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2008年2月28日 (木)

28

Kamome_01

トウゾクカモメっていうのは

わるい鳥で

ほかの海鳥がアジなどを咽喉にのみこむのを見るが早いか

そいつに襲いかかって

むりやり魚を吐かせ

獲物を自分のものにしてしまう

トウゾクカモメが啼くと

雨が降る


快快として楽しまず

ひとりの男が

海を見に行った

雨が降っていて風も出てきた

きのうまであんなにはしゃいでいたのに

きのうは水平線がはっきり見えていたのに


むろん傘はさしている

なにかぶつぶついっている

足跡がハハハと笑っている 向こうから来るひとに、だ

いま擦れちがったひとに、だ

海が鳴っているようだ


あのひとに跳びかかって

擦れちがった意味をきいてみようか

あなた、咽喉のところにある、その

意味を吐きなさい、といってみようか


きのう

いま

風に向かって傘を傾けると

時の重さがもの凄かった


****************************************************

北村太郎、詩集『悪の花』より、28番目の詩。

今日28日。

昨日のカモメからの連想。

ここにアップする北村太郎の詩は大概好きな詩ばかりだけれど、

この詩は特に好きだ。

読んでいるうちに映像が頭にひろがる。

雨が降っているモノトーンの海の風景。

そこをゆくひとりの男。

昔、カザルスホールに行くと、スペインのビーチを1人裸足で歩い

てゆくカザルスの後姿のモノクロ写真が飾ってあって、とても味の

あるいい写真で、盗みたいほど欲しかったことを思い出す。

孤独であることの重さと、強い風を傘に受けている物理的な重さ、

過去の時間の質量と、いまという時間の重さ。

最後の一行が効いている。

海が見たいな。

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コメント

エサを横取りするので悪名高い(?)オオトウゾクカモメ。
でもお写真のカメモは、ずっと小型のユリカモメですね。
・・・なんてコメントは野暮ってもんですね。(^^;

投稿: waiwai | 2008年3月 1日 (土) 21:27

さすが!
waiwai さんは鳥のことも詳しいんですね!
私もアップする前にカモメの種類くらいは調べたけど、私にとって大事なのは、連想で浮かんだ詩のほうなのでした。
カモメって見た目はかわいいけど、どれもみんなけっこう獰猛なんですよね。
肉食系雑食だし。

投稿: soukichi | 2008年3月 4日 (火) 01:12

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