ある朝、眠れないまま明け方になってやっと眠り込んだ男は、うっか

り寝坊したことに気づく。慌てて着替えてクルマを飛ばして家人が旅

立つはずの港に向かうが、船はすでに出た後だ。別れた妻と幼い娘

を乗せて。慌てて結んだ男のタイは曲がっている。「あなたはいつだ

ってそんな風ね」と言う妻の醒めた声が聴こえるようだ。落胆と安堵

が半々に混じりあう苦い思いを噛みしめながら滅茶苦茶にクルマを

走らせて、男が行き着いた先は海。途中から激しく降り出した雨も気

にせず外に出ると、男はひとしきりビーチを歩いた後で思い出したよう

にポケットに手を突っ込んで何かを海に投げる。それは放物線の途

中で一瞬きらっと光って荒れた海の中に消える。激しい波と雨の音

以外なんの音もしない。それから男はクルマに戻ろうとして、フェンス

にもたれかかって雨に叩かれたまま、眠っているんだか気絶している

んだかわからない若い女をみつける。

結局ずぶ濡れの女を拾って家まで帰り、目を開いた女が最初に男に

こう訊いて、男が答えるところで第1章が終わり。

「さっき、海に何を投げたの?」

・・・・・・ 昔、書きかけて完成しないまま終った小説の一節。

そう、海にでも投げるのが一番適当なように思われるけど、かといっ

て今さらそんなことをするために海に行くほど私はナルシスト(あるい

はセンチメンタリスト、どちらでもいいけど)じゃないんだ。

今朝、何がどうってわけでもなく思い立って、クロゼットの奥にしまっ

ていた箱を取り出した。久しぶりに箱を開けて、銀色のオイルライタ

ーのような丸いケースをカチっと開けて出てきたそれは、記憶の中の

それとも全然違っていた。人が住まなくなった家はあっという間に崩

れるそうだけれど、いつのまにかすっかり色褪せたそれは、まるで死

んだ猫の首輪みたいにチッポケだった。私はそれをもとに戻すと箱

ごとエコバッグに入れて、いつも近所に買い物に行くときよりは少し

いい服を着て雨のなか出かけた。入り口にある「押してください」と書

かれたブザーを押して中に入ると、予想に反してとても若い男性が2

人、こちらを向いた。明るく清潔な感じのまだ学生みたいな男の子。

思わず「恐い人じゃなくてよかった」と言ったら、「そうですよね。うち

はできるだけ怪しい感じがしないように気をつけてるんですけれど」

と言った。そしてベルベットが貼られた台の上に私が出したものを取

り上げてルーペで刻印を確認すると、それを秤の上に置いた。そして

紙に書かれた表で何かを確認してから電卓を叩き「7グラムですから

こうなりますが、よろしいですか?」と訊いた。「いいです」と私は即座

に答えた。別にいくらでもよかったのだ。買ったときはとても高かった

けれど、それはブランドネームやデザインあってのことで、こんな風に

秤にかけられたらそれはもうただの金属でしかないことはわかってい

たから。「処分に困ってたんです」と私が言ったら、若い店員は「そう

ですよね」と言った。その「そうですよね」がどこにかかってるのかわ

からなかったけれど、若い店員としたらそれくらいしか答えようがない

だろう。ここには年配の女性がよく来るそうだ。30年前の、もうしなく

なった指輪なんかをたくさん持って。ものの10分、いや10分もかか

らなかったか。帰りは来たときよりはすっきりした気持ちでそこを出

た。(でも7グラムだなんて、そんなものだったのか。私の指にはちょ

っとゴツイくらいの指輪だったのに。)私はとっても時間がかかる。器

用でもなければ合理的でもなければ、クールでも全然ない。

夕暮れの町を歩きながら、売ったお金を何に遣うか考えた。

欲しいCDならいくらでもあるからそれに変えようかと思ったけれど、

残るのが嫌だ。ならばライブに行くとか? これがこの世で最も儚く

て美しい芸術=1回限りの音楽に消えるなら、最もふさわしいじゃな

いか。いやいや待てよ。これで髪を切ろう。もともと近々美容院に行

く予定だったんだし。またRが「どしたのおまえ、その髪」って言うくら

い思いきりよく。積年の思いも切った髪とともに消えてお終いだ。

明日は新月だし、ちょうどいい♪

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2008年6月 1日 (日)

齋藤けさ江書画展『生きる力』

Kesae_san_4   

月が変わった。

少し前のことになるけれど、まだ新緑が美しかった五月のある日、

『齋藤けさ江書画展』に行った。

ある方のブログで知って、実はその方に誘われてその日は一緒に

行くことになっていたのだけれど、奇しくも前日になって彼女の身内

にご不幸があって、行けなくなってしまったのだ。どうしようか迷った

けれど、1人でも行くことにした。その頃、私もどうしようもなく苦しくて

仕方のない数日を送っていたから、家にいるよりいいと思ったのだっ

た。場所は大好きな表参道だ。気分も晴れよう。小さなギャラリーみ

たいだから、そんなに時間はかかるまい。出てきたら久しぶりに原

宿界隈を散歩でもしよう、そんな風に思っていた。

ギャラリーの場所はすぐにわかった。入るとそれほど広くないフロア

に、掛け軸になった書が展示されている。けさ江さんの書く字はけし

て上手い字じゃない。でも、その書にはこどものように素朴な生きる

喜びと、生きる力があふれている。そして見る者には懐かしさと優し

さを感じさせ、しあわせな気持ちにしてしまう。順を追って掛け軸の書

を見ていた私は、ギャラリーの中ほどにある机の前まできて足を止め

た。思わず手に持っていた荷物を足もとに置いて見入った。そこには

机の上いっぱいに息子や孫に宛ててけさ江さんが書いた、山形弁の

たどたどしいひらがなのメモや書き置きが並んでいた。

Kesae_san_002_2

広告チラシの裏や大学ノートの切れ端に書かれたそれらはごく日

常的なことなのに、見ているうちに泣きそうになった。私はもともと

人の書き文字に弱い。けさ江さんのそんな小さな走り書きまで大

事にとっておいた息子さんも優しい人だと思うけれど、私もそうい

うものをなかなか捨てられずに困る。けさ江さんのメモ自体にも涙

が出そうだったけれど、一瞬にして自分の祖母がお年玉の袋の裏

に書いてくれた字や、母が孫への祝儀袋に書いてくれた言葉なん

かを思い出してしまった。結婚した相手もマメな人で、よく書き置き

を残したっけ。今でも家のどこかにあるかもしれない。Mはびっくり

してたけれど、10日間留守にする間のバラの水遣りをお願いした

とき、その間Mが残したメモでさえ、ずいぶん長いこと捨てられなか

った。書き文字っていうのはなんてリアルなものか。

そしてさらに困ったことには、ギャラリーの中では、けさ江さんが以

前出演したというNHKの『人間ドキュメント』のビデオを放映してい

て、それを見ていたらもう涙が止らなくなってしまった。理性ではこ

こは暗い映画館でもない明るいギャラリーで、近くに人もいっぱい

いるんだからみっともないとわかっていても、もう駄目だった。

画面の中ではもう80歳も越えていようかという、長年の野良作業

ですっかり腰の曲がった小さいおばあちゃんが、真夏だろうが真

冬だろうが、晴れてさえいれば毎日かならず元気に畑に行く姿が

映っていた。山形の貧しい農家に生まれたけさ江さんは若いとき

に結婚するも、すぐに夫を出征にとられて、その夫は戦地で戦死。

後35歳のときに、妻に先立たれて4人の子供がいる千葉の書家

のもとに後妻に入った。以来、今に至るまで、1人で畑仕事を続け

ている。あまり経済力が無い上に学だけはあって、気難しく何かと

いえば茶碗を投げつけるような夫を支えながら、先妻のこどもと自

分のこども5人抱えて、どんなに大変な生活だったろうと思うけれ

ど、当のけさ江さんは屈託なくよく喋り、よく笑い、よく働き、そんな

自分の生活に感謝こそすれども辛そうなところは微塵も見せない。

苦労して育てた大根が連作のため不作に終っても、引っこ抜いた

大根が変な形をしていると言ってケタケタと声を出して笑い転げて

い姿なんか、まるで無邪気な少女のようだ。70歳まで文盲だった

けさ江さんが書を書くようになったのは、けさ江さんのメモを見た書

家の岡本光平氏の勧めだという。代々、学舎の家に嫁いだ無学の

けさ江さんは最初それを固辞していたけれど、77のとき喜寿のお

祝いに筆をもらったのを機に書き始めた。そのとき初めて書いたの

が、『たのしい』。思わず顔がほころぶような字。それからはまるで

何かから解き放たれたかのように毎日書くようになった。書も絵も

題材となるのは日々の畑仕事で見たもの。野菜や果物や虫や鳥

の名前なんかだ。

けさ江さんの書や絵が胸に響くのは、素朴で無欲でまっすぐで、

山の上の水のようにきれいだからだと思う。そして何より、けさ江

さんが苦を苦と思わず、しあわせな存在だから。たくさんのお金や

物を必要とし、それを手に入れてもまだ不幸で不満ばかり言って

いる現代人がとうに失くしたものを持っているから。

けさ江さんの書画は単純でありながらイノセントで力強いメッセー

ジをくれる。人間、何があっても生きていればなんとかなるよ、生

きていれば楽しいことあるよ、と。

泣き泣きビデオを見ていたとき、TVの前の一群にカメラを向けた

男性がいて、個展の記録係だろうけど私のことは撮らないでくれ

と思った相手は息子さんの五十ニ(いそじ)さんだった。

帰り際、受付の方とひとしきり話してギャラリーを出た。

涙もまた心の浄化。

月並みな表現ながら、すっかり心洗われて新緑の下を歩いた。

下はそのとき買ったカレンダーの六月の書。

Kesae_san_001

(降っても晴れても)今月あなたが健やかで楽しくすごせますように。

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